長年の願い
夕食を終えたころ、部屋がノックされるのでベルが確認をしてくれる。ベルに快く中へ通されたのはセインだったので、すぐさま立ち上がり、挨拶をした。
「そんなにかしこまらなくていいよ。ここにいるのは、僕とリーリヤ嬢、ベルたち兄妹だけだから」
「……そういうわけにもいきません」
「少し寂しいね。リアだったら……すぐにでも、とんできてくれていたのに」
「……セイン殿下」
「あぁ、何か本を読んでいたのかな?」
少し意地悪を言われ、頬を赤くしていると、さっきまで座っていた場所にセインの視線が向いている。目ざとく見つけられ、私は苦笑いをした。
「学園の課題の合間に、呪いについて、調べようと思いまして……」
「リーリア嬢に……リーリヤにかけられてた?」
「……セイン殿下?」
一瞬困ったような迷っているような表情のあと、何か決めたようにこちらを見てくる。
「そろそろ、『嬢』はとってもいいだろうか? リーリヤと、それか、数日前までのようにリアと呼んでも?」
「セイン殿下が呼びたいように呼んでくださってかまいません。私はただ、はいと返事をするだけですから」
「なら、私的な場所ではリアと呼ぼう。今は、私的な場所だからリアでいいね?」
「はい、セイン殿下」
「んー、そうだね……」
私の側に来たセインは、ソファに座るように促すと隣に座る。
……距離が、近いです!
ドキドキとしているこちらのことは構わず、一層引き寄せられると、恥ずかしさで顔を背けてしまった。
「あまり性急に距離を縮めると、リアに嫌われてしまいそうだ」
寂しそうに自嘲気味に笑うセインの方を見る。
……そんな顔をさせたいわけではないのですけど……、甘え方がわからないのです。アンダルト様とこんな時間をとったことがないので。
わたわたとしている私の方を見てクスっと笑う。
「セイン殿下、からかわないでください」
「アンダルトとの婚約期間に比べれば、数日の僕なんてリアに受け入れてもらえないんだろうね。でも、学園卒業までには、きちんと気持ちを整えておいて、リア」
「……セイン殿下」
「まずは、その『セイン殿下』を辞めようか?」
こちらを見つめてくるエメラルドのような瞳を見つめ返す。優しく微笑み、耳元で囁いた。
「セインって呼んで、リア」
耳から入ってくる囁きにゾクッとするほど、甘いものに聞こえてきて、頬に熱がこもる。言われた通りに、言葉にしようとするが、なかなか出てこない。今までの呼び方で、『殿下』を取るだけなのにだ。
「…………セ、イン?」
「もう一度……もう一度呼んで、リア」
「……セイン」
「はぁ……嬉しすぎる。ずっと、夢見てきたから! ベル、リアから名を呼んでもらえたよ!」
「殿下、多少強引すぎると思いますけど……」
「いいじゃないか! 長年の願いだったんだから!」
名を呼ぶだけで喜ぶセイン。私のことをずっと想っていてくれたことが、こんな些細なことでわかる。その心を私だけにくれたことが嬉しく感じた。
「これから先、リアだけは、僕を名で呼んでほしい。人前で呼びつけるのは無理だっていうなら、そこは考えなくもないけど……こんなふうにゆっくり二人の時間を過ごすときは、必ず……」
照れたようにはにかんだあと、私の頬に手を添え、キスをする。ベル兄妹の前で、少々気恥ずかしかったが、セインに委ねることにした。
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