兄妹と図書館
「どうされたのですか? 少し教えて欲しいことがあったんだが……あぁ、すまない。王太子妃の案内をしていたのだな」
「えぇ、後で伺いますね」
「ベル、今、できることなら、私、待っていますから……」
「いえ、そういうわけには」
ベルが男性に話しているので、隣に並んで見上げる。背は高く、表情は優しそうではあるが、どこか厳しそうな雰囲気を持っている侍従だと感じた。
「王太子妃様、ご機嫌麗しく……」
「王太子妃ですか? 私……そんな」
「何か問題でも?」
「……、まだ、セイン殿下と婚約を発表しているわけでもないですし、それに……」
「そういえば、そうでした。殿下がいつも将来の話をされているので……申し訳ありません」
美しくお辞儀をするその侍従に「顔をあげてください」といえば、少しホッとしたようにしている。
「それより、初めまして……、ですよね?」
「えぇ、そうです。リーリヤ様。ベル、紹介をお願いします」
「はい、お任せください」
ベルが得意げな顔をしてニコリと笑う。私へ目の前の男性を紹介することが、嬉しいようである。
「本来なら、もっときちんとしたところでと考えていたのですが……リーリヤ様、こちら、私の代わりにセイン様の近侍になったロンと申します」
「あなたが、セイン殿下の近侍ですか?」
「……あの、不服でしょうか?」
「いえ、とてもベルと雰囲気が似ていたので、お仕事もきっとできる方なのだろうと思っていました」
「……それは、ありがとうございます。殿下には、誠心誠意お仕えさせていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、宜しくお願い致します。ところで、ベルからロンが近しい方と聞いていたのですけど……?」
私が二人を見て、先程ベルから聞いたことを問うてみた。二人は目を合わせると、ベルがクスっと笑う。
「そのことですね。私たちは、実の兄妹なのです」
「兄妹?」
「えぇ、リーリヤ様。ロンは、私の2番目の兄です。我が家、子だくさんで……長子が後を継ぐことが決まり、三男である私の弟が領地運営の補佐をすることになり、ロンが先に、私が後を追うように王宮で働くことになったのです。身の上話で恐縮ですが……」
「だから、私が先程、セイン殿下のことを聞いたときに信頼できる方が近侍になったと教えてくれたのね。ベルのお兄様なら、安心ね!」
私が兄妹を見て微笑むと、ベルがコツンとロンを肘で小突く。嬉しかったようで、ベルの頬は少し赤くなっていた。
「そのように言っていただけて光栄です。改めて、ご挨拶に向かわせていただきます」
「えぇ、いつでも。それより、ベルに用事があったのでしょ? 図書館はあと少しだから、一人でも向かえます。ベルは、ここに」
「でも!」
「終わったら、追いかけてきてください」
「では……」とその場を後にする。ベルにしかわからないことを聞きに来たようだったので、先に図書館へ向かう。
……国中の本があるのですもの。少し怪しいものも、あるはず。エリーゼ嬢が私にかけた呪いを探せればいいのだけど……。
図書館へ入ると、古い書物の匂いがする。私が来たことで、司書が慌てて駆け寄ってきた。
「王太子妃様、何かお探しですか?」
「……ここでも、王太子妃なのね」
「えっ? 何か……失礼でもありましたでしょうか?」
おそるおそるこちらを見ていたので、「なんでもありません」と微笑んだ。ホッとしたような表情をするので、今のところは何も言わないでおく。
「……どのような本をお探しですか?」
「えーっと……そう、呪う方法が書いてある本とか、あるかしら?」
「……呪いですか?」
司書の顔が強張るのがわかる。呪いなんてあるはずがないということと、王家へ何をしでかす気ですか? と表情にでていた。反逆を考えているのではないかと考えているのだろう。
「いえ、今度、物語を書いてみたくて……その参考にと。子ども騙しみたいなもので、どんなものがあるか、気になって」
「物語をですか? ……それは、楽しみです」
司書は訝しみながらも、「こちらです」と案内をしてくれたのである。
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