セインからの提案
ベルが淹れてくれる紅茶で、一息入れる。優しい味のするお茶は、それぞれが泡立った気持ちを落ち着いていく。
「先ほどは取り乱してしまい、大変申し訳ありませんでした」
「いや、いい。侯爵の気持ちを考えれば、当たり前のことだ。アンダルトも失礼なことをしたものだと、残念に思ったもんだ」
ただ、先程から感じていたセインの表情は、父への労う気持ちも十分にあったが、それ以上に何かを話したくて、うずうずしているように感じた。
「……それで、侯爵。こちらから、提案があるのだが?」
「セイン殿下からのご提案と申しますと……?」
「少し前に、席を外させてもらっていたが、陛下……父とひとつ、話を通してきた」
「先程の短いお時間にですか?」
「あぁ、そうだ。少ない時間ではあったが、理解してもらい、承諾を得たよ。母も大喜びであったから、こちら側には問題がない」
両親も私もベルも、セインのやたら機嫌のいい表情に戸惑いながら、次の言葉を待つ。とんでもないことをセインがいうのではないかと、内心気が気でないのは、両親だろう。
「……それで、その提案とは?」
「リーリヤ嬢を正式に王太子妃として、学園を卒業後に迎えたいと思う」
私は、口を両手で押さえた。両親も驚いて言葉にならなかった。
先ほど、私は想いを伝えたばかりなのに、思ってもみなかった申し出である。
「それほど、驚かないでくれ。幼いころからずっと、リーリヤ嬢に好意を持っていたんだ。アンダルトとの婚約は、残念な結果だったけど、前向きに考えてくれると嬉しい。公爵家への輿入れが決まっていたから、教育には全く問題はないし、リーリヤ嬢も私のことを想ってくれていることもわかった。侯爵家にとって、悪い話ではないと思うが、どうだろうか?」
「……突然のことで、驚きました。殿下を含め、陛下や王妃様がリーリヤを求めてくださるのであれば、異存はございません。リアは、どうだい?」
父に問われ、セインと両親の視線が私に向かってくる。嬉しい気持ちはもちろんあった。でも、ここまでの大きな話題を世間に提供してしまった私に『王太子妃』が相応しいのか。そのことが引っかかる。
「本当に、私でよいのですか? その、突然、失踪した令嬢として、名が国中に広がっています。王となるセイン殿下の名に、私のせいで傷がつきませんか?」
「……傷? そんなものどうでもいいさ。それより、リーリヤ嬢が首を縦に振ってくれる努力なら、今よりもずっとするけど、どうかな?」
「えっと……これ以上は、何もなさらないでください。このひと月、私は、ネズミのリアとして、ずっと、側におりました。セイン殿下のことを昼夜問わず、見ていたのです。これ以上、私のために貴重な時間を割かないでくださいませ!」
「リーリヤ嬢のためなら、時間なんていくらでも割けるよ!」
「そうではなくて……私がセイン殿下のための時間を作りますから……その、」
私に優しく微笑んだあと、父の方を見るセイン。
「決まりましたね、お義父様」
「……まだ、早いですよ、お婿殿」
セインとベル、両親の四人は笑い合い、まとまった婚約に喜んでくれる。私は、みなの顔を見て、温かい気持ちになった。
「それで、もうひとつ、提案があるのだが……少々悪質なイタズラになってしまうので、侯爵が乗り気でなければ、止めるが……」
「どういったことでしょう?」
悪だくみをする二人の男性たちに、母と二人、笑い合った。
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