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どうしたら?

 私の身に何が起こったのかわからず混乱する。光った瞬間から、たった数分……数秒のことだった。

 目に入ってきたものが人間の手ではない私の手に、頭の中は真っ白になった。


「侯爵の娘であるリーリヤ様が、いいきみね! なぁにぃ? その姿。くふっ、アンダルト様の周りを性懲りもなくうろちょろとしているから、そんななりになるのよ! 穢らわしいっ!」


 声の方を見上げると蔑むように見て、私が今の姿になったことがよほど嬉しいのか満足そうにニヤついているエリーゼ。その目は、恐ろしいほど、爛々とし何かに憑りつかれているのではないかと思わせるほど不気味であった。

 見上げた先にいるエリーゼは、あまりに大きく感じ、巨人のようで、対峙している間、踏みつぶされてしまうのではないかと、恐怖を感じてガタガタと震える。


「ちゅう、ちゅっ、ちゅうちゅう! (エリーゼ嬢、これは、どういうことなの!)」

「私に話しかけないでくださいますぅ? 何を言っているのか、さっぱりよ。くふふ、そんななりでは、あなたが侯爵家のリーリヤ様だって、だぁれにも気付かないでしょうね! あははは、本当にいい気味ねっ! 

 アンダルト様との仲をずっと邪魔してくれちゃって、とぉーっても困っていたのよ。こんなに可愛らしい私が、アンダルト様にわざわざ何度も結婚のお願いをしているのに、公爵になるにはリーリアとの結婚は必須っていうだけで、私のために何もしてくれないのですもの! この私が、声をかけてあげているのに、本当に役に立たない人」


 アンダルトを残念な人というエリーゼに、とても腹が立った。アンダルトと多くの時間を共にし、一緒に成長してきたのだから。


 アンダルト様は、あなたが悪く言っていい人じゃない! 悔しい、悔しいわ! 私に……とても……。


 優しかったころのアンダルトを思い浮かべ、小さな手をギュっと握った。言葉にしても、伝わらない惨めさも相まって、睨むしかできなかった。


「それに引き換え……あの本、全く信じていなかったけど、本当に効果があるのね! 教えてもらって使ってみたけど……最高の気分よ! これでやっと、私の前から邪魔者は消えたわ! 

 みなから愛される私が男爵家で終わるような女じゃないもの。私が公爵夫人になって、この国で1番の贅沢をして楽しく生きるのよ! ずっと……ずっと、夢だったのよ! 綺麗なドレスや宝飾品を惜しげもなく毎日新品に変えて、華やいだ世界で私は1番の華になるのよ!

 本当はこの国の王妃になりたかったけど、叶いそうにないしって思っていたところだったから。王家に次ぐ財力で、お茶会や夜会をたくさん開いてみんなにもてはやされたりするの。あと数ヶ月で、アンダルト様と結婚ですもの。あぁ、今から、本当に楽しみ!」

「ちゅうっ!(なんてことを!)」

「何を言っているかわからないっていっているでしょ? ちゅうちゅう? 笑える! この国で1番位の高い侯爵令嬢のあなたが……くふふ、あははは! もう、笑わせないで! あの古い本に書いてあったとおりにしたら、ふふっ、こんなこともあるのね! まさか、本当にリーリヤ様に効くとは思いもしなかったわ!」


 令嬢らしからぬ腹を抱えて大笑いするエリーゼ。見下され、頭の上から大きな声が聞こえてくれば、怖くて仕方がない。

 見上げて、エリーゼがどんな行動をとるのか、注意深く見ているしかなく、恐怖で足元から震えてくる。

 一頻り、今の姿になった私を見て大笑いし満足したようで、コツコツと踵を鳴らし、嬉しそうにドレスの裾を揺らしながら、エリーゼは足早に何事かを呟きながら中庭から去っていく。

 それだけで、恐怖からの緊張は多少緩んだ。


 ……エリーゼ嬢があんなことを考えていたなんて。アンダルト様は知っているのかしら? 公爵家で好き勝手したいだなんて、そんなこと、許されない!


 エリーゼの去っていく方をみながら、考え込む。今聞いたことをアンダルトか公爵に知らせないと大変なことになる。元に戻るために何かいい考えがあればいいのだが、思考を巡らせては無理だと首を振りを繰り返し、結局、何も思いつかずにため息をつく。

 自身の不甲斐なさに自己嫌悪し、項垂れ諦め俯いてしまった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

よかったよと思っていただけた読者様。

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