ドレス到着
長い長い沈黙。私の素直な気持ちを伝えた結果、セインの中でもいろいろな感情が鬩ぎ合っているのだろう。こちらを見つめ、口を開きかけては噤む。何度も繰り返しては、言葉にならなかった。
「あの……」と声をかけようとしたところで、ノックのあと、ゆっくりと扉が開いた。ベルが、私の屋敷へ連絡を終え、帰ってきたのだろう。
セインと話をしていたら、いつの間にか2時間ほど、時間が流れていたようだ。
「……殿下?」
「……ベル」
「リーリヤ様のドレスがとど……あとにしましょうか?」
惚けていいたセインもベルが声をかけたことで、我に返ったようで、赤い頬を、さらに朱に染める。目の前にいる私をその瞳に映したあと、慌ててベルを部屋へと招き入れた。
ベルの後ろには、私の母も着替えを手伝うためについてきており、私の姿を見て涙を流している。それと同時に、セインと向き合っている私の格好を見て、青ざめた。
「ベル、先にリーリヤ嬢の着替えを頼む。まだ、聞きたいことはあるのだが、その前に、着替えを。えっと……その、なんていうか、落ち着かない」
「ふふっ、わかりました、殿下。早急にリーリヤ様を整えますので、しばらく、部屋の外へ出て行ってくださいませ!」
「あぁ、わかった。任せたよ」
セインはベルに雑に扱われているにも関わらず、文句も言わず、言われた通りに部屋から出て行った。先ほどの私への返事は何もせずにだ。
廊下には、父も来ているようで、「侯爵っ!」とセインが、父を呼んでいるのが聞こえてきた。
父も近くにいるのかと思うと、胸が熱くなる。焦がれた両親が近くにいてくれることが嬉しくて、目尻に涙が溜まっていく。
「リーリヤ様、こちらを」
ベルに渡されたハンカチで、目尻を拭う。「よかったですね!」とベルの目は語り、私のことを気遣ってくれる。
「では、リーリヤ様を整えます。お手数ですが、夫人もお手伝い、願えるでしょうか?」
「えぇ、えぇ、もちろんですとも! もう、二度と娘には会えぬと思っておりました。リーリヤ。再会できて本当に嬉しいわ」
「……お母様。私もお母様とお父様に、ずっとお会いしたかったです。それが、できない事情があったのですけど、こうして再会できたこと、本当に嬉しく思いますわ!」
「そうね! 私もお父様も、とても心配していたのですよ。今朝、突然、王宮から連絡があり、ベルさんが訪ねてきてくれたのです。リーリヤが見つかったので、ドレスを借りたいと。ご両親も一緒に王宮へ来て欲しいと言われたとき、騙されてもいいと思ってしまったわ!」
私は母の言葉に苦笑いをした。このあと、セインと両親を交えて、今までの事情を話すことになったとベルがいうので、今は再会を喜ぶだけでいいだろう。
「……それにしも」と母がセインの私室を見渡しながら呟く。迎えに来たベルにも、私がどこにいるというのは聞いてきたらしいが、会うまでは信じられなかったようで、今も不思議そうに私やセインの部屋を見ていた。
「何故、セイン殿下の私室に、リーリヤが?」
両親からしたら、突然なことに加え、少々頭の痛い出来事に、とにかく耐えている母には申し訳ない。事実を知ったとき、どんな反応をされるのか、不安で仕方がなかったが、耳元で「リーリヤ様、大丈夫ですよ」と囁くベル。
「どんなことがあっても、殿下はリーリヤ様の味方ですから。安心してください!」
母にも聞こえるようにベルが言ったおかげで、母は戸惑いを隠せていないようであるが、数ヶ月でも一緒に過ごしていたベルへの信頼があるので、私はベルにありがとうの意味を込め、微笑みかけた。
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