お慕いしています
心の中で燻っていた感情への答えが、全て出た気がした。あの日、学園を出たときから、私は、全てのしがらみから、自由になったのかもしれない。
アンダルトの婚約も破棄になった今、少しのあいだだけでも、自身の心のままに従ってみたくなった。
「私、ネズミになって、1番初めに思い知らされたのは、移動距離です。人間なら5分とかからない場所でも、とても遠く感じました。学園の側のお店で一晩明かしたのですけど、そこから、お城に着くまでに朝早く出発したにも関わらず、半日以上かかりました。小さな体での不便、今までの恵まれた環境に打ちのめされた気持ちになりました」
「城まで半日以上……それは、相当な時間がかかったね。体が小さかったから、障害になるものはないかと細心の注意を払って辿りついたんだよね?」
「はい、そうなのです。馬車に踏まれないように、猫や鳥に狙われないようにと。誰も私を知る人もおらず、心細かったです。……本当は、両親が待つ屋敷へ帰りたかったのですが、途方もない距離に感じ。お腹もすいていたし、お城なら、何か私でも食べられるものがあると思って、寄ったのがきっかけでした」
「それで、王宮に潜り込み、メイドたちに見つかり追われていた……ということ?」
「はい。見つからないようにと注意をしながら隅を駆けていたのですが、白い体は、目立ったようで……あのときは、本当に命がなくなると思いました。とても怖くて……必死に逃げ回っていたので、よく覚えていないのです」
「そうか、助けられたのが……、ちょっと待って?」
今までのことを思い出しながら、話をしていたら、セインが急に黙ってしまう。考え込むように少し呟くように何かを言っていた。
「……どうかされましたか?」
「……リーリヤ嬢は、ネズミの間でも、言葉を理解していたよね?」
「えぇ、そうです。私からの言葉は、セイン殿下にもベルにも伝わらなかったですけど」
「……会話、そう、会話は……」
「全て、覚えています。セイン殿下が、私に『リーリヤ』と名をくれた理由も、優しくリアと呼んでくださったことも、ちゃんと」
「……」
沈黙が流れる。静かになったので、どうしたのだろうとシーツの間から、こっそり顔を出した。私に警戒されないようにか、話をするために、少し離れた場所に椅子を用意して座っていた。よくよく見るとセインは顔を赤らめ、口元を隠している。セインが言った言葉を私への告白だと気が付いたようだ。今まで私に話してくれたこと思い浮かべ、恥ずかしいのだろう。
その姿が愛おしく、シーツをかき集め、ベッドから抜け出し、そろそろと近寄っていく。膝を突き、セインを見上げるようにし、名を呼ぶ。
「……セイン殿下?」
「……!」
視線が合ったので、微笑むと、さらに赤らむ顔。口元を隠している腕をそっと手でどけると、じっと見つめ返してくる。私はセインの頬に手をあてがい、2度目のキスをした。その唇からは、セインの驚きが伝わってくる。
「……セイン殿下。私、殿下のことをお慕いしています。このような姿で、言うものではないのですけど、リアになっていた間に、セイン殿下への気持ちに気づきました。このまま、伝えられずに終わってしまう恋なのかと、とても辛かったです」
「……リーリヤ嬢」
照れていることを隠すようにニコッと笑いかけると、惚けた顔でこちらを見つめ返してくる。私の気持ちを聞いたセインのほうが、気持ちの整理がおいついていないようだ。
緊張のあまり震えてしまいそうな自身の手でセインの手を握り、セインの答えを待った。
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