嬉しそうな声
「えっと、着替えが届くまで、そのままでいいから、少し話をしようか? リーリヤ嬢」
気まずすぎることに耐えきれず、セインが話しかけてきた。
「……恥ずかしくて無理です」
シーツに包まりながら、よくよく考えてみれば、あの日、ネズミになったときに、着ているものは全て学園の中庭に置いてきたのだ。何も着ていないのは、当たり前ではあったけど、好きな人……セインの前で……なんて、考えただけでも恥ずかしくてどうにかなりそうだ。
「ふふっ、僕もとても驚いたけどね……目が覚めたら、裸のリーリヤが抱きついていたんだから……」
「いっ、言わないでください! セイン殿下の意地悪っ!」
泣き出したいのを我慢して、布団の中でぎゅっと体を丸くした。
「ほら、顔だけでも出して? リーリヤ嬢の顔をよく見せてほしい……知っていると思うけど、何ヶ月も探して、やっと、会えたんだから」
「それは……、探していただいたこと、とても感謝しています。あと、名乗り出れなかったこと、申し訳なく思っています。でも、それとこれとは話が別で、今はとっても恥ずかしいのです!」
「恥ずかしいか……たしかに。僕も、かな。でも、これからも、リーリヤ嬢と僕とは、何かの折に顔を合わせないといけないんだけど、リーリヤ嬢はそうやって、ずっと、僕のベッドで閉じこもって避け続けるつもり? 僕としては、嬉しいけど」
「……そうでは、ないですけど、そうではないんです!」
セインの説得に顔だけでも出そうとしたけれど、考え直す。シーツの中、葛藤がありモゾモゾと動いているので、セインがその様子を見てクスクスと笑っているようだ。
「それでも、今は、ダメです。せめて、ドレスが来るまでは、このままで」
「わかったよ。では、そのまま、話をしよう」
「はいっ!」と返事をすると、嬉しそうに笑うセイン。
ネズミのリアのときは、セインやベルからの言葉は私に通じていたが、こうして会話をすることは出来なかった。私もセインと会話ができることが嬉しいと感じていたが、セインのほうは、何ヶ月も探したうえに私を待っていたのだから、声が弾んでいるほどであった。
そんなセインの様子が、私は嬉しい。
……セイン殿下が、嬉しそうに話をしてくれているのは、いつ以来かしら? ネズミになる前も、こんなに弾んだ声で話しかけられたことがないわ。いつも、アンダルト様とのことで、悩んでいるときに、そっと声をかけてくれることが多かったから、今まで気を遣ってくださっていたのね。
人間へ急に戻ったことで驚いたり、焦ることも恥ずかしい思いもしたけど、言葉にして相手に伝わることが、胸を熱くさせた。セインもそのように感じてくれているようで、熱のこもる話声に私はセインの顔が見たくなる。
どんな表情で、今、セイン殿下は話しているのかしら? ベル、早く、ドレスを届けてほしいわ。
届かないドレスがもどかしく、早く早くとベルがドレスを持って部屋に入ってくれるのを焦れながら、待ち続けていた。
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