とにかく、ドレスを
一通りベッドの中のあるものを探すために、ベルはシーツの中に手を突っ込んで、私の周りをゴソゴソとしている。お目当てのものは、どこにも見つからないようで、眉毛をハの字にして難しい顔をしながら、セインに呼びかける。
「殿下、こちらにはリア様がいらっしゃいません! そちらのソファか新しいドールハウスにいらっしゃいますか?」
「えっ、リーリア嬢ならここに……」
「違います! ネズミのリア様のことです!」
「あぁ、リア!」
混乱をしてぼんやりしていたセインも気が付いたのか、ソファに駆け寄り、いつも私が座っている場所まで探しに行こうとする。
「はいっ! それ、私です! セイン殿下やベルに可愛がってもらっていたネズミのリアも、今、ここで、お二人に醜態を晒したリーリヤも、同じものなのです!」
「「えっ?」どういうこと?」
セインとベルが、私の言葉を理解できず、お互いを見合っていることは、雰囲気でわかる。私は、恥ずかしくなり潜り込んでいるので、見えていないが、二人とも、さぞ驚いていることだろう。
「リア様がリーリヤ様で、リーリヤ様がリア様? そんなこと……」
「……似ていると思っていたけど、本当のこと? えっ? ということは……?」
「殿下っ! 大変です。リア様に殿下の秘めた想いもアンダルト様とのことも全てお話しに……」
「あぁ、今、それは、言わないで……頼むから、ベル」
私がリーリヤだと理解が追いついてくると、二人がしどろもどろしている様子が伝わってきた。「あぁ……」とセインの嘆く声が、恥ずかしさのあまりであることも一緒に暮らしてきたからこそわかる。
……セイン殿下も、きっと、今までことを思い出して羞恥に。私もなのですが、恥ずかしすぎますわ。
自身の失態を棚にあげ、情けない声を出しているベルやネズミのリアにしか見せないセインのことを考えていた。顔を赤らめて照れているだろうセインを想像しただけで、胸の奥がじんわり温かくなる。
「……まずは、そのままでは大変まずいですので、リーリヤ様のお召し物をご用意しましょう。経緯やこれからのお話は、それからにいたしましょう。どうしましょうか……? 妹姫様のドレスを借りますか?」
「妹のものでは、リーリヤは成人しているのだから、小さいのでは? いっそ、ベルのを貸して……」
「私のドレスでは、とても、失礼です! リーリヤ様が着られるようなものではございませんから!」
「そういうものなのか?」
「女性のドレスをなんだと思ってらっしゃるのですか? 殿下」
ベルの冷たい声に言い淀むセイン。先ほどから、セインは、ベルに言い負かされてばかりであった。
いつものセイン殿下と違って、本当にベルとは軽口まで言い合える仲なのよね。
シーツの向こう側の二人の会話を聞いて、ふふっと思わず笑ってしまった。
「そうだわ。侯爵家へドレスを持ってきてもらうよう連絡を入れませんか?」
「そうだな……リーリヤ嬢のドレスなら、問題ないだろう。合わないドレスを着ると大変だろうし」
「すぐに、手配を! 殿下、くれぐれも……」
「わかっている! 何もしないし、ここから動かないから、すぐに頼む! あと、学園には、急な用事で休むと連絡を」
「かしこまりました」と慌ただしく部屋を出ていくベルと、困ったという雰囲気をまとうセインが部屋に残り、私はシーツの中、さらに困ってしまう。
……どうして、急に、人間に戻ったの? ……今まで、そんな気配すらなかったのに、どういうことなのかしら?
裸を見られた恥ずかしさもだが、一晩、裸で抱き合ってセインと同じベッドで眠ったかと思うと、いろいろなものが振り切れるほど、体中が熱い。
人間に戻れたことは嬉しくても、まさか、こんなことになるだなんて、思いもよらなかった。
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