リーリヤ
ベルがいろんな意味で顔を赤くして、混乱してるけど顔が青くなっているセインに詰め寄る。
「……殿下っ!」
「は、はいっ!」
「私に黙って、いつの間に女性をベッドへお誘いされたのですか? このベルというものを指し押して!
!」
「さぁ、さぁ、いつですか!」と、ベルの棘のある声音が、セインの私室に響き渡る。
「……はっ? い、い、いやっ! そんなわけないだろう! ベルが知らないことなんて、僕は……」
ベルの勢いに言い淀むセインは、言葉尻が小さくなっていき、ベルの圧力にも負けそうだった。さらに、今起こっている出来事を、うまく整理できていないようで、セインは、ベルの怒りに何を言っても触れそうな雰囲気であった。
「実際、裸の女性が、殿下のベッドにいるではありませんか? どうなっているのですか! 説明をしてください!」
「ベル、そうじゃなくて!」
「そうじゃないとは、どういうことですか?」
「……目が覚めたら、リーリヤ嬢が……いて、その、いや、裸のリーリヤ嬢が、僕に抱きついて……」
私だけでなくセインもベルも状況が掴めておらず、混乱し赤面したり青ざめたりのセインが、慌ててベルに目覚めたときの状況を事細かく説明をしているが、誰も要領を得ない。
「……そこにいらっしゃるのは、侯爵令嬢リーリヤ様ですか?」
昨日まで優しかったベルが、私を睨むようにこちらを見たような気がしたので、すくみ上る。ぶるっと震えても、その目は鋭く、侍女頭として、この状況は許しがたいと訝しんでいる様子が目に見えるようだ。職務を遂行するように私に質問を投げてくる。
……ベルが怖い。怖すぎるわ。
セインに対して恥ずかしいのとベルが怖いのとで震えていると、ベルがこっそり私に近づいてきた。シーツを捲り、私の白い髪と赤い目をちらりと見て、最近の話題であった私のことにベルの思考がやっと結びついたようだ。
「ここ数ヶ月ほど、行方不明になっていらした侯爵令嬢のリーリヤ様であっていますか?」
シーツの中でコクコクと頷く。
「……本物ですか?」
「あぁ、そうだ。見間違いではない……はず、だ」
「……殿下は少し黙っていてください!」
自信なさげに話すセインは、私に背を向けているようで声が遠く、ベルにピシャリと黙るように言われて静かになった。
「あの、本当に、侯爵家のリーリヤ様でいいですか?」
「……はい、ベル。リーリヤです」
「……私の名前?」
ベルと人間の私には面識がない。城へ来ることも少なかった私が、王太子付きの侍女頭の名を知っていることはおかしいとさらに疑っている。
「どうして、殿下の私室にいらっしゃるのですか? 数ヶ月前から、行方不明になっていたはずですが……」
「……えっと、その……私、行方不明になった翌日から、ずっと、ここに住んでいました。セイン殿下とベルのお世話になっていたのです。その、ごめんなさい!」
「ここにだって? えっ? ……ここに?」
シーツに包まったまま、二人に頭を下げる。驚いたのか、思わずセインも振り返って見ていた。ベルに睨まれたらしく、また、背を向けている。
「殿下、もしかして……」
「そんな怖い目で見ないでくれ? 僕だって、ずっとリーリヤ嬢を探していたのは、ベルも知っているだろう? もし、匿っているのなら、あんなに苦労して探したりしない!」
「確かに……そうですよね。あの表情は、嘘ではありませんでしたもの。でも、リーリヤ様は、ずっと、ここに住んでいたと……」
ベルは、私の言葉を聞いたあと、腕を組んで考え込んでいたが、何かに気が付いたのか、ベッドに近づき、その何かを手探りで探し始めた。
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