アンダルトの失態
ベルは、昨日の夜会のことを思い出し考えていたようで、セインに質問をしていく。
「意気揚々と話しをされているところに、殿下がアンダルト様に声をかけていらっしゃいましたよね?」
「あぁ、そうだよ。友人として、最後の情けかな」
「何がいけなかったのか、教えていただいても?」
侍女であるベルは、夜会の最中はセインの側で控えることはない。離れた場所から、見守る程度であるため、アンダルトが何をしたのか、わからなかったようだ。
「ひと言で言えば、挨拶。公爵家の令息であるアンダルトは、基本的に挨拶されるまで待っていればいい。王族以外には相手から挨拶をさせてくれと願い出るものだ。友人ならともかく、昨日、アンダルトから声をかけていたのは……」
「最近、王宮でもよく見かける人でした」
「彼は、最近平民から上がったばかりの準男爵だよ」
「えっ? そうだったのですか?」
「あぁ、爵位でいえば、下級の中でもさらに低い。貴族を位で判断するのかとベルは思うかもしれないけど、貴族というのは、そういうものだ。あのとき、アンダルトが何気なく準男爵へ先に声をかけたことで、他の上位貴族たちは、かなりピリピリした空気になっていた」
「確かに、雰囲気がいつも以上にギスギスとしたように感じました」
「アンダルトの下位の貴族へ挨拶をするという行為が、そうさせたんだよ。……リーリヤ嬢がいたら、絶対にしない単純な失態だった。男爵家であるエリーゼ嬢は、上位の貴族間にある暗黙のルールなど知る由もない。だから、エリーゼ嬢はアンダルトに友人として準男爵を紹介をした上で、自身の意のままに動くんだと誇示するためにアンダルトから挨拶をするように促した」
ベルはハッとしたような表情になる。私も、心臓がドクンと脈打った。
……男爵令嬢であるエリーゼに促されて挨拶をしたのですか? アンダルト様は、私の意のままだって、他の貴族に知らしめてしまったのですか?
あれほど、貴族間のやりとりは、注意して、気を抜かないように常日頃から、お伝えしていたのに。
やってしまったことは、仕方がない。あまりに、アンダルトがした失態は、公爵家にとっても波紋を広げていることだろう。
「その行為が、公爵家の一員であるにも関わらず、男爵家の交友関係にまで下がってしまったと、他の貴族が感じたんだ。本来、声をかけるべき、他の公爵家や侯爵家への挨拶を先にしていれば、多少なりの問題にはなっただろうけど、ここまで大きな失態にはならなかったんだけどね?」
残念そうなセイン。昨日のアンダルトの深酒の真相を知り、なるほどと納得した。
……側にいる人物が変われば、紹介されるものも変わる。アンダルト様がエリーゼ嬢に紹介するのはいいけど、逆はあまりいいとはされていないのよ。
公爵家に嫁ぐには、上位貴族との橋渡しが必要だが、エリーゼ嬢には、人脈もなければ、上位貴族とのつてもないから、それができないのね。
セインたちの会話を聞きながら、遠い昔を思い出す。
上位貴族と下位貴族の違いはその人数にもよる。上位になればなるほど、爵位を得ているものは少ない。
ならば、上位貴族は、下位貴族と仲良くすればいいのではないかとはならない。
全ての下位貴族がそうだとは言えないが、多くのものが、上位貴族の傘を着て気が大きくなるのか、好きなように振る舞うことがある。
ないところに煙は立たないが、そういうことが、多々あるため、下位貴族とは相入れないことが多かった。
強かに欲を言ってくれる商人の方が、まだ、思うように動くのでましだという貴族もいるくらいだ。
……エリーゼ嬢の実家である男爵家は、あまりいい噂を聞かないわ。セイン殿下は、それも含めて今回の判断をしたのかもしれない。
セインの方を見上げると、私の考えていたことと同じことをベルに説明していた。
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