マフラーの中
座っていたら、セインはこちらをジッと見てくる。クッキーの最後のひと欠片を両手にコテンと小首を傾げると、いつもの朝食に足りないものが分かったようで、急に納得顔になった。
「だから、リアのカトラリーがないのか。リア、ほら」
「ちゅう!(ありがとうございます!)」
手で持てる大きさにパンをちぎってくれ、私に渡してくれる。小さいパンをもそもそと食べていると、優しい表情を向けられた。セイン自身は、食欲がないのかフォークを置き、食べることを止めてしまう。そのまま、朝食は終えた。
……顔色は特に悪そうではないけど、調子が悪いのですね。アンダルト様のこと、私がもっと注意していれば、こんなことになっていなかったのに。何もできず、本当に申し訳ありません。
見上げていると、ベルもセインが朝食を残すことで、体調が気になったようだ。難しい顔をしていた。
「殿下、もう、朝食はいいのですか?」
「うん、昨日、ちょっと飲みすぎたみたいで……。今は、入りそうにないかな。せっかく用意してくれたのに、ごめんね」
「いえ、それは。お体の具合が悪いと、滅多に言われないので、大丈夫でしょうか? 侍医に」
「……そうだね。侍医までは大丈夫だよ。珍しく少し昨日のお酒が残っているみたい。ちょっと、スッキリしない感じもする。そのための散歩かな? 気分を変えてくるよ」
立ち上がると、「こちらに」とベルに連れていかれ、服を着替えコートを着て衣裳部屋から出てきた。朝食を食べ終わった私の元へ来て、セインが手を差し出してくれるので、飛び乗った。
「お客様、どこに乗りますか?」
「ちゅう?(どこ?)」
「殿下、移動するには、リア様も掴まるところが必要ですから、マフラーをしていってください。これなら、ここに隠れられますよ!」
ベルにグルグルっとマフラーを巻かれていく。そこに私をおいてくれたので、すごすごとその中に潜り込んでいく。
「可愛いです! リア様。いいな……私も、マフラーしたら、また、一緒にお散歩へ行ってくれますか?」
先日のお散歩は、ベルも楽しめたようで、すごく嬉しそうに言ってくれ、思わず頷いてしまった。この前連れて行ってくれた場所なら、また行きたいと思っていたし、ベルと一緒なら楽しいのでコクコクと頷く。
「もしかして、僕がいない間に、二人で王宮の散歩へ行ったことあるの?」
「えっ? どうしてですか?」
「掴まるところがどうのってくだりは、そうなのかなぁ? って」
「……どうですかねぇ? リア様」
「ちゅう(内緒ですよ)」
「リアまで……」
「殿下、あまり女性の行動を気にするとモテませんよ?」
「……別にモテなくてもいいんだけど」
「何か言いましたか?」
「……あぁ、いや、そうだね……気を付けるよ」
気まずそうにするセインを見て、クスクス笑う私とベル。この二人と一緒にいるのがとても楽しい。
セインも先程よりかは、表情がほんの少しだけ明るくなったようだ。
「それじゃあ、少し出かけてくるよ! ベル、留守番を頼むね?」
「えぇ、今日は、お任せください! 行ってらっしゃいませ!」
ベルに見送られながら、私たちは部屋を後にして中庭へと向かう。ベルと違い、背の高いセインの視線からは、また少し違う王宮の景色であった。
マフラーの中、ホクホクと温まりながら、セインの表情を見つめている。
いつもと変わらないその表情のように見えるが、一緒にいる時間が増えた今、やはり表情にも雰囲気にも陰りがあるように感じた。
ネズミの私では埋めることのできない喪失感を思うと、どうしたらいいのだろう悩む。
……私にできること、あるのかしら?
言葉も通じない私に、セインの寂しさや辛さをどうにかできるとは思えず、マフラーをギュっと握った。
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