突然の
メイドたちが、私の私室をメチャクチャにしているころ。一人の侍女が、セインの指示を受け慌てた様子で、セインの私室に刻一刻と近づいてきた。
私は、メイドたちに見つからないように物影に縮こまってはいたが、廊下から聞こえてくる聞き覚えのある足音に敏感に気が付く。
……ベルが、ベルが帰ってきてくれたわ!
何も知らないメイドたちは、とうとうドールハウスの中にあった家具も全部放り出して、笑いながら、床に置き、無意識のうちに踏みつぶし、壊していた。ベッドや布団なども踏まれてしまい、無残にも壊れてしまっている。
黙って見ているだけの私にとって、とても辛く長い時間であった。
「セイン殿下の部屋にこんなドールハウスがあるって、やっぱりふさわしくないわ! 壊してしまいましょうよ!」
「えぇ、壊したってなると、さすがにまずいんじゃ……」
「いいじゃない! 私たちの夢を壊した殿下がいけないのよ!」
「強くてかっこいい殿下でなきゃ! こんなのは違う! ネズミが出て、大きな音がしたから駆け込んだことにしてしまいしょ!」
「いい? 行くわよ?」
メイドたちは、納得したのか頷きあい、ドールハウスを置いてあった飾り台から、まさに落とそうとしているところであった。
「ただいまもどりました、遅くなってしまい、申し訳ございません。リアさ……」
何も知らないベルが扉を開け、私の名を呼ぶ。隠れているところから、今すぐ出ていきたいが、メイドたちの手前、まだ、物陰にひっそり隠れ、静かにしていた。
床に散らばっている壊れた家具や粉々になっているカトラリー。目に入ってきた光景が信じられない! と、ベルは目を見開いて驚いている。
ハッとしたベルは、ここにいないはずのメイドたちに目が向かう。ドールハウスに手をかけているメイドたちを睨んだ。
「……あなたたち、一体、ここで何をしているのっ!」
「あっ、ヤバいよ!」
「……」
「……ヤバ」
ガシャーン!
最後の抵抗とばかりに飾り台の端に寄せられていたドールハウスが、ベルに睨まれ逃げようとしたメイドの袖に引っかかって、台から落ち、無残にも壊れた。私のためにとセインが頼んだ特注品のドールハウス。重さもあり、下に置かれていたものが、ついにドールハウスの本体によって、全てバラバラに壊れた。
その瞬間、メイドたちは、蜘蛛の子を散らすように一目散に出口である扉へと向かうが、その前には仁王立ちをして睨みをきかせているベルが怖い顔をして立ちふさがった。
「殿下の部屋に入ってもいいという許可は、あなたたちにはあるのかしら?」
「……」
「怒らないから、なんとか、いいなさい!」
王太子の侍女頭であるベルは、この王宮の侍従の中でも身分は相当高い。一介のメイドからしたら、雲の上の存在になるのだ。その怒りを一心に受け、メイドたちが震え、言い訳をするための言葉が出ずに、その場にへたり込んでしまった。
……あとのことは何も考えずにしてしまった感じね。ベルに叱られれば、もう二度とこんなことはしないでしょう。どんな理由であっても、王太子のものを大事に出来ないメイドたちには、誰も手を差し伸べる人なんていない。さすがに処分の対象となるわ。王宮から永久的に追放となる可能性は、十分あるわね。
私は、三人の様子を見ながら、行き過ぎた行動をもっと反省してほしいと心の中で呟いた。何もできずにいた、私の胸の内が少しだけ、救われた気持ちにもなったが、壊れてしまったドールハウスを始め、家具やカトラリーを目の前にして、落ち込まないわけはない。ネズミになってしまった私に与えてくれた優しい空間。セインとベルの優しさと誠意が詰まっているそのドールハウスが無残な姿になってしまったことは、私の心を抉っていくには十分な仕打ちであった。
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