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【連載版】 小さくなった侯爵令嬢リーリヤの秘め恋  作者: 悠月 星花
過ぎていく日々

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月夜のダンスⅡ

「リアも来たのかい? 落ちないようにするんだよ?」

「ちゅう! (もちろんです)」


 私はセインの隣に並ぶようにして、空を見上げる。のぼりきっていない満月が、とても大きく目の前にあった。私がきちんと座っていることを確認したのか、セインも視線が月へと移動していき、ふぅ……とため息をつく。

 冬の到来で、木々から葉も落ち寂しく、外はとても寒かったが、久しぶりに見上げる満月は、不安ばかりではない。これも優しく接してくれていたセインのおかげにちがいない。


「……ちゅ、ちゅうちゅちゅう?(……セイン殿下、月が綺麗ですね?)」


 私の言葉は、セインに伝わったのかわからなかった。しばらくの沈黙のあと、ポツリと言葉をこぼす。私の方を見ていることに気が付き、セインを見つめる。


「……月の光が反射して、リアの白い毛が光っているようで、とても綺麗だ」

「ちゅう?(セイン殿下?)」

「……きっと」


 セインの言葉は途中で止まる。『リーリヤ嬢の』や『彼女の』と続く言葉を飲み込んだようだ。私の頭を撫でようと手を伸ばす。今の私ではなく、セインは人間だったころの私を思い出しているのだろう。瞳に映っているのは、私のはずなのに、私ではない私を見ているようだった。

 それが、なんだか気に入らず、短い手でパシッとセインの手を受け止めた。


「ん? リアを撫でちゃダメってことかな? レディーの頭をむやみやたらと触るのは、失礼だったかもしれないね?」


 クスっと笑うセインだが、その表情は先程と同じように寂しそうであった。今は、『リーリヤ』ではなく、『リア』を見てくれていた。


 ……そんな表情をしてほしいわけじゃないの。セイン殿下には、笑っていて欲しいのに。


 どうしていいかわからず、セインの手を持ったまま、笑ってくれるように考えた。私に出来ることは、それほど多くない。ネズミになってからも、特技が増えたわけでもない。人間だったらできても、この体だからできないことも多い。


 ……そうだ! これなら……。


 私は、頭の中で楽しい音楽をイメージする。鼻歌なんてできないから、私が何を始めたのか、セインは興味深く見てくれていた。


 ……ふーんふふふふーん……。


 私の1番好きな曲を頭の中で思い浮かべ、セインの手で体を支え、踊り始める。ゆらゆら揺れながら、二足の足でフラフラと歩いている私を見ながら、いろいろと想像しているようで、セインは次第に笑顔になっていく。


 ……そういえば、この曲は……セイン殿下が私をダンスに誘ってくれたときの音楽だわ。あの日は、この曲をアンダルト様と踊りたかったのに。でも、今は……。


 そっと、見上げると、表情が和らぎ、優しく微笑んでくれている。掴まっていた手は、ダンスがしやすいように位置を変えてくれ、クリンと令嬢とダンスをするように回してくれた。


「僕、こんなリードは初めてだけど……リアがしたいことで合っているかな?」

「ちゅう! ちゅちゅちゅう!(はい! とっても踊りやすいです!)」

「んー正解ってことだね! 月夜にリアとダンスができるなんて。嬉しいな」


 素直に言ってくれているようで、こちらも嬉しくなる。たくさん踊っていたら、くしゅんとセインがくしゃみをした。

 冬なのだ。風も冷たい中、長い時間を外で過ごしてしまったようだ。


「ちゅう、ちゅうちゅちゅちゅう! ちゅちゅちゅうちゅちゅ!(セイン殿下、風邪をひいてしまいます! 中へいきましょう!)


 中へ行こうと踊っていた手を引くと、「わかったよ」とひょいっと私を手の中へおさめ、部屋の中へ入って行く。暖かい部屋の中、ふぅっと一息いれる。


「……そろそろ、眠ろうか」

「ちゅう! (はい!)」

「楽しい時間をありがとう。リアは、本当に僕を楽しませることが得意だね?」

「……ちゅう。(……だといいのですけど)」


「いいこだね」と囁き、ベッドへ向かう。寒空の中、上着も着ないままバルコニーにいたため、体は冷えきっていた。冷たい体を温め合うように、一緒に布団へと潜り込んで、クスクス笑い合いながら眠るのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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