招かれた客人Ⅲ
「何故、俺がお騒がせな女をわざわざ探さないといけないので?」
「……何故って、リーリヤ嬢はアンダルトの婚約者であろう?」
「耄碌した爺さんたちが勝手に決めた婚約ですよ。俺は、自由に恋愛もしたいし、遊びたい。これでも、ずっと前から公表されている婚約なので、一応、建前上、リーリヤを探すフリはしますが、本気になって探しはしないですよ。俺は、可愛いエリーゼと結婚したい。公爵家を継ぐには、リーリヤという正妻が必要だっただけで、いなくなったなら、いなくなったで仕方ないですよね。父上も上位貴族との結婚は必須だとかなんとか言っていましたけど、そうも言ってられなくなるでしょう。
やっと、リーリヤが招いたの不手際によって、こちらから婚約解消できるうえに、多額の賠償金まで請求できるので、願ったり叶ったりですよ! 本当に、この卒業間際にあの女は、俺のために尽くしてくれた。もったいないくらいの婚約者だ!」
自身の明るい未来を想い、たかだかに笑うアンダルト。それに引き換え、セインは怒りで震えている。
私も初めてアンダルトの本心を聞いた。セインの胸ポケットで、まさか私が聞いているとは知らないアンダルトに心底失望し、項垂れる。アンダルトの本心に呆れてものもいえず、怒りすら湧かないことに自身が1番驚いていた。
「……アンダルトは、リーリヤ嬢をお飾りの夫人にするつもりだったのか?」
「まぁ、そうなりますね? 結婚したら、別荘にでも追いやっておこうと思っていました。あくまで、正妻は可愛いエリーゼ。初夜だけは、どうしても避けられないので、そこだけは、仕方なくいただく予定でしたが、きっと何の感動もないことでしょうね?」
「……アンダルトが、そんなやつだとは思わなかった!」
急に声を荒げたセインに私もアンダルトも驚いた。優しさの塊だと思っていたセインが、とても怒っている。
いつの間にか側で控えていたベルも、なんだか怒っている雰囲気がとても伝わってきた。
セインやベルの放つ怒気に慌てたのか、アンダルトは居心地が悪いようで座り直す。
「……な、な……セ、イン様? 何もそれほど、怒らなくても」
取り繕ったように、声が少し震えるようなアンダルト。それほど、怒っているセインが怖いのだろう。ただ、気を取り戻したのか、奮い立たせているのか、自身を取り戻したらしく、私への愚痴を言い始めた。
「リーリヤなんて、ただ、微笑んでいるだけのつまらない女です。勉強も作法も何でもできるからと、お小言ばかりで俺に甘えることすらしてこない! そんな女になんの魅力があるのです?」
「……それは、リーリヤ嬢にとって、アンダルトが、甘えるに値しない存在だったからじゃないのか? リーリヤ嬢の努力に見合う努力をアンダルトは本当に今までしてきたのか?」
「なっ、何をおっしゃいます! リーリヤが公爵家のあれそれを習うのは夫人となるのですから、当たり前のことですし、俺は、それができるようになって初めて、リーリヤを側に置くことができるんですよ? セイン様だって、王子なのだから妃がその地位に値するものがなければ、認められないでしょ?」
「当たり前のことだ。それを選定するのは僕ではない。が、リーリヤ嬢は、公爵家のしきたりや歴史、ありとあらゆることは全て知っていた。それにくらべ、アンダルトはどうだ? リーリヤ嬢に並んでもらえるほど、恥ずかしくもなく、次期公爵としての器はできているのかい?」
「当たり前です。生まれたときから、次期公爵として厳しい教育を受けているのですよ? リーリヤ以上に」
「そのようには見えないがな」とアンダルトを睨んで呟いた。セインにそんな顔をさせたいわけではない。
突然いなくなった私が悪いのだが、どうしたらいいのか行き場のない感情を押し込め、ひたすら、こっちを見てくれとシャツを引っ張ったり、トントンと叩いてみたりと小さなことしかできずにいた。
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