侍女頭ベル
「それは……リア様が、寝るときには、必ず殿下の側で眠っていることを毎晩確認しているからですよ? これでも、私、殿下の侍女頭ですから、夜も殿下がよく眠られているか確認をするために、こっそり覗きにきているのです。
それはそれは、殿下とリア様ったら、微笑ましいほど寄り添って眠っているのですもの。見ているだけで、ほほえ……コホン、とても安らかそうで安心しますわ!」
……今、微笑ましいって言いたかったのかしら? そんな、眠っているところまで見られているなんて、恥ずかしい。
ベルに説明をされ、足をバタバタとさせて、恥ずかしがる素振りをしそうになったとき、少しだけベルの表情が曇ったのがわかった。見つめていると、ため息のような困ったようなという雰囲気になった。
「……リア様が来られるまでは、殿下にお休みを促しても、あと少し、あと少しとお休み時間を引き伸ばされていたのですよ。鬼気迫るほど、勉強に打ち込まれていたり、国民がよりよい生活ができるようにと考えられていたり……と、御立派ではあるのですが、その表情といいますか、雰囲気が少々危なっかしいとも思っていました。侍従としては、殿下が小さい頃からそんな様子でしたから、とても心配をしていたのです。私の注意では、その習慣を変えるにまでは至らなかった。
……それが、一変。今では、リア様が眠そうにされたら、殿下もつられてお休みなさるので、とても助かっていますわ!」
……ベルにとって、私って、セイン殿下の安眠枕代わりなのかしら? 安眠枕というより、お休みの鐘のような存在? 子守歌とか読み聞かせの絵本の代わりとか、そういう認識?
でも、ベルが喜ぶのもわかる気がするわ……。セイン殿下の勉強量は、並の量じゃないもの。通常の学園の授業や課題に加えて、自身への課題がたくさんあるのですもの。
ベルが嬉しそうに笑うので、私も笑う。実際は、笑っていないのだろうが、私の意識は笑っていた。
ネズミである私がセインの詰め込んだ生活のうち、少しでも休息ができるよう役に立っているなら、それは嬉しい。
「リア様は、本当にお可愛らしい。最初は、殿下がとうとう勉強のしすぎで、狂ってしまわれたのかと、焦りましたし驚きましたけど……」
……あのときね? 私の手を置いたり置かれたりしていた。
ベルとの最初の出会いを思い出し、セインとのやり取りが今更ながら、恥ずかしくなる。
「私にとっても、リア様は天使のようですよ! 本当に、お可愛らしいのですもの。さぁ、出かけましょう! 他の方に見つからないうちに……そうですね、ここに隠れますか?」
お仕着せを着ているベルには、メイドと同じくヘッドドレスが頭についている。綺麗に纏められた髪の上にちょこんと乗せてもらった。
……うわぁ! 高いっ! 元の人間のときより、ベルの方が背も少しだけ高いから、セイン殿下の視線はこれくらいかしら?
「では、出発しますので、しっかり掴まっていてくださいね! お城の中を見ていくといいですよ!」
ベルは、セインの私室から出た。廊下を歩き、たくさんのメイドたちが、ベルに頭を下げていく。
……さすが、若いとはいえ、王太子の侍女頭。
私たちが通り過ぎたあと、メイドたちが、ベルとすれ違ったことを嬉しそうに囁き合っていた。
……今のメイドたちは、ベルが憧れの存在なのかしら?
少々頬を上気させ、嬉しそうに話す子たちを見れば、微笑ましい。
その後も、たくさんのメイドたちとすれ違い、憧れや羨望だけでなく、妬むような視線も感じた。そのどれをとっても、何とも思っていないように、感情を揺らさず、ただ静かに、ベルはすれ違う侍従たちに挨拶し微笑みながら歩き、私に城内を見せてくれ、説明をときどきはさんでくれた。
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