表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】 小さくなった侯爵令嬢リーリヤの秘め恋  作者: 悠月 星花
王宮での生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/94

セインとベルの報告会

 ベルにおやつをもらい、もごもごと食べているとセインが学園から帰ってきた。

 両手でクッキーを持って食べている様子を見て、セインがクスクスと笑っているので、ぷくっと頬を膨らませてみる。

 愛おしそうに目を細められれば、逆に恥ずかしくなり、視線を落としてクッキーをひたすらガリガリと口に入れていく。たくさん口に入れすぎたようで、リスのようなほお袋を作っていることには、私自身気付いてなかった。


「リア、リスのようなほお袋がとても可愛らしいね?」


 からかわれたのだが、セインの『可愛らしい』の言葉にドキドキとさせられ、膨れたほお袋をさらにクッキーで膨らませることになった。

 ベルにまで可愛いと笑われ、恥ずかしくてたまらない。食いしん坊のように見えるその姿に慌てて口の中からお腹へとクッキーを押し込むようにゴクンと飲み込んでいった。


「残念っ! 今の姿、とっても可愛かったのに」


 少し拗ねたようにセインがいうので、そうだったのかもしれないが、貴族令嬢としての小さな矜持が許さなかった。そもそも、頬いっぱいになるまで、クッキーを口に含むなんてと反省しているところだ。


「……リア様は、本当に賢いネズミですよね?」

「ん? そうだろう? ベルもわかってくれる? リアはとっても賢いんだ」

「はいっ! それは、日々、一緒に過ごす中で、感じていました。今日は、殿下もまだ知らないリア様がいることを私は幸運にも知ることができましたよ!」


 セインに私のことで誇らしげに自慢をするベル。一緒に過ごす時間はベルの方が長いので、私が気が付かないうちに、私がした何かを見ていたらしい。一体、何のことを言っているのだろうと首を傾げながら、ベルの次の言葉に耳を傾ける。手近にあったクッキーへとこりずに手を伸ばした。

 口にクッキーを運んだころ、セインの着替えが始まる。未婚の私が見てもいいものではないと、視線をずらし、新聞へと目を移した。

 先程の記事が見え、また、落ち込んでしまいそうになるが、後ろからセインとベルが私のことを楽しそうに話して笑っているのを聞いていると気分も落ち着く。


「何があったんだい? 僕がいない間に。リアは今日、何をしていたんだい? ベルだけが知っているだなんて!」


 詰め寄っているのか、ベルはおかしそうに笑っているようだ。王太子であるセインにこんなふうに話ができるのは、ベルが得た長年の信頼関係の賜物なのだろう。学園や夜会などで見せる表情や声音とは違う、少し幼い子どものようなセインは新鮮であった。


「ふふっ、殿下はリア様のこととなると必死ですね? 確かにリア様はとても可愛らしく聡明であらせますもの。殿下が、たくさんの愛情を注ぐのも無理はありませんわ!」

「……愛情を注ぐだなんて。リアが、リーリヤ嬢に似ているからなのか、どうしてもほっておけないんだ」


 セインのその声音を聞くのが辛い。先ほどまで笑い合っていたのに、人間の私の話になると急に声音が暗くなってしまう。セインが私の失踪のことで、もどかしい思いをしていることは知っていた。


「殿下、侯爵家のリーリヤ様と言えば、公爵家のアンダルト様の婚約者の方ですよね? 幼いころから、決まっていたと、以前、殿下からお聞きしていました」

「そうだね、アンダルトの婚約者だよ、今も昔も。リーリヤ嬢が、アンダルトにそっと寄り添う姿は、僕も好きだった。羨ましくもあったけど」

「そうでしたか。リーリヤ様に、私はお会いしたことがありませんが、殿下の……想い人でしたよね、たしか」


 クスっと笑うベル。


 ……ベルもセイン殿下の想い人、その……私だって知っていたんだ? さっきそれっぽいこと、言っていたような。新聞を読むことに一生懸命だったから、サラっと流してしまっていたわ。この記事を見て、どう思ったのかしら? やはり、私のことは、あまりいいように思っていないわよね?


 私は振り返り、複雑な思いを抱えながら、二人の様子を盗み見る。サラっとセインの心内を言ってのけたベルに、セインも気にしていないように見えた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

よかったよと思っていただけた読者様。

ブクマ、いいね!下方にあるポイントをポチっとお願いします。(o*。_。)oペコッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ