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想継堂「九十九」  作者: 水 龍
一点目 逆星のペンダント
2/13

誰も来ねぇ⁉

 お店に上がってから十分が経過した。


「来ない」


 ずいぶんと遅い。慣れていない正座で足がしびれてきた。足を崩して楽な姿勢と取ると、すっとつま先まで血が流れる感覚がする。

 人が来る様子はまだない。さすがに暇を持て余してきたため、せっかくだからネットでこのお店について調べることにした。とはいえこんなにも古い建物のお店なのだ。ウェブサイトなんてものがあるはずがない。せいぜい口コミ程度しかヒットしないだろう。

 そう考えながらアプリを開き「想継堂九十九」で検索する。この「九十九」の字。正しい読みがあるのだろうが、私にはわからないから「きゅうじゅうきゅう」と打って検索をかける。


「……出たわ」


 意外なことに、この店のウェブサイトが出てきたのだ。お店の名前をしっかりと入力したのが功を奏したのか、しっかり上に表示された。

 早速サイトを開いてみると、非常にシンプルなホームページが表示される。このサイトによると、ちゃんとリサイクルショップとして営業しているようだった。古物商許可も得ているという旨もアピールしている。ただし普通と違うのは、「お祓い」のようなこともやっているという点だ。曰くつきの物品を清める、てきなことが書かれていたがこういったことはあまり信用できないイメージがある。


「げっ、一万かあ」


 その上『なお品物によって料金は変動します』などという注意書きまで書かれている。お祓いに関してはそれ以上のことは調べられなかった。レビューなども建物の雰囲気などを触れた物ばかりで、他人の意見をあてにすることもできない。

 結局すぐに得られる情報も尽きて、しかたなく私は本棚にあるものを適当に手に取って暇をつぶすことにした。


さらに十分後。


 …………もう帰ろうかな?

 すでに部屋に入ってニ十分が経過しており、それでもなお誰かが部屋に来る様子はない。しびれを切らして何度か廊下に声をかけたが、さっぱり返事がない。

 もう家主がいるのかいないのかも、玄関で聞いた声が現実か幻聴かもわからないが、いいかげん私だけしかいないこの空間に居続けるのは限界だ。


 ――そう判断した私が座布団から立ち上がろうとしたときだった。


「ただいまー」


 玄関から引き戸の軽快な音と共に男性の声が聞こえてきた。

 誰だろうか。少なくとも私が玄関で聞いた声の人ではないようだ。


「あれ、知らない靴がある。──え、お客さん? ――奥に案内してある?」


 いや、案内はされていなんですけど。ていうか、いったい誰と話してるの?

 そのあとすぐにどっどっどっど、と重い足音が近づいてきた。


「いやーすいません。ずいぶんとお待たせしてしまったようですね」


 現れたのはやはり男性だった。年齢は三十くらいだろう。高めの身長に、少しよれた甚平とメガネをかけている。髪はぼさぼさで少し寝癖がついていた。買い物帰りなのか手に二つ袋を持っていた。

 一目見てこの男性がこの家の主だとわかる。そんな風貌だった。


「――あ、いえ。大丈夫です」


 待たされたことは少し不満に思っていたのだが、なんだか文句を言う気分がそがれてしまった。

 男性は私の姿を見ると「おや?」という表情をする。


「その制服、もしかして坂之上高校の学生さん? 君みたいに若い子がここに来るなんて、今までなかったからびっくりしたよ」


 そういうと、男性は手に持っていた袋をテーブルに置くとお茶を二つ淹れてくれた。ちなみに袋に書かれたロゴはB○○K〇FFと7ななだった。7はともかく、もう片方はどうなんだろう。ここもリサイクルショップですよね?


「あ、はい。あの、私、清水(しみず)真理(まり)です」

「あ、これはご丁寧にどうも。僕は九十九(つくも)(まもる)。この古物店の店主だよ」

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