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第21話 終わらない悪夢

 いろいろと終わらない。

 ◇


 沼束第一基地の幼仲の部屋。


「淫魔団とパーティー会場がやられて、もうグランパーティーはできないだと!?」

「はい。基地が陥落するところを見ました」


 クラウンは黄金の椅子に座っている幼仲に淫魔団の敗北を報告した。報告を聞いたバカ当主は驚き、立ちあがりそうになった。


「おのれ、反逆者ども! 僕の楽しみを奪いやがって!」


 淫魔団の敗北よりグランパーティーができないことを怒っている。


「しかたがない。これからは、ここで僕だけのグランパーティーをしよう」


 名案を思いついたように怒りを消して笑みを浮かべた。彼はろくでもないことを思いつく天才だった。

 パーティー会場ほど広くはないが、ここでも贅沢な宴はできる。ただグランパーティーと違い、幼仲だけが贅沢をするパーティーなので貴族達の不満は大きいだろう。


(こいつは頭の中がパーティーだな)


 クラウンに忠義などなくバカな幼仲を心の中で笑っていた。


「幼仲様!!」


 厳郎と礼羽が部屋に入ってきた。


「どうした、厳郎?」


 バカ当主は嫌な顔をして厳郎を見た。


「大事な話のようですので失礼します」


 クラウンも厳郎のことが嫌いなので嫌な顔をして姿を消した。厳郎と礼羽はクラウンのことなど眼中になかった。


「淫魔団が反逆者どもに敗れたそうですね?」


 クラウンの報告だけでなく沼束全体に広がっている情報なので厳郎達の耳にも入っていた。


「ああ。そのせいで盛大なグランパーティーができなくなった」

「グランパーティーはどうでもいいのですが、ゴブリン団と淫魔団がやられたのは大問題です」


 幼仲と違って悪趣味なグランパーティーができなくなったことを喜んでいるが敗北は喜んでいなかった。ゴブリン団と淫魔団がいなくなったことでこちらの数が減って戦力は低下し連合団の戦力は増えている。


「反逆者どもが次に攻撃するのは淫魔団の基地近くにあるドワーフ団の基地でしょう。あそこは弱いので簡単にやられてしまいます」


 若い頃から戦略の天才で幼仲の邪魔になる敵を倒してきた実績があり読みがいい。ドワーフ団は補給部隊なので、まともな戦闘は苦手だ。


「ドワーフ団がやられると物資などが奪われ、ますます敵の勢いが増します。そこで我々白鳴家がドワーフ団の基地へいき、反逆者どもと戦います」


 胡麻見家の危機を感じており、ドワーフ団に任せておけないので直接敵を倒すことにした。


「そうか。お前がいけば反逆者どもは終わりだな。期待してるぞ」


 幼仲の機嫌がよくなった。連合団討伐に期待し、うるさいのがここから離れるので喜んでいた。


「はい。では、これから準備をしますので失礼します」


 そんな主の心に気づかず厳郎は戦いの準備をするために娘とともに部屋を出た。礼羽は主の心に気づいているが、父になにを言っても無駄なので黙って従う。


「あのジジイがいけば、もう安心だ。さて僕は」


 厳郎がいなくなったので幼仲は立ちあがって後ろの壁へ移動する。壁にはどんでん返しがあり、彼はそこを開けて入った。入った後はただの壁になった。

 ここからハーレムへいくことができ、バカ当主は遊びにいった。

 胡麻見家を支えてきた名門 白鳴家がとうとう動いた。


 ◇


 その日の夕方。淫魔団の基地は連合団が制圧し牢屋の淫魔達を解放し降伏した淫魔達を入れた。ハーレムの女達も解放したが、夢馬の魅了が消えて正気だったので気分が悪い者や絶望し自殺をしようとする者がおり大変だった。

 周りの弱小貴族や基地は淫魔団の敗北とゴブリン団の説得で中立になったので攻めてくることはない。

 古貞、鮎美、緋恋、聖華、宮は淫魔団の基地の広いテントを部屋代わりにして休んでいた。


「宮ちゃんは淫魔団に戻るのか?」


 少年だけでなく三人の少女も気になっていた。宮は真剣な表情で首を横に振る。


「あーしは裏切り者だから戻らないよ」


 彼女を裏切り者と思っているのは一部でほとんどの者は美惑と同じように気にしていない。しかし彼女は戻る気がなく土下座をした。


「お願い!! あーしをあんた達のグループに入れて!! あんた達と一緒に行動したい!!」


 真剣できれいな土下座なので宮の本気が伝わってくる。古貞達と一緒に行動したことで淫魔団とは違う新しい気持ちが芽生えていた。


「ああ、いいぜ。よろしくな、宮ちゃん」


 古貞だけでなく皆も歓迎しており笑みを浮かべている。


「ありがとう!!」


 宮は満面の笑みを浮かべて立ちあがった。彼女は淫魔団をやめて古貞達のグループに入った。


「聖華も無事でよかった」


 敵に捕まり操られていた聖華を助けることができたので喜んでいる。彼女がくれた聖女の雫がなかったら古貞は死んでおり、回復能力がなかったら連合団が終わっていたかもしれなかった。


「ここの現状は分かりました。私も一緒に行動します」


 敵に操られていた時の記憶があり賢いので現状を理解するのが早かった。貴族の娘が盗賊団の味方になるのは問題だが、敵の情報操作でばれることはない。


「回復役ができて助かる」


 聖華と宮の回復能力があれば行動不能になることはないだろう。


「大変だー!! 雪達様が殺されたー!!」

「なに!?」


 二人の仲間ができた喜びをぶち壊す大声が響き、古貞達は驚いた。雪達の死が広がり、基地は騒然となった。


「雪達が殺されたってどういうことだ!?」


 戦闘で疲れた彼はベッドがあるテントで眠っているので古貞達は急いで向かう。テントの周りには団員達がおり武器を構えている。


「おい!! 雪達が殺されたって本当か!?」


 少年は大声を出した男性団員に聞く。彼の死は連合団にとって大きな損失になる。青い顔をしている男性団員がなにも言わないので警戒しながらテントの中を見る。


「こっ、これは!?」


 彼が見たのは槍を持って立ったまま眠っている雪達と血を流して死んでいる女淫魔とおびえてうずくまっている女淫魔だった。


「雪達は生きてる?」


 眠っているだけで生きているが安心できる状況ではなかった。


「夢馬の残党が暗殺をしようとして返り討ちにされたようだな」

「絵亜郎!!」


 騒ぎを聞いてやってきた絵亜郎はテントの中を見て状況を理解した。


「眠ってる雪達を狙ったようだが彼は眠るのが好きで危険を察知して眠ったまま戦うことができる」


 親友なので雪達のことをよく知っていた。雪達が暗殺にきた女淫魔達を返り討ちにし、男性団員は眠っている雪達と血を見て殺されたと勘違いしてしまった。


「夢遊病みてえだ」


 雪達のすごさが嫌というほど分かった。


「そこの女淫魔を捕えて尋問し、ここを片づけろ」

「はい」


 絵亜郎の指示で団員達は生きている女淫魔を捕え、死体を片づけ部屋をきれいにした。敵がいなくなったので雪達は槍を置き、ベッドへ飛びこんで睡眠を続ける。女淫魔はおびえており、まったく抵抗していないので連行するのが楽だった。


「基地を制圧しても、ああいうのがいるから気をつけよう」

「ああ」


 雪達だったから返り討ちにできたが、ここは敵の基地で周りが敵だらけでもあるので安心できない。

 雪達の無事が広がり、基地は静かになった。ちなみに尋問した女淫魔は夢馬の残党だったが敵討ちではなかった。

 今回の敗北ですべてを失ったので、だれかの首を手土産にして幼仲に取り入ろうと考えていた。眠っていて無防備な雪達を狙ったが失敗して仲間を失い、抵抗をやめたことで助かった。尋問後、彼女は牢屋に入れられた。


 ◇


 その日の夜。古貞達は大きなテントの中にある巨大ベッドで眠っていた。パジャマ姿の古貞と全裸の緋恋と子分達、いやらしい下着姿の聖華と宮が体を寄せ合っており、鮎美は恥ずかしいので別のテントのベッドで眠っている。

 子分達は少年のことを仲間と認めたので一緒に食事をして風呂に入り、ベッドで寝るほどで最初の頃とは大違いだった。

 彼女達の温もりとやわらかい感触が心地よく幸せそうな寝顔を浮かべているが、仰向けの少年の腹部に黒い球体が出現した。

 夜は淫魔の時間。

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