表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/212

第13話 美しい援軍

 敵味方に美しい援軍が加わる。

 ◇


 絵怜が処刑された後。高山奇第三基地の指揮官室。細川指揮官は不機嫌な顔で座っており、彼の前には聖華が立っていた。


「お呼びした理由はなんでしょうか、細川指揮官?」


 無能な庶民でも指揮官なので少女は礼儀正しく見下していなかった。


「ああ。胡麻見家からクレームがきて沼束へいった古貞が裏切って盗賊団に入った」


 厳郎が細川指揮官にクレームをいれたので不機嫌だった。


「あのうるさいジジイが困るのはいい気味だが面倒なことになってしまった」


 クレームがきた時は謝罪をしたが厳郎のことをよく思っていない。


「……古貞さんが盗賊団に入るなんて信じられません」

「いや、やつはいつかやると思っていた。やつはそういうやつだ」


 聖華は少し動揺しており、少年のことが嫌いな細川指揮官は完全に信じていた。ひどい指揮官なので、さすがの聖華も少し怖い目つきになった。


「裏切った古貞と盗賊団を倒すために優秀な人材を送れと言ってきたので君にいってもらいたい」


 指揮官という立場で上流階級の彼女に命令する。上からの命令などを聞いて部下達に押しつけることしかしない。この基地で優秀なのは聖華と石榴ぐらいしかおらず基地の守りを石榴に任せ、聖華をいかせることにした。


「他の人達はこのことをご存じなのですか?」

「いや防衛団の恥だから君にしか話していない」


 情報操作で彼の裏切りは広がっていないので家族や仲間が非難されることはない。古貞のことは沼束内で片づけようとしている。


「分かりました。すぐに沼束へ向かいます。失礼します」


 彼女は頭をさげて自動ドアへ向かう。


(彼女が娘ならどれほどよかったか。うちの娘や今までの部下達とは大違いだ)


 聖華の性格や見た目で癒され、細川指揮官の表情はゆるくなった。部屋から出ると近くに友達の石榴がいたので近づいた。


「細川指揮官、なんだって、聖華さん?」


 親しいが、古貞達のようなアダ名がない。


「古貞さんが裏切って盗賊団に入ったそうで援軍として私が沼束へいくことになりました」


 信頼している友に隠さず話した。


「オカイコが裏切るなんておかしい!」


 親友の裏切りを知って石榴は動揺した。


「私も古貞さんが裏切ったのは理由があると思うので沼束へいって調べようと思っています」


 古貞や盗賊団と戦うのは後回しで真実を調べるつもりだった。古貞が本気で裏切ったと思っていないので自分の目と耳で確かめるまで彼のことを信じている。


「もし本当の悪党になっていたら私の手で楽にして後を追います」

「そうか。分かった。いってらっしゃい。基地のことは私に任せろ」


 彼女の本気が伝わり、怖くなったので一緒にいくのをやめた。


「お願いします」


 聖華は石榴に頭をさげて、転送装置へ向かおうと廊下を歩いた。胡麻見家の援軍として向かう聖華だが夜が近く、淫魔団の本性が解放される。


 ◇


 次の日の朝。義賊生活二日目。古貞達は滅ぼされた炎赤家にいた。生存者はおらず死体ばかりでゴブリン達が片づけている。


「練治……君の分まで私達は戦うぞ……」

「安らかに眠ってくれ」


 絵亜郎は空を見ており、雪達は合掌をして悲しんでいた。


「友の死を悲しんでるとこ悪いけど、これからどうするんだ? 淫魔団の基地を攻めるのか? たしかゴブリン団の基地の近くにあるんだよな」


 古貞が声をかけてきたので絵亜郎は悲しみの表情を消し、真剣な表情になった。


「やることがいろいろあるね」


 数が多いゴブリン団は絵亜郎の指示で基地の黄金や宝石をとって元に戻しながら軍資金にし、近くの貴族達を説得して領民達の救済をしている。幼仲と違い、貴族と領民達のためというのが大事だった。


「私達がこれからやることはグランパーティーをつぶすことだ」

「グランパーティーってなんだよ?」


 古貞だけが知らない言葉が出てきた。


「グランパーティーは沼束の別空間にあるパーティー会場で行う祭りのようなものだ」


 知らない少年のために教える。


「昔は胡麻見家や貴族達が領民達を楽しませるパーティーだったが今では幼仲と一部の貴族達が領民達から搾取した重税で贅沢をする悪趣味なパーティーになってしまった」


 胡麻見家のご先代は領民達を楽しませるためにグランパーティーをやっていたが、幼仲になってから贅沢をし、逆らった女達の処刑などを見せ物にするグラディエイキャットのようなものになってしまった。


「グランパーティーをつぶせば幼仲の楽しみをつぶすことができ、贅沢ができなくなり離れる貴族達が続出するはず」


 バカ当主への嫌がらせと贅沢をできなくさせ、味方の貴族達を減らすつもりだった。貴族達は贅沢ができるから幼仲に従っているだけでグランパーティーをつぶせば戦力がかなり減る。


「どうやって別空間のパーティー会場へ入るんだ? だれでも入れるわけじゃねえだろ?」


 古貞はグラディエイキャットがあった別空間の地下闘技場に入るのに苦労した。


「問題はそこだ。かなりの地位の貴族か関係者じゃないと入れない」


 絵亜郎は必死に考える。グラディエイキャット以上に厳重で反逆者の古貞達では入れないうえにすぐに見つかってしまう。


「お困りのようだね。あーしが協力するよ」


 潜入する方法が思いつかない古貞達にひとりの少女が声をかけた。

 金髪のシニヨンで頭に小さな悪魔羽があり、気だるげなタレ目で紫のアイシャドウ。手の爪すべてピンクで黒いビキニ姿、裸足といやらしく遊んでいる感じだった。


「淫魔団!?」

(こいつ!?)


 絵亜郎達は警戒し彼女を包囲したが、茶釜屋敷の風呂の幻にいた少女だったので古貞は包囲に加わらなかった。


「ちょっと待って!! あーしは敵じゃないよ!!」


 彼女は両手をあげて敵意がないことをアピールする。


「信じる方が無理だ。今の淫魔団はわいせつや詐欺などの犯罪者の集まりだ」


 警戒を解かず絵亜郎達は武器を構えている。ゴブリン団と同じで今の淫魔団も犯罪者の集まりで前淫魔団は基地の牢屋にいる。淫魔団はゴブリン団より強くて女性が多く、人をだますのと魔術が得意だ。


「あーしは銅木どうき きゅう。前の淫魔団の団員だよ」


 彼女は前淫魔団の団員だった。前団員の中にはやむをえず今の五魔獣団にいる者もいる。まともな前ゴブリン団の団員達は避難していたので被害はない。


「そんなのウソかもしれないだろ」


 古貞のことは信じたが淫魔団ということで信じることができなかった。


「やめろよ。なにしにきたのか話くらい聞こうぜ」


 クラウンより信用できる相手なので古貞は彼女の味方になった。鮎美と緋恋は少し嫉妬している。


「ありがとう、岡井」


 話を聞いてくれるので喜んだ。


「なんで、おれの名めえを?」

「あんた達の情報を集めたのよ」


 宮はハートを出すようにウインクをした。本来の淫魔団は色仕掛けの情報収集や破壊工作が仕事だ。


「あんた達がゴブリン団に勝利したことを聞いて淫魔団の基地からきたわ。私もグランパーティーをつぶすのを協力するわ」


 グランパーティーは淫魔団の管轄で彼女の協力はうれしかった。


「今日の昼頃、バカ当主はいないけど美女オークションのグランパーティーがあるから潜入しやすい」


 味方だということを証明するようにグランパーティーのことを話す。


「私なら、あんた達をパーティー会場へ入れることができるわ」


 彼女の真剣な話を聞いて罠と思う者は少なかった。


「他に方法がねえからいくしかねえな」


 古貞達は宮を頼っていくしかなかった。


「パーティー会場は室内だから私は残って指揮を執るよ」


 天井がある室内では飛行能力を活かすことができないので絵亜郎はいかない。


「じゃあいくのは、おれと緋恋と鮎美、雪達だな」


 今回は潜入なので少数精鋭だ。


「けど、このままいくわけにはいかねえだろ。すぐばれちまう」


 自分の体を見た。反逆者が堂々と敵だらけのパーティー会場へいけば、すぐにばれてしまう。


「だいじょうぶ。あーしに名案があるわ」

「名案ってなんだよ?」


 宮の名案はゴブリン団の基地で聞くことになった。


 


 新しいサブヒロイン 淫魔団の宮。彼女の名前はドキドキとドキュン。

 評価とブックマークをよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ