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第12話 生きていた者達

 ゴブリンマスクと黒カマキリだけではない。 

 ◇


 その頃、基地から逃げた二人のゴブリンは野原を走っていた。


「あいつら、追ってきてないから止まろう!!」

「そうだな!!」


 かなり基地から離れ、だれも追ってきていないのでゴブリン達は止まって休んだ。


「他のやつらはどうしただろう?」

「自分のことでいっぱいだから知らないよ!!」

「そうだな」


 騒ぐ時だけ仲がよく仲間意識などなかった。そのため食糧が入ったリュックを背負っているゴブリンは手ぶらのゴブリンを警戒している。


「これからどうする?」

「近くの街や基地へいくのは危険だ。やつらがきたら領民どもに袋叩きにされる」


 手ぶらゴブリンの方が賢いようで考えている。


「敵前逃亡をしちまったから、もうここにはいられないな。他の領地まで逃げよう。他のやつらも同じだろう」

「せっかくいい思いをしていたのに! 反逆者どものせいでなにもかも失っちまった!」


 リュックゴブリンは人生をメチャクチャにした古貞達を恨んでいた。


「まあ他の領地へ逃げれば、ひとまず安全だ。そこで昔みたいに強盗をして生活すればいい」


 手ぶらゴブリンは強盗犯で改心する気などなく悪い笑みを浮かべた。


「ああ。昔に戻るだけだ。食糧と武器はあるからいける」


 リュックゴブリンは窃盗犯で食糧や武器を持って基地から逃げたので改心する気などなかった。


(こいつを早く殺して食糧と武器を奪わないと)

(こいつにやる食糧なんてない。早く殺さないと)


 表面上は仲がいいが心の中では自分が助かるために醜いことを考えていた。


「それでどこへいく?」

「少しは考えろよ!」


 なんでも聞いてくるリュックゴブリンにいらだちながら考える。


「地獄なんてどうだ?」

「だれだ!? おれ達と同じ逃げてきたやつか!?」


 突然の声に驚き、リュックゴブリンはナイフを出して構えた。そこには炎のように赤い大型犬がいた。今の声は大型犬の声だった。


「こいつは死んだはずじゃ!!」


 二人は幽霊でも見たような顔をした。


「他のやつらと同じように地獄へ送ってやる!!」


 しゃべる大型犬はリュックゴブリンに襲いかかる。


「くっ、くるな!!」


 ナイフをメチャクチャに振る。犬は簡単にかわし鋭い爪でゴブリンだけを切り裂いた。


「ひい!!」


 手ぶらゴブリンは死んだ仲間を見て真っ青になり逃げた。犬は血がついた爪を舐め、逃げるゴブリンの背中を睨んだ。


「逃がさないぞ!!」


 ゴブリンを追い、鋭い爪で切断した。


「クソゴブリンどもめ!!」


 二人のゴブリンを殺した大型犬は赤く光り、二本足になって人の姿になっていく。短い赤の髪で燃えているような瞳のワイルドな顔つき。腰に刀の形をした赤い水晶をさげ、赤い団員服姿で黒いブーツを履いていた。

 彼の名は炎赤えんせき 練治れんじ。滅ぼされた三鳥王 炎赤家の嫡男だ。


「親父とお袋の仇をとって食糧ゲットだ」


 殺したゴブリンのリュックを拾った。


「死んだふりをして、なんとか脱出したけど嫌なことが目に焼きついちまった」


 両親の死と館の陥落を思いだし、悲しい表情をした。守るのが苦手な館でゴブリン達の集中攻撃で陥落。両親が殺された後、彼は死んだふりをして館を脱出した。

 他の家にはゴブリン達がいて近づけなかったので幼仲に復讐しようと、ひとりで第一基地へ向かおうとしていた。

 大型犬に変身する能力があり、敵に見つからないように移動していたが逃げてきたゴブリン達を殺して両親の仇をとっており、さっきの二人と同じ死体が転がっていた。


「ゴブリンどもが逃げてくるなんて、なにがあったんだろう?」


 彼はゴブリン団が敗北したことなど知らない。


「まあなんでもいい。幼仲を殺すために第一基地へいこう」


 庶民から貴族になった炎赤家は他の家のように幼仲に恨みはなく、仲がいい羽矢雲家と水柿家に付き合って逆らっていた。

 しかし今回のことで幼仲を憎むようになった。少年は赤く光って大型犬の姿になり、口でリュックを持った。


「こっちだ」


 嗅覚で迷うことなく敵に見つからないように進む。反逆者なので転送装置などは使えず歩いていくしかない。炎赤家の嫡男は生きているが、そのことを知る者はいない。


 ◇


 その日の夕方。ゴブリン団の敗北など知らず、別空間のパーティー会場では前祝いのバカ騒ぎをしていた。二人の女淫魔が舞台で余興の準備をしている時、厳郎と礼羽が現れ、幼仲に近づいた。


「幼仲様。一大事です。ゴブリン団が三鳥王の反逆者どもにやられ基地が陥落しました」


 ゴブリン団の敗北を報告した。五魔獣団の敗北など今までなかったので厳郎は最初信じなかったが現実で受けとめるしかなかった。


「そうか。五魔獣団が四魔獣団よんまじゅうだんになってしまったか。まあ今そんなことはどうでもいい。これからお楽しみだ」


 興味がなく彼は舞台を見ている。


「幼仲様。今は反逆者どもを倒すのが先です。やつらはまだ小さいので今なら簡単につぶすことができます」


 バカ当主が反逆者達を一掃すれば評価が変わり、大きくなる前につぶした方が身のためなので厳郎は必死だった。


「それなら、お前達がなんとかしろ! 簡単ならお前達で十分だろ! ゴブリン団の基地の近くには淫魔団の基地があるし、反逆者どもの抵抗などそこまでだ! くだらないことで僕の楽しみを邪魔するな!!」


 口うるさくて楽しみの邪魔をする厳郎を睨んだ。下手をすると彼まで処刑しそうなので、これ以上進言できなかった。


「そのとおりです。ここには天才のおれがいますので、なんの問題もありません」


 白衣の男が幼仲に近づいた。


「おお、電太!」


 厳郎の時とは違う明るい表情を浮かべた。

 姿形は古貞に倒された悪の科学者 電太だが全身が機械で眼鏡をかけていない。ここにいるのはオペガの心臓部に保存してあった電太の頭脳データだ。

 本物が死んだ後、ラボから脱出し、黒カマキリ達と同じようにここまで逃げてきた。頭脳データなので機械の体を造って、データを入れ、本物が復活したようになった。


(黒カマキリめ。おれが助言をしたのに死んだのか。やつも使えないな)


 ゴブリンマスクが限界に近く、殺した方がいいと黒カマキリに助言をしたのは彼だった。


(古貞に復讐したいが、いってもやられるだけだから、こいつらにやらせて研究でもしよう)


 黒カマキリ達と同じでバカ当主に媚びへつらって利用し領民達の税で違法な研究をしていた。厳郎は忌ま忌ましそうに電太を睨み、電太は余裕の態度をとっている。幼仲は口うるさい厳郎より媚びへつらう電太を信頼していた。


「準備ができたようですよ、幼仲様」

「本当だ! 厳郎。お前にすべて任せる。期待しているぞ」


 電太が舞台を指さすとバカ当主は話を終わらせた。舞台には大きな鉄板が二枚あり、片方の鉄板にボロ布をまとい、薄汚れている絵怜が大の字に拘束されていた。


「はい。必ず反逆者どもを倒し、沼束を平和にします」


 これ以上話してもしょうがないと分かり、厳郎と礼羽は移動する。忠義で視野が狭い厳郎は幼仲を信じているが礼羽は顔に出さず心の中で呆れていた。


「さあ!! プレス刑を始めろ!!」


 うるさいのがいなくなったので幼仲は命令する。幼仲の命令が聞こえ、絵怜は恐怖で真っ青になり、人々の視線は集まった。

 二人の女淫魔は命令に従い、魔術でもう片方の鉄板を動かす。鉄板は逃げることができない絵怜にゆっくり迫る。


「いやあ!! だれか助けてー!! お願いします!! なんでもしますから助けてー!!」


 いくら泣き叫んでも彼女を助ける者はおらず幼仲達は必死にもがき、恐怖で歪む顔を見て興奮している。

 そして絵怜は鉄板につぶされて死んだ。


「今日のプレス刑は最高だ!!」


 幼仲達は狂喜し拍手をした。鉄板の間から血が流れており、彼女の恨みが伝わってくる。



 三鳥王の嫡男 空の絵亜郎、陸の練治、水の雪達。ゴブリン団との戦いが終わり、淫魔団との戦いが始まる。

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