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第9話 植物姉妹

 ベジカラフルの妹、登場。

 ◇


 伊仙奇第四基地の地下室。薄暗くて広い部屋で禍々しい道具などがある。ベジカラフルは拘束ワイヤーで縛られており正座をしている。おびえた表情を浮かべ、古貞を睨む。


「拘束ワイヤーで縛ってあるから、さっきみたいに大きくなることはない」


 能力は封じてあり、抵抗も逃亡もできないことを確認した。


「ひとりで悪党を倒すなんてお見事!」


 さゆりが拍手をして現れた。


「繭林の白百合しろゆり 船津さゆり!!」


 彼女を見て、ベジカラフルは驚いた。


「私のことを知ってるの?」


 とぼけている感じで話す。


「悪人達の間でも有名よ。繭林の悪人達が感服するほどの強敵。敵味方に尊敬されている人格者」


 ベジカラフルの話を聞いて、さゆりはいい気分になり、古貞は納得している。


「それで古貞君。彼女をどうするの?」


 少年の行動に期待しており心が弾んでいる。


「警察団に突きだす前に一応聞きたいことがあるので話をします」


 尋問するためにここまで運んだ。ここへくる者は少なく地下室なので、いくら叫んでも迷惑にならない。


「防衛団では悪党を倒した人が拷問をする権利があるわね。拷問するの?」


 首を傾げて聞く。


「しゃべらないのならします」


 拷問を重苦しく考えておらず、情報を聞きだす手段のひとつと思っている。


「なにもしゃべらないわよ! しゃべることがないもの!」


 震えながら強がる。


「うるせえ。てめえは聞かれたことに答えりゃいいんだよ」


 高圧的に睨み、ドスのきいた声で脅す。


「ひっ!?」

「うーん。古貞君、悪い顔」


 ベジカラフルはびびっており、さゆりは喜んでいた。


「まあ尋問関係なく罰は与える。野菜を悪用したから野菜の気持ちを味わえ」


 古貞は大きな漬け物タルを用意した。


「それでなにをする気!?」


 教える気がなく、ベジカラフルに近づき持ちあげる。


「お、下ろしなさい!!」


 弱々しい抵抗は無意味で正座をする形でタルの中に入れられた。不安な表情を浮かべていると頭にひとまわり小さいフタをのせられた。


「石抱きならぬ漬け物石だ」


 少年は大きな石を持ち、フタの上にのせた。


「お、重い!」


 石の重さが首や体にかかり押しつぶす。頭でフタを持ちあげようとしても、なかなかあがらず石とフタを落とすことができない。


「どうだ、漬け物の野菜になった気分は? 拷問石ごうもんせきじゃねえから時間が経っても重くならねえけど、つれえだろ?」


 少年はいたぶることを楽しんでおらず淡々としている。


「その状態で聞くぞ。なんであのメイドがいたんだ?」


 気になっていたことを聞く。ベジカラフルは悪党の意地を見せ、口を閉ざす。


「あのメイドは伍味駄目食堂の看板娘だよな? 警察団の取り調べとかに出てくる女と一致してる。だから吐いた方が楽だぜ?」


 メイドのことは分かっていたので、ベジカラフルとの関係性を知りたかった。


「伍味駄目食堂って貧しい悪人達が通う食堂よね?」


 防衛団では常識なので、さゆりも知っていた。


「看板娘が店から出て、お前に会うのはおかしい。言え。なんでいたんだ?」


 尋問するが、石の重さに耐えながら、なにも答えない。


「しゃべるまで待とう」


 古貞は椅子に座り、この部屋に置いてあるマンガを読む。さゆりは少年とタルを見ていた。ベジカラフルは屈していないが、折れるのは時間の問題だろう。


 ◇


 あれから二時間、経過した。マンガをたくさん読んで時間をつぶした古貞はタルの中にいるベジカラフルに話しかける。


「しゃべる気になったか?」

「しゃ、しゃべるわ。なにが聞きたいの?」


 圧殺の心配はなかったが、辛くて耐えられなくなり、屈していた。なんでも話す状態になっており、待った甲斐があった。


「おー! 古貞君。女性をその気にさせた」


 さゆりは感心している。


「聞きてえのは看板娘のことだ。なんで、あそこにいたんだ?」


 二時間前と違って素直に答える。


「最初は他の悪人達と同じで貧しかったから、ご飯を食べにいっただけよ。私が農家だって知ると、クズ野菜を売ってほしいって話になって、あの看板娘がとりにきてるのよ」

「クズ野菜で商売か。伍味駄目食堂らしいな」


 話を聞いて納得する。


「農業がうまくいかない頃から食べにいってるから恩があって、クズ野菜を売るくらい、どうってことないわ」


 身の上話に近い情報だった。


「あの化け物野菜を作れるのは、お前だけか?」


 肉食野菜について聞く。


「ええ。畑の近くに私の家があって肉食野菜にする肥料があるわ。妖術の呪文も私しか知らないし看板娘にも教えていないわ」

「そうか」


 有益な情報を得て古貞は笑った。


「もう聞くことはねえな」


 聞くことがなくなったので階段へ向かう。


「ちょっと!? ちゃんと話したんだから石をどかしてよ!!」


 ベジカラフルは慌てた。


「話したら石をどかすなんて言ってねえだろ」


 止まって非情な言葉を吐いた。


「だましたわね!!」

「そもそもだましてねえ。お前が勝手に勘違いしただけだろ? 警察団に突きだすまで、そこで反省してろ」


 聞くことがなくなったらどうでもよくなり、このまま放置することにした。


「それじゃあね」


 さゆりは手を振り、古貞についていくように階段へ向かう。


「で看板娘を捕まえるの?」


 二人は階段のところで話す。


「無理ですよ。伍味駄目食堂は貧しいダメ人間しかいけない店で、おれ達はいくことができません。それより彼女の家にあるやばい肥料を報告した方がいいです」


 だれにも言っていないとはいえ悪用されると大変なので早めに処分した方がいいと判断し階段をあがる。

 ベジカラフルは悔しがっており石の重さに耐えていたが、勝ち誇った笑みを浮かべた。


(私は負けたけど、妹があんたを倒すわ!!)


 話していないとんでもない情報があった。

 三時間後、彼女は警察団に突きだされ、刑務所送りになった。ひとりで悪党を倒した古貞の活躍は基地中に広がり、エースグループの立場は完全になくなってしまった。


 ◇


 伊仙奇の別空間。寂れた大衆食堂があり、薄汚れたひとりの男がふらつきながら歩き、近づいている。店に入ると同じような薄汚れた人達がいて料理を食べていた。


「いらっしゃいませ! 伍味駄目食堂ごみだめしょくどうへようこそ!」


 メイド服姿の看板娘が元気な声と笑顔で迎えてくれた。


「あいてるお席に座る前に手を消毒してください。当店は激安な分、衛生面に問題があるので食あたりになるかもしれません」


 消毒液を出す装置があり、男は看板娘に従い、両手に消毒液をつけて席に着いた。どの料理も人間が食べるようなものではなく皿や器がかけている。

 食べ終えた客は小銭を払って店を出ていた。客は人相が悪くて汚い者だけでなく虐待などでご飯が食べられない子供や孤児、身なりがいい者達もいる。身なりがいい者達は物色するように客達を見ている。

 そんな店に新たな客がきた。


「いらっしゃいませ!」


 元気な声と笑顔で迎えるが客の顔を見て看板娘は驚いた。黄緑のセミショートで両目が前髪で隠れており、不気味かつ美しい顔立ちの若い女性だった。

 緑のビキニ姿で胸部に鋭い歯がある巨大なピンクの花があり股間にも同じような花がついていた。黒いハイヒールを履いており、靴音を鳴らしながら席へ近づき座った。

 近くにいる客達はさっさと食べ、お金を払って出ていき、身なりがいい者達は目をそらした。


「あの、ご注文は?」


 看板娘はおそるおそる近づき、ひきつった笑みを浮かべた。


「昆虫フライ定食」


 女性はメニューを見ずに注文した。


「かしこまりました、アネモウネ様。それとご存じかもしれませんが、ベジカラフル様が捕まりました」


 彼女の機嫌を損ねないように冷や汗を流しながら媚びへつらう。


「知ってるわ。まあ縁を切った姉だからどうでもいいし、助ける必要はないな」


 それでも姉なので少し悲しげだった。


「それより早く料理を持ってきて!」

「はっ、はい!」


 アネモウネがテーブルを叩くと看板娘は慌てて料理をとりにいった。


「どうぞ!!」


 料理を運び、アネモウネの前に置いた。


「相変わらず早いわね」


 目の前の料理を見て笑い、箸を持った。いろいろな昆虫を揚げたものとご飯とみそ汁がある。


「いただきまーす」


 フライをひとつ取り、胸部の花へ運ぶ。おいしそうに食べ、口を動かしてねだる。股間の花もほしがっている。


「たくさんお食べ」


 狂気の笑みを浮かべて花に食べさせており、自分も食べた。それを見て客達は食欲がなくなり、恐怖し、さっさと店から出ていった。



 華院家の食客 苦旅の襲撃。

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