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第6話 義賊生活

 幼仲を裏切った古貞の新しい生活。

 ◇


 ゴブリン団の基地からかなり離れた古貞と緋恋は森の中にいた。沼束に味方がいないので少年は彼女を頼るしかない。


「ここに別のアジトがあんのか?」

「ああ。ここへ逃げるように子分達に言っておいた」


 アジトを探していると女達が突然現れて古貞に襲いかかる。かなりの殺気なので刀を抜こうとした。


「やめろ、お前達!!」


 緋恋の大声に反応し、すぐに止まった。しかし少年を睨んで警戒し武器を向けている。女達は若くて露出が多い盗賊のような服装だった。


「頭!! ご無事でよかった!!」


 少年と違い、緋恋を見て喜んでいる。


「ああ。彼のおかげで助かった。私の恩人に武器を向けるな」


 女達は動揺しており頭の言葉でもすぐに信じられなかった。


「助けたのは演技でスパイかもしれませんよ!? ここで殺しておかないとアジトがばれます!!」


 スパイと決めつけており、今にも殺しそうな勢いだった。


「彼は私より強い。もし殺そうとすれば、お前達が死ぬ。だからやめろ」


 頭の圧がある言葉と刀を抜こうとしている古貞を見て女達は冷や汗を流した。


「わ、分かりました」


 あまり納得していないが、武器を下ろして少年から離れた。


「すまない、古貞。みんな、団員のことをよく思っていないんだ」


 みんなの代わりに緋恋は謝った。


「領民達を守る団員達がひでえことをしてんだから当然だ」


 女達の気持ちを分かっており気にしていない。


「こちらがアジトです」


 女達の案内でアジトへ向かう。古貞達は石造りの入り口に着いた。


「ダンジョンがアジトなのか!?」


 彼女達のアジトを見て驚いた。


「ああ。旧日桜皇国時代のもので見つかりにくく、アジトに最適だ」


 子分達が話さないので緋恋が説明した。


「さあ。あんたはもう仲間だから遠慮なく入ってくれ」


 緋恋は子分達と違い歓迎しており、さわやかな笑顔を浮かべ少年の背中を押して入れる。中へ入り、子分達は見張りをし、古貞と緋恋は奥へ進む。

 遺跡のようなダンジョンで若い女盗賊達がいて古貞を睨んでおり、歓迎されていなかった。


「若い女性ばかりだ」


 女盗賊達は若い美女ばかりで露出が多く身軽な服装だった。


「みんな家族や恋人を殺された女達で苦しい戦いを乗り越えた精鋭だ」


 緋恋と同じ辛い過去があり、ともに戦ってきた精鋭で頭はとても信頼しており家族のように思っている。

 二人は進むのをやめ、ブロック状の石の上に座って休んだ。


「捕まっていて、なにも食べていないから腹が減ったな。古貞も食うか?」

「見張りを押しつけられて、あまり食ってねえからもらおう」

「分かった。二人分の食べ物をくれ!!」

「はーい!!」


 頭が大声で頼むと子分が食べ物を持ってきた。


「どうぞ」


 トレイにはふたつの箸と青いお椀、赤いお椀がのっており、水団が入っていた。


「水団か。うまそうだ」


 匂いで緋恋は喜び、赤いお椀と箸をとった。古貞が青いお椀と箸をとると子分は二人から離れた。


「これが飯か?」


 少年は箸で水団を調べる。しょうゆ味の汁に細かく切ったクズ野菜が入っている貧相なものだった。


「ああ。バカ当主の食糧を奪えなかった時はこの一杯で腹を満たしてる」


 少女は水団を一気に食べる。生活が苦しい領民達が小麦粉やクズ野菜を提供しており簡単で安い水団を作ることができる。古貞は箸で水団をつかんで口に入れた。


「うめえ」


 粉っぽいがクズ野菜のうまみが出た汁を吸っており、滋味あふれる素朴な味だった。そして汁を飲むと心地よい温かさがしみわたり、舌と心を癒していく。


「ごちそうさま」


 緋恋は食べ終わっており、ゆっくり味わっていた古貞もお椀を空にした。食糧不足でおかわりはなく食事は終わった。


「よし。歯をみがいて風呂に入って、さっぱりしよう」


 子分が近づいてきたのでトレイにお椀と箸を置き、緋恋は立ちあがった。


 ◇


 食事を終え、歯をみがいた古貞は緋恋の案内で石造りの浴場にきていた。


「ここが風呂か」


 全裸の古貞は周りを見ている。水の罠がしかけてあった場所だが水がなく彼女達は浴場として利用していた。


「お湯がねえぞ」


 どこにもお湯がなく体を洗うことができず冷えていく。


「でっかい浴槽があっても、お湯が少ないんだよ」


 全裸の緋恋が現れた。


「一緒に入るのかよ!?」


 古貞は驚き、両手で股間を隠した。さゆりとの入浴で慣れていても恥ずかしかった。


「ああ。一緒に入った方がお湯を節約できる」


 彼女はまったく隠さず美しい筋肉を見せるように堂々と動き、お湯が入った大きなタライを持ってきて置いた。


「これが風呂か!? まあ、おれなら入れるけど二人は無理だよ」


 ひとりでも狭いタライ風呂だが小柄な少年なら余裕がある。


「いつもは、みんなで洗いっこをしてるけど、あんたを警戒してるから私だけだ」


 紅一天下の入浴はみんなで体を洗い合うもので、あまりお湯につからない。男で敵と疑っている古貞がいるので子分達は浴場を見張っている。


「さあ入って」

「おれが先に入っていいのか?」

「私はもう何十回も入ってる。体を洗ってやる」

「じゃあ」


 少年は股間を隠したまま両足を入れてしゃがんだ。お湯はあふれず、ちょうどよくなり下半身を温める。


「洗うぞ」


 緋恋はしゃがんで、ヘチマタワシを泡立てる。


「じ、自分で洗えるよ」

「問答無用」


 恥ずかしがっている少年を力ずくで洗う。しかし力を加減して優しく丁寧にヘチマタワシを動かしている。


「慣れてるな」

「子分達を洗ってるからな」


 彼女の乳房や筋肉が当たり、気持ちがよく恍惚の表情を浮かべ泡だらけになっていく。下半身だけでなく上半身も温かくなり、狭いタライ風呂とは思えないほど心地いい。


「手をどかせ。股間が洗えない」

「ま、待てよ。おれも洗うよ」


 下半身を洗おうとしたので古貞は抵抗した。


「そうか。じゃあ頼む」


 緋恋はヘチマタワシを渡し背中を向けて、あぐらをかいた。少年はたくましい背中をヘチマタワシと自分の手で洗う。


(すごい背中だ。両手だけじゃ無理だな)


 彼女の背中に密着し泡だらけの体をこすりつける。彼の泡が移り、背中が泡だらけになっていく。


(可愛いな)


 密着して体を揺らす少年を見て愛おしさを感じ、興奮していた。少年も彼女の筋肉で体が刺激されて興奮しており、タライ風呂から出て背中にしがみついた。

 両手で乳房をつかんで揉み、激しく腰を振って背中をさらに泡立てる。全身を使って彼女を洗い、泡だらけにしていく。

 緋恋は暴走している少年のやりたいようにやらせて笑っていた。古貞はしまりのない顔で歯をくいしばってがんばっている。

 見張りの子分達は顔を赤くして見ており止めることができなかった。


「うあっ!!」


 彼の股間も洗うことができ、泡だらけになり緋恋の背中から離れてタライ風呂に落ちた。お湯で股間の泡が消え、よだれをたらすほど疲れていた。


 ◇


 入浴後、濡れた体を拭いた全裸の古貞と緋恋は奥の部屋にきていた。


「ここが寝室!?」


 ベッドを見て古貞は驚いた。寝るための部屋でベッドしかないが、そのベッドは動物の毛皮やクッション、毛布などを敷き詰めたものでとても大きかった。


「ここでみんなと体を寄せ合って寝ているが、風呂と同じであんたと私だけだ」


 古貞がいるので子分達は一緒に寝るのを嫌がっており、浴場と同じように見張りがいる。


「パジャマなしかよ」

「そんな上等なものはない。みんな全裸で寝てる。さあ早く寝よう」


 二人はベッドへいき、寝転んだ。


「おっ、おい!?」

「体を寄せ合って寝た方が温かいぞ」


 少し離れていた古貞を抱き寄せた。力強い体と枕のような腕で少年は甘えたい気持ちになった。


「これからどうするんだ?」

「明日は三鳥王さんとりおうのところへいく」


 二人は睦言のように話す。


「三鳥王?」


 知らない言葉が出てきたので少年は少女の体を指でなぞる。


「幼仲に逆らっている三つの家だ。五魔獣団と戦うためには、やつらと協力しないと」


 バカ当主に逆らう貴族階級の者達がいた。


「そんなのがいるのか?」

「ああ。バカ当主は領民だけでなく貴族も苦しめてる」


 ほとんどの貴族は幼仲を恐れ、媚びへつらって従っているが骨のある貴族もいる。それが三鳥王だ。


「三鳥王のところへいくから明日のためにもう寝ろ。おやすみ、古貞」


 彼女は少年の頭を優しくなでた。


「ああ。おやすみ、緋恋」


 頼もしい声となでる手で安心し少年は眠る。沼束にきて裏切り者になるという濃厚な一日が終わり、明日から反逆の生活が始まる。


 この世界の戦いは戦争ではなく特撮番組のような戦いです。

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