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第4話 紅の猛獣

 アマゾネスのようなリョナヒロイン登場。

 ◇


 当主がバカ騒ぎをしている頃、古貞と鮎美は転送装置でゴブリン団の基地に到着した。


「ここがゴブリン団の基地か。第一基地と同じだ」


 周りを見ると煌びやかな黄金と銀の壁で宝石が飾ってあり第一基地とあまり変わらなかった。


「お前達とはよく会うな」

「その声は!?」


 聞き覚えがある声に反応すると突然、見覚えがあるピエロが現れた。


「クラウン!?」

「よう」


 二人は驚き、ピエロは馴れ馴れしく笑った。


「なんで、おめえがここにいるんだよ!?」


 刀に手を伸ばさず警戒して睨む。


「おれは情報屋。幼仲様のために紅一天下の情報を集めて調べているんだよ。お前ら、紅一天下を退治しにきたんだろ?」


 彼は当主に雇われていて盗賊団の情報を持っていた。


「ああ。紅一天下の情報を教えてくれると助かる」


 今回も彼の情報を頼る。


「紅一天下がどんな盗賊団かは知ってるよな? やつらはこの基地からそう遠くない森をアジトにしていて、これからゴブリン団が攻めるようだ。けどメチャクチャ強いやつがひとりいるから、かなりの死人が出るな」


 盗賊団のアジトは分かっているが勝算は低いようだ。


「そいつを倒すのが、おれの仕事のようだな。どんなやつだ?」


 自分より強い相手に屈しない古貞でも沼束を支配している戦力に逆らうのは無謀なのでやるしかなく敵の情報を聞く。


「紅一天下の頭 杉木緋恋すぎきひれんだよ。ひとりで多くの団員を倒すほどの強さと体力があり、くれない猛獣もうじゅうと恐れられている少女だ。彼女さえ倒せば紅一天下は終わりだ」

「そうか。ありがとよ。いこうぜ、鮎美」

「ええ」


 情報を提供したクラウンにお礼を言って古貞達は外へ向かう。二人がいなくなり、クラウンは醜い笑みを浮かべた。


「古貞がどうなるか楽しみだ」


 ピエロは姿を消した。彼は古貞と盗賊団の戦闘を見にいく気はなかった。


 ◇


 外に出た古貞達はゴブリン団とともに紅一天下のアジトへ向かう。しかし古貞と鮎美が先頭を歩き、ゴブリン達はある程度離れて歩いていた。

 古貞達を戦わせて弱った盗賊団を攻めるつもりだろう。

 後ろのゴブリン達の案内で迷うことなく進むことができ、森が見えてきた。


「だれかいる」


 森の前に人がおり、古貞と鮎美は止まった。背中に届くほどの長い赤銅色の髪と力強くて穏やかな瞳。ボロ布で胸と股間を隠しているだけで露出が多く色気があり、筋肉質でたくましく腹筋が割れている。裸足だが、なんでも踏みつぶすような力強さがあるたくましい脚だった。

 腰に鞘があって剣を持っており野性的な美少女だ。


「杉木 緋恋だ」


 鮎美は彼女の名前を言い、ゴブリン達はざわついている。


「ゴブリンども!! ここを通りたかったら、この杉木緋恋を倒すんだな!!」


 緋恋は挑発し、ひとりで多くのゴブリンと戦う気だった。かなり離れているのに彼女の大声が届き、迫力がある。


(緋恋だけで他の敵はいねえ)


 後ろの森や彼女の周りに敵はおらず罠ではなさそうだ。


「お前らの出番だ!!」

「あの原始人をやっちまえ!!」


 ゴブリン達は戦う気がなく古貞と鮎美に任せた。


「おれがいく。鮎美はおれが勝つことを祈ってくれ」

「分かったわ」


 母親の死を知ったばかりの鮎美に戦闘は無理なので少年が闘う。緋恋と闘うためにゆっくり近づき、古貞を見て彼女は首を傾げた。

 戦闘可能な距離になり、自分より背が高く、たくましい美少女を見た。


(近くで見ると風呂の幻にいた女だ)


 茶釜屋敷の風呂で見た幻に彼女がいたので古貞は変な目つきになった。


「だれだ、お前は? 沼束の者じゃないな?」


 見たことがない少年を調べるように睨む。


「高山奇団の岡井古貞だ。お前を倒すために幼仲様に呼ばれた」


 見ただけで絵馬より強いことが分かり、闘うしかないので刀に手を伸ばす。


「なにも知らない外部の者か。バカ当主め。同じことを」


 幼仲は彼女を倒すために外部の団員を何度も呼んだことがあり、緋恋はその者達を返り討ちにしてきた。バカ当主にぶつけたい怒りを目の前の少年にぶつけるしかなかった。


「悪いが今までのやつらのように死んでもらう」


 胡麻見家とは関係ない少年だが敵なので剣を構える。


「おれはやられねえぞ」


 古貞は刀を抜いて構えた。


「いくぞ!!」


 緋恋は斬りかかり、少年は刀で防いだ。


「くっ!!」


 凄まじい一撃と鍔迫り合いで彼女の力を感じ、歯をくいしばって耐えた。そして二人は刀と剣で激しくぶつかり合う。

 彼女の攻撃は力だけでなく、スピードもあり技術も高く自分のパワーをうまく活かしていた。しかし剣の腕では古貞の方が上で体を斬られ、血を噴きだした。


「うがう!!」


 苦悶の表情とうめき声に色気がある。岩のような筋肉に傷をつけたが、すぐに傷は消え、血も止まった。


「どうなってんだ!?」


 斬った感触はあり、傷が消えても噴きだした血はちゃんとあった。


「緋恋の再生能力だ!!」

「どんなに傷つけても回復して暴れるんだよな!!」


 ゴブリンの野次馬のおかげで彼女の能力が分かった。


「今までのクソどもとはぜんぜん違ういい攻撃だ!」


 全身から脂汗を流しながら強がって笑っている。治せても受けた痛みはある。


「盗賊に褒められてもうれしくねえな!!」


 少しうれしいので顔に出さないようにして攻める。彼女の体に傷をつけていくが、すぐに治ってしまう。治るまで痛みがあり自分の意思ではない自動回復だった。


「なっから風!!」


 凍らせて再生能力を封じようと少年は刀から冷たい風を放った。


「鬼曼珠!!」


 緋恋は剣から炎を放ち、冷たい風を消した。


「おれと同じ攻撃か!」


 古貞と同じだれでも使える初級の炎攻撃。威力も同じで初級とは思えないものだった。


「風ノコ!!」


 刀に風をまとい激しく回して斬りかかる。激しいぶつかり合いをしていき、彼女の腹部に刀をいれる。


「うあう!!」


 刀がくいこみ、回っている風が傷を広げており再生できない。このまま胴体を斬ろうと刀を動かすと緋恋は剣で少年の頭を突き刺そうとする。かわしたが肩に刺さってしまった。


「くおっ!!」


 抜く暇などなく古貞は痛みに耐え、刀から風を消した。


「鬼曼珠!!」


 刀に炎をまとって放ち、彼女の傷どころか全身を焼く。


「ぎゃあああ!!」


 体の内側と外側を焼かれ、剣をはなして苦しんだ。炎は消え、彼女は両目と口から黒い煙を出して仰向けに倒れた。

 彼女も同じ攻撃をすればよかったが、そのような判断ができず即座に次の一手に移った古貞の勝利だった。


「古貞君!! だいじょうぶ!?」


 鮎美は勝利した少年に駆け寄り、肩の剣を抜いた。


「いでえ!」


 剣を抜かれた痛みを感じ、肩の傷を押さえた。


「治布!!」


 五本の指から銀色の糸を出して瞬時に銀色の長い布を作り、傷に巻いて治す。二人は倒れている緋恋を見た。全身が焼けて気絶しており、再生が遅い。


「やったぞ!!」

「今のうちに縛るんだ!!」


 ゴブリン達は自分達の手柄にしようと古貞達を押しのけて緋恋に近づき、能力封じの拘束ワイヤーで縛っていく。


「これで終わりか。これでいいのか?」


 負けた彼女は顔を踏まれて嬲られており、古貞は勝利を喜ぶことができなかった。

 厄介な敵がいなくなり、ゴブリン達は紅一天下のアジトへ向かったが、もぬけの殻だった。子分達を逃がすための時間稼ぎが成功したので目覚めた緋恋は笑っていた。

 自分を犠牲にして子分達を守る彼女を見て、少年は今までの悪党とは違うと思い始めていた。


 紅一天下の頭が捕まったことは幼仲に報告され、沼束中に広がった。


 


 緋恋は美少女版古貞のようなもの。次回、古貞の最期!?

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