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第21話 部屋なし生活

 部屋なし生活の始まり回。

 ◇


 高山奇の資材置き場。

「今日はここで野宿だ」

 宿泊施設が見つからなかったので古貞はこの場所にきた。無断で入ったが関係者で今日だけのつもりなので悪いと思っていない。

 盗賊ギャルのほったて小屋があった奥ではなく、すぐ移動できる場所で野宿をすることにした。


「貯金はある。私物を買うと動きが悪くなるから、なるべく買わないようにしねえと」


 部屋がなくても貯金と給料で生活でき、仕事もできる。


「今さら盾森にもいけねえし迷惑をかけちまう」


 つつじの迷惑になるので盾森にはいかない。団員は過酷な環境での仕事もあるので野宿は慣れており、高山奇から出ずに生活する。


「第二、第四基地の連中か。おれと同じようなもんだな」


 高山奇内とはいえ別の基地からきたので余所者の彼は親近感があった。しかし仲よくする余裕などなかった。


「夏だけあって暑いな。哨戒ついでにコンビニにいってアイスと冷たい飲み物、飯を買うか」


 古貞は資材置き場を出て哨戒を始める。他の基地からきた団員達が新しい職場で仕事を覚えながら働いている中、古貞は別の苦労をしている。


 ◇


 高山奇の街。古貞はいつもいくコンビニでアイスと冷たい飲み物、弁当を買ってベンチに座っていた。資材置き場に冷蔵庫はないので、すぐにアイスを食べる。

「暑いからアイスがうめえな」

 棒アイスを舐めて味を楽しみ、体を冷やしていく。


「ブルマ男は基地にきたから街に被害はなく全裸の美女が現れた事件ぐらいで平和だな」


 のん気にアイスを舐めて平和な街を歩く人達を見ていた。その中に団員達がいる。他の基地の団員達が哨戒や談笑をしていた。

 鮎美がいないので古貞はひとりだが、今までひとりの方が多く気楽なので寂しくなかった。


「ん?」


 古貞は団員のひとりを見てアイスを舐めるのをやめた。

「あいつは」

 談笑している美少女を凝視する。背中に届くほどの黒髪のポニーテール。短眉で三白眼の無愛想なようで表情は豊かだった。

 スカートタイプの白い団員服姿で腰に刀をさげており、裸足に白いスニーカーを履いていた。


石榴ざくろ


 少年は少女のことを知っていた。


(懐かしいやつがいる。そういえば高山奇にいったな。昔よく遊んだな)


 彼女は古貞が小さい頃、遊んでいた唯一の親友だった。伊仙奇にいたが優秀だったので高山奇へいった。

 自分のことでいっぱいだった彼は彼女のことを忘れていたので顔を見て思いだした。


(男みたいなやつであまり変わっていないな)


 アイスを食べながら昔の彼女と今の彼女を比較する。男のようなかっこよさと凛々しさがあり、昔と同じで友達が多かった。


(声をかけるか。けど向こうが覚えているかどうか。それに今の姿じゃ分からねえだろうな)


 自分の体を見てアイスを食べ終えた。今の彼はやせており別人のような姿なので分からないかもしれない。

 友達と楽しそうに話している姿を見て声をかける気がなくなり、弁当を食べる。昔と違う少年に気づくわけがなく石榴は談笑をしている。

 古貞は見るのをやめて弁当に集中し、彼女は友達とともにいなくなり感動の再会のようなことにはならなかった。


(昔だけじゃなく変なことを思いだしちまった。茶釜屋敷の風呂で見た幻覚に石榴がいたような気がする)


 茶釜屋敷の風呂で見た幻覚に過激な水着姿の石榴がいたことも思いだし、他の女性の顔も少しずつ思いだしていく。


(鮎美がご飯、つつじが唐揚げ、さゆりさんがシャケ、稲子が漬け物、石榴がカツ)


 女性達を弁当のおかずと重ねて口へ運ぶ。


 ◇


 その日の夜。古貞は資材置き場でコンビニ弁当を食べながら置いてある式神端末で動画を観ていた。

 彼が座っている場所には作業員が水分補給をする水道があり、飲み終えたペットボトルに水を入れて飲んでいる。

「式神端末があればマンガがなくても退屈しねえな」

 私物は燃やされてしまったが式神端末はいつも持っていたので無事だった。式神端末があれば私物はあまり必要ない。


「スタイルーズは今観ても、いやらしくていいな」


 彼が観ているのは昔のアイドルの動画で過激な水着姿の少女五人が歌って、いやらしく踊っていた。

「あっ!? 広告!」

 動画がいいところで式神端末が蚕の幼虫になっていく。


「充電か」


 幼虫は動き、草に近づいて食べた。式神端末は生物になって物を食べ、充電することができる。彼の式神端末は芋虫タイプで葉や草を食べることで充電できる。

「いっぱい食えよ」

 充電している幼虫を見ながら弁当をかきこむ。


「ん?」


 嫌な音が聞こえたので周りを見た。巨大な蚊達が周りを飛んでいた。


「蚊だ。夏だからな」


 弁当を食べ終えて立ちあがった。古貞の血を狙っており、鋭い針の口を向けている。


「うるせえし人間の血を吸うから退治しよう」


 団員の仕事である巨大害虫駆除を行う。羽音がうるさいだけでなく人間の血を大量に吸うので退治しなければならない。


「いくぜ、蚊ども!! 蚊取り線香をあげてやる!!」


 古貞は刀を抜いて巨大な蚊達に向かっていく。飛んでいて体が大きくても脆弱なので針に気をつければ勝てる。

 資材置き場で彼が暴れている頃、各地でも団員達が巨大な蚊を駆除していた。その中に石榴がおり、第三基地の新しい団員達はよく働いている。

 そして巨大な蚊達は全滅し静かな夜となった。

 新たなサブヒロイン登場。次はカオスな第三基地の終わり。

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