第11話 仮兄妹対決
アジト突入回。
◇
クラウンについていく古貞達。黒カマキリのような妨害がなく険しい道ではないので楽に進んでいる。
「こちらです」
まったく迷わずに目的の場所へ案内し、到着した。そこは公衆トイレがある公園だった。
「ここか。どうやってアジトへいくんだ?」
「あそこからいくんだよ」
公衆トイレを指さして少年に教えた。
「トイレにあるのか!?」
古貞達は驚き、顔をしかめた。
「汚い殺し屋ギルドだけにトイレが出入り口だ。見つけられないのも納得だろ?」
別空間にあるうえに臭い場所を好んで探すことはしない。
「やつらも臭くて汚い出入り口が嫌だから、あの公衆トイレを掃除してるよ」
クラウンは思いだして笑いそうになった。
「そんなことはいいから早く突入しましょ」
つつじは真剣な当主の顔をしているが古貞に揉まれてなでられた余韻があり、しおらしかった。直情的ではない冷静な感じになっていた。
「このままではいけないので出入り口を開けないと」
ピエロは笑いながら公衆トイレに近づき、壁に隠してあるスイッチを押した。すると公衆トイレは消え、大きな穴になった。
「ここを通れば無頼党のアジト 伍味跋扈だ」
クラウンは大きな穴を指さし、古貞達は警戒しながら近づいた。
「……罠じゃねえだろうな」
三人はおそるおそる穴の中を見る。そこには無頼党のアジトがあり、多くの敵が迎撃態勢をとっていた。
「要塞だな、これは」
古貞と鮎美はアジト全体を見ており、つつじは敵の陣形を見ていた。アジトを守るようにマシンガンを構えた手下達がおり、重機関銃や大砲が穴の方を向いている。
「入ったら蜂の巣どころか集中砲火だな」
少年は冷や汗を流して笑い、見るのをやめた。
「数や武器では相手の方が上だけど実力では、こちらが上のようね」
勝ち目があり、つつじは笑った。虹カメレオンや黒カマキリのような実力者はおらず武器に気をつければ突破できる。
「たしかに。おれ達なら、けちらせるな」
古貞は鮎美を見て自信に満ちた表情を浮かべた。
「不安だけど、ここにいてもしょうがないわね」
自信がない少女もいく気だった。
「おれ達がいって敵をけちらすから、おめえらはあとからきな」
「そうするわ」
足手まといになるので、つつじと警察団員達はいかず古貞と鮎美は穴を通り、アジトへ向かう。
「勇ましいわ」
つつじは少年に見惚れている。彼のすべてが愛おしくなっていた。
(おれの仕事は終わった。殺される前に逃げよっと!)
クラウンは体を消して逃げた。皆、戦いに集中しており逃げたことに気づいていない。
「古貞様のお通りだ!! 死にたくなければどけ!!」
少年が挑発しながら進むと敵はマシンガンや大砲を撃った。二人は銃弾や砲弾をかわし爆発をものともせずに進む。
「邪魔だ!!」
古貞はマシンガンを撃ち続ける手下に向かっていき、刀を抜いて斬った。そして他の敵も斬っていき、数を減らしながらアジトへ向かう。
「カカシみてえによええな!!」
持ち場について攻撃するだけの手下達は弱く、激しく抵抗するどころか逃げるために攻撃しており、持ち場を離れていた。背中を見せて逃げる敵も斬り、どちらが悪党か分からなかった。
鮎美は跳び、側転などの動きでかわしながら移動している。爆発で高く跳んで着地し、敵陣を突破した。そんな彼女を重機関銃と大砲が狙う。
「台馬風!!」
少女は両手を広げて体を回転させた。突風が起き、敵ごと重機関銃と大砲を吹きとばす。吹きとばされたものがアジトに当たり、壊していく。
手下達は二人を恐れて逃げ、陣形も崩れ、逃げるために攻撃しているだけで進みやすくなった。殺し屋やゴロツキが集まった組織なので忠誠心がなく、こうなると崩れる。
敵の数が少なくなり、攻撃が弱くなったので、つつじ達も進んでおり、二人に追いついた。
「すごいわ、古貞!! 鮎美!!」
つつじは二人の活躍を褒めた。古貞だけでなく鮎美の活躍もちゃんと見ており公平だった。
「ザコどもはけちらした。あとは」
少年はそびえ立つゴミ山を見た。
「鮎美!! あんたは逃げている手下達を追って!!」
無頼党を撲滅するために鮎美に指示を出した。警察団員達は手下達を追って攻撃している。弱い相手を倒して点数を稼ぐつもりだろう。
「はい!!」
鮎美は手下達を追い、警察団員達に加勢する。
「ん? あれは?」
古貞はゴミ山から出てきた二人の男を見た。手下達とは違う服装で目立っており、逃げようとしている。
「お兄様と魔王コウモリ!!」
「あいつらが!!」
二人を見てつつじは驚き、少年は急いで走る。
「敵がきた!! 急いで逃げましょう、牙炎殿!!」
少年に気づき、魔王コウモリは逃げるが、牙炎は動かなかった。彼は少年と妹を見ていた。
「なぜ逃げる!? 愚妹がいるのだぞ!? やつさえ殺せば、こちらの勝利だ!!」
妹がいるので逃げるのをやめて逆転を狙う。
(こいつがやられたら終わりだが囮にして逃げるか。牙炎がここで勝てばよし。負けたら銅欲に助けてもらおう)
逃げるのは恥で状況を理解していない牙炎を捨て、魔王コウモリは逃げた。
「愚妹に協力するガキが!!」
牙炎の全身から毛がはえ、動物の耳としっぽが出てきた。歯と両手両足の爪も鋭くなり、全身から黒い煙が出ている。
野性的なイケメンは狂暴な狸の獣人になった。体が少しこげており、こげ臭かった。
「変身しやがった!?」
古貞は驚いたが斬りかかる。牙炎は胸部から炎を放出して威嚇する。
「くっ!!」
火傷しそうになり炎から離れた。
「古貞!! お兄様は獣人に変身する能力があるわ!! パワーとスピードが上がって体から炎を放出するわ!!」
「よく分かったぜ!!」
つつじの助言で敵のことがよく分かり笑った。
「風ノコ!!」
刀に風をまとい、激しく回す。獣人は速く移動して少年に襲いかかる。鋭くて熱い爪とチェーンソーのように回る風をまとった刀がぶつかり合う。
古貞の方が強く押しており、敵の体に刀を当てた。しかし毛が丈夫で斬れなかった。
牙炎は笑い、胸部から炎を放出した。燃えて少しこげてしまったので離れた。
「治布!!」
五本の指から銀色の糸を出し、回復効果がある布を作ろうとしたが、獣人は口から炎を吐いて糸と布を燃やした。
「お兄様は水をかけると元の姿に戻るわ!!」
不利になっていく古貞を見て、つつじは兄の弱点を教えた。
「余計なことを!! おれの弱点をばらしたお前もばらしてやる!!」
弱点がばれて焦り、妹を睨む。
(水が弱点って。今のおれに水の攻撃はねえ!!)
弱点が分かっても意味がなかった。敵は弱点をつく攻撃を警戒している。
「なっから風!!」
刀から冷たい風を放つ。
「寒い!!」
牙炎は少し凍ったが体を熱くして解かした。
「どうすればいいんだ!?」
ほとんどの攻撃がきかない強敵に打つ手がない。その時、古貞は無頼党の手下達や牙炎との戦闘で新しい攻撃を身につけた。
「この攻撃を使うか!!」
その攻撃を知っているように頭と体が動く。
「断妻鬼!!」
刀に風をまとい、激しく回転させて大きな竜巻にしていく。
「なんだ、あれは!?」
牙炎は竜巻を見て驚き、口から炎を吐いた。古貞は竜巻をまとった刀で炎を消して突き進む。
敵は胸部から炎を放出して抵抗する。少年が斬りかかると竜巻は炎をけちらして消し、体に当たった。丈夫な毛を削り、肉を切り裂いていく。
獣人は消しとび炎となり、小さな赤い狸の置物になった。
「これは?」
竜巻が消えた刀を鞘に入れて置物を見た。
「お兄様を倒すなんてすごいわ、古貞!」
つつじは勝利を喜び、少年の腕に抱きついた。
「……そうか」
少女の柔らかい感触が勝利した少年を癒す。
「愚かなお兄様。どこに飾ろうかしら」
妹は嗜虐的な笑みを浮かべて見下ろす。悪女に見えてしまい、古貞は小さな置物になって死んだ牙炎に同情した。
鮎美と警察団員達は多くの手下を倒して捕えたので無頼党盾森支部は壊滅した。兄を倒し、邪魔な組織をつぶしたので一応つつじ派の勝利で終わった。
牙炎を倒しても戦いは終わらない。
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