第10話 お嬢様を守る騎士
黒カマキリとの決着。
古貞は踏まれているつつじと鎌を見た。
「やめろー!!」
黒カマキリに向かっていき、体当たりをしてふっとばした。邪魔が入らない空間に突然敵が現れたので、かわすことができなかった。
「だいじょうぶか、つつじ!?」
少年は彼女を抱きおこした。
「古貞!? どうやってきたの!?」
別空間にいる古貞を見て驚いていた。
「この糸でつつじを見つけて、ここまできたんだよ」
少年は笑い、人差し指の赤い糸を見せた。鮎美の時と同じように見つけて別空間へやってきた。
(わたくしと古貞をつなぐ赤い糸。なんだかロマンチックだわ)
少女は自分の小指に巻きついている糸を見て微笑んだ。彼女が見つかったので赤い糸は消えていく。
「今助けるぞ」
古貞は彼女の両脚に巻きついているワイヤーを外そうとするが外れない。
「ダメだ」
ワイヤーを外すのをやめ、刀を抜いて黒カマキリを倒すことにした。
「おのれ!! 邪魔ばかりしやがって!!」
黒カマキリは怒り、柄尻のワイヤーをとって鎌を構える。大きな穴は閉じていき、人が通れない光が入る程度の穴になった。これで逃げることはできず古貞だけで闘うしかない。
「まずはお前を殺して、その後つつじを殺してやる!!」
敵は少年に斬りかかる。
「おれもつつじも死なねえよ!!」
古貞はつつじを守るように立ち向かい、薄暗い空間での戦闘が始まった。
刀と鎌が激しくぶつかり合う。黒カマキリは速く動き、鎌を振って攻め、古貞は対応して動き刀を振る。
(二人の殿方がわたくしを巡って争っているようだわ。わたくしって罪な女)
立って動けないつつじは二人の闘いを見て、ヒロインのような気分を味わい酔っていた。
黒カマキリの方が速いが、すぐに対応して攻撃と防御を行う古貞の方が強く、少しずつ押している。
「おのれ!!」
少年から離れ、鎌の柄尻から鉄球つきのワイヤーを出して振りまわす。
「一本だけじゃねえのか!」
古貞は警戒し刀を構える。敵はワイヤーをはなし、鉄球を飛ばす。かわしても黒カマキリはワイヤーをうまく動かして鉄球を操り、少年を苦しめる。
「がんばって、古貞!! 負けたら承知しないわよ!!」
加勢も援護もできないつつじは大声で応援した。少年がやられたら自分もやられるが、彼のことを心配している感じだった。
(美少女の声援とは悪くないな)
うるさい応援を聞く余裕があり、鉄球をかわしていく。安全な距離から相手を近づけさせないように攻撃している黒カマキリは鉄球が当たらないことに焦っている。
美少女の応援でやる気が増し、刀で鉄球を弾いた。
(刀をなんとかしないと!)
ワイヤーを振りまわし、古貞が持つ刀を狙って投げた。刀に巻きつき、動きを封じる。
虹カメレオンの鞭のように武器を奪い、相手を捕縛するものではなく攻撃と相手の武器などを封じるものだった。
「くっ!?」
引っぱっても動かず、しっかり巻きついており外すことができない。敵は鎌を構え、ワイヤーを引っぱる。
古貞はふんばって耐え、綱引きのようになった。力では少年が強く、重くて拮抗している。
黒カマキリは引っぱりながら、ゆっくり近づく。警戒し、ガラ空きのところを見つけて斬りかかるつもりだ。刀を振ることができない今の彼では防御も回避も難しい。
しかし彼は余裕の笑みを浮かべていた。
「今身につけた新しい攻撃を使うか。風ノコ!!」
古貞は闘いながら成長しており、新しい攻撃を覚えた。刀に風をまとい、激しく動かす。するとワイヤーと鉄球を破壊するように切断した。
「なっ!?」
黒カマキリは驚き、近づくのをやめ、柄尻からワイヤーをとった。少年は敵に近づき、風が激しく回っている刀で斬りかかる。
刀と鎌のぶつかり合い。古貞の刀はチェーンソーのようになっており、威力があがって安定しているので黒カマキリは前より苦戦している。
「ええい!! つつじを殺さないといけないのに!!」
刀の威力が鎌に響き、はなしそうになった。殺す相手が近くにいるのに思い通りに仕事ができないのでいらだっていた。
「かっこいい……」
つつじは闘う古貞の姿に見惚れていた。役に立つ程度にしか思っていなかったが、強力な攻撃を使うかっこよさと殺し屋から守っている吊り橋効果によって美化していた。
「しびれるわ」
顔を赤くし、体が熱くなっていき、メスの本能のようなものが少年を欲している。名家のお嬢様で恋をしたことがない彼女は一目惚れをしてしまった。
互角にぶつかり合う二人。しかし黒カマキリの鎌にひびがはいっていた。刀を受けるたび、ひびは大きくなり、ついに斬れてしまった。
「やばい!!」
柄を捨て、古貞を蹴りとばす。武器を失った黒カマキリ最後の抵抗だった。
「古貞!!」
つつじは無様に転がった少年に幻滅せず心配する。
「いてえな!」
痛みはあるが、立ちあがって敵を睨み、刀から風を消した。
「鬼曼珠!!」
刀に炎をまとい、振ってその炎を放った。
「ぐわー!!」
爆発したように燃え広がり、薄暗い空間を明るくした。くらった黒カマキリは燃えて消しとんだ。黒カマキリの死とともに両脚のワイヤーは消えた。
「やったぜ」
古貞は刀を鞘に入れて、つつじに駆け寄る。
「もうだいじょうぶだ」
少女はお礼を言って立ちあがるが脚に力が入らず、よろけてしまい倒れそうになった。
「おっと!」
彼女を支え、見つめ合う。少年の顔が近く、力強く支えているので赤くなった。
「こいつあ失礼」
顔が赤い彼女を見て自分の両手の位置に気づいた。つつじの乳房に触れ、股間に触っていた。はなそうとしたが間違って乳房と股間をつかんでしまった。
乳房を優しく揉み、股間をなでた。
「ひゃん!」
少女は驚き、可愛らしい悲鳴をあげた。
「わりい、わりい」
はなすと彼女が倒れてしまうので謝って支える。手を動かさないようにしても力をいれてしまい、思わず揉んでなでてしまう。
「き、気にしなくていいわ」
つつじは嫌がっておらず快感に悶え、恍惚の表情を浮かべそうになったので気を引き締める。
「それじゃあ動くぞ」
「う、うん」
甘えた感じで古貞に支えてもらいながら、ゆっくり歩く。
「あっ」
彼女は火照っており乳房と股間の快感を味わい、気持ちよさそうな声が出そうになった。少年も変な気分になりそうなので無視した。しかし両手は柔らかい肉を揉んでほぐしている。
暗闇は消えていき、二人は元の場所に出た。古貞達が現れたので鮎美は駆け寄った。
ひとりの美少女をめげって争った二人の男。古貞の勝利で終わり、つつじの命は守られた。
◇
黒カマキリを倒した後、三人は盾森団に合流した。
「……これはひどいわね」
敵の襲撃を見ていなかったので、つつじは切断された装甲車を見て被害状況を確認している。助けにいかなかった警察団員達は忠臣ヅラで準備をしていた。
「どうするんだよ、つつじ? これでアジトを攻めるのか?」
かなりの戦力を失い、ただでさえ頼りない警察団が弱くなったので不安だった。
「古貞と鮎美がいれば対抗できるでしょ」
警察団のことをいないよりはマシ程度にしか思っていないので、あまり期待しておらず二人を信頼していた。特にしおらしいメス顔で古貞を見ている。
「まあ、やつらがいなくても自分達の仕事はできるな」
古貞も警察団を足手まといにしか思っていないので支障はなかった。
「今日は敵の襲撃を受けたから休んで明日アジトを攻めるのか?」
「今からいって攻めたいわ。黒カマキリと闘った後だから今日は無理かしら?」
少年の体調次第で決まる。
「いや、でえじょうぶだ。すぐにでも戦えるぜ」
黒カマキリとの闘いでは、あまり体力を消耗していないので十分戦闘は可能だった。
「私も」
あまり戦っていない鮎美も戦闘は可能で手をあげた。
「それじゃあいきましょう!!」
「お待ちしておりました、つつじ様」
彼女の大声に反応したようにクラウンが姿を見せた。
「クラウン!! 案内して!!」
「はい。皆さん、こちらです」
つつじに従い、先頭へいって案内する。装甲車がないので、つつじも徒歩で移動し、両側に古貞と鮎美がいて、警察団員達が周りを固めて進んでいた。
つつじがマゾのチョロインになった。
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