第4話 新たな敵
新たな敵登場回。重要な敵キャラ登場。
◇
その日の夜。高山奇の資材置き場。さまざまな建築資材が整理された場所だが人があまり近づかない奥の方は散らかっており、周りの資材を組み立てたほったて小屋がある。
「うう~、春でも寒い……!」
あまり広くない中にはセミショートの金髪少女が座っており、ボロ布をまとって震えている。スポーティーな赤いタンクトップ姿で黒いスパッツを穿いており両手にはオープンフィンガーグローブ、両脚には黒いニーソックスと靴を履いていない。
体つきはやわらかく格闘家のような硬派ではない遊び好きの軽い感じ。
キャンプバーナーでコーヒーが入っているケトルを沸かして、なんとか寒さを凌ぎ、両手と両脚をこすり合わせている。
「おれが温めてやろうか?」
男の声とともに突然、不気味な男が現れた。毒々しい紫の二股帽をかぶっており、灰色の短い髪。顔は病的な蒼白の白塗りで口が裂けたような紫のメイクと紫の丸い鼻。
派手で色鮮やかなピエロ服と違って地味で禍々しい紫と黒のピエロ服。両手には白い手袋、両足には先がとんがった銀色の靴を履いていた。
不気味に笑っているメイクと好色な目つきで少女は寒さだけでなく恐怖と気持ち悪さを感じ震えた。
「けっこうよ、クラウン!!」
オープンフィンガーグローブで強そうに見える拳を見せて虚勢をはる。
「そうかい。楽しい夜にしてやろうと思ったのに!」
わざとらしく大げさにガッカリした。
「だったら早く仕事をしな、盗賊ギャル! 捨てた女の代わりを見つけてつれてこい!」
クラウンは偉そうにむかつく態度で命令した。言葉だけでなく表情も不快で少女はいらつきながらケトルを取り、コーヒーをカップに注いだ。
「分かってるわよ」
ふてくされた表情でひとくち飲み、コーヒーが入っているカップで両手を温める。
「ボスはあのオッパイちゃんに負けないくらいの見た目で強い女をご所望だぜ。失敗したらオッパイちゃんと違って、お前は処分されるからがんばりな!」
彼女の失敗を望むようにクラウンは不気味に笑って脅した。
「も、もちろんボスのためにがんばるわ」
ボスと聞いて盗賊ギャルは恐怖で真っ青になりコーヒーで温まった体も一気に冷え、震えてひきつった笑みを浮かべた。
「それじゃあ、おれはこれで。アハハハ!!」
愉快そうに不気味な笑い声を出しながら透明になって消えた。
「……私より弱くて、ろくに闘えないくせにむかつくわね!」
彼がいなくなった途端、盗賊ギャルは悪態をつき、コーヒーを一気に飲んだ。
「まだいるからな」
姿を消しただけで近くにおり声を出した。少女は驚き、コーヒーを噴いた。
「アハハハ!! 汚いな!! それじゃあ今度こそいくな、アハハハ!!」
見えないが声で腹を抱えて笑っているのが分かり、周りを睨む。今度こそいなくなり静かになった。
「ちくしょうが!」
カップを投げ捨て壁に当てた。嫌なやつがいなくなり床のコーヒーと割れたカップを見て、少し冷静になった。
「あんなピエロはどうでもいいわ! なんとしても見つけないと! でもどうやって?」
悪い頭を必死に絞って考え、自分を追いつめてしまい頭を抱えた。
白昼、街に現れたグラビアアイドルと関係がある者達が高山奇に潜伏しており、なにかをしようとしている。
◇
次の日の昼。古貞は腰の愛刀を揺らしながら街の哨戒をしている。
「また露出狂が出るかもしんねえから警戒しねえと」
昨日の今日なので少年はいつも以上に気を引き締めて歩いている。資材置き場の近くにくると親しい少女に遭遇した。
「鮎美」
「古貞君」
トレーニングルームとコンビニと最近よく会う。
「鮎美も哨戒か?」
「いえ、私は警察団がここで不審者に苦戦していることを知ったので加勢しようと思って」
警察団の手助けと自分の力を試し、活躍するチャンスなのでここへきた。
「ここに不審者が? そういえば警察団の車両があるな」
古貞は遠くにあるパトカーと白黒の警察団専用装甲車に気づいた。
「んじゃいこうぜ。おめえのデビュー戦だ」
新しい彼女が闘うのは、これが初めて。警察団が苦戦するほどの相手ならちょうどいい。
「ええ!!」
鮎美は団員服を引きちぎるように脱ぎ捨て、紫のレオタード姿になり、ブーツを乱暴に脱ぎ捨てて裸足になった。
闘う気満々の少女と冷静な少年は資材置き場へ走った。鮎美はジャンプでフェンスを跳び越え、古貞は刀を抜き、フェンスを切り裂いて中へ入った。
◇
資材置き場のほったて小屋。青い団員服姿の男性警察団員達が転がっており、死んでいる者や苦しんでいる者がいる。
「ああもう最悪!!」
盗賊ギャルは警察団員達に包囲されており苛立ち、死体を蹴った。
警棒で殴りかかってくる団員を殴り倒し、二人目は軽々と持ちあげて投げとばし、ほったて小屋にぶつけて破壊した。
「こんなに早く見つかるなんて!!」
作業員がほったて小屋を見つけ、警察団を呼んだので応戦することになってしまった。
(でも女性警察団員を捕まえれば目的達成だ!!)
ピンチをチャンスと考え、女性警察団員を探す。女性警察団員は強さと美貌を持つ者がいるので条件は合っている。
「男ばっか!!」
男しかいないので憂さ晴らしをするように暴れまわり、団員を倒していき、包囲を崩す。
「銃で攻撃だ!!」
隊長の命令でピストルを構え撃ちまくる。しかし盗賊ギャルはかわし、かわしきれない銃弾をつかみ続ける。
撃ち終わると彼女は拳を開いて銃弾を捨てた。
「頭悪そうなやつなのに、なんて器用なんだ」
数では勝っているが、警察団員達は弱腰になった。
「あんた達なんて相手にならないわ!!」
挑発的に笑い、両拳をぶつけて脅す。警察団員達は悔しそうに睨むだけで動かない。
「それなら私が相手よ!」
「えっ!?」
鮎美は崩れた警察団の包囲網を凄まじい速さで抜け、飛び蹴りをくらわす。盗賊ギャルは突然の攻撃に驚くも、なんとか両腕で防御し踏みとどまった。
(こいつ、強い!! こいつに決定!!)
両腕の痛みで彼女の強さが分かり、捕獲することにし笑った。
「なんだ、あいつは!? 邪魔だ、どけ!!」
弱腰だった隊長は強気になり、偉そうに命令する。
「あんたが警察団の隊長か?」
古貞も到着し隊長に声をかけた。
「そうだ!! なんだ、お前は!? 邪魔をするな!!」
自分より小さい少年なので高圧的な態度で話す。
「邪魔なのはお前達の方だ。ひとりの敵にやられるようなやつらはひっこんでな!」
刀のような鋭い言葉を浴びせた。
「ぐう!!」
団員達は睨むが、一応味方で図星なので、なにも言えずに下がった。
「ならお前達が責任をもって、あの小娘をなんとかしろ!!」
自分達ではどうにもならないので二人に丸投げし、敵が弱ったところを狙おうと考えており、偉そうに命令した。
「黙れ、犬!」
古貞は刀をうるさい隊長の首に突きつけた。
「ぬうう!!」
突然の暴挙に隊長は怒りを堪えるような形相で少年を睨み、団員達は動きたくても動けない状態になった。
少年と警察団の仲は険悪なものになり協力できるような状態ではない。
「ふん!」
警察団と争う気はなく静かになり、周りの団員達を見て、古貞は刀を下ろして離れた。
「くっ!」
刀がなくなっても隊長は安心せずに少年を睨み、団員達も怒りを堪えるような表情で睨んでいる。
対峙している美少女二人。
(他の連中が邪魔だな!)
鮎美を捕獲したい盗賊ギャルは邪魔者達のせいで決行できず苛立ち焦った。
「アハハハ!!」
耳障りで不気味な笑い声とともに資材の上に突然ピエロが現れた。
「なんだ、あいつは!?」
全員の視線が集まり、皆を代表するように隊長は叫んだ。
「クラウン!!」
「仲間か!」
盗賊ギャルの反応を見て古貞は敵と判断した。
「アハハハ!! マヌケども!! おれを捕まえてみろ!!」
挑発的に笑い、瞬時に一本のナイフを出して投げ、警察団員の首に命中させた。
「アハハハ!! 鬼ごっこだよ~ん!!」
笑いながら遠くへジャンプし、着地して走った。
「おのれ、ふざけやがって!! 追え!!」
挑発にのり、盗賊ギャルより弱そうな相手なので隊長と団員達はクラウンを追う。
「あっちより厄介そうな相手だな。おれもあのピエロ野郎を追うか!」
古貞は盗賊ギャルよりピエロの方を危険視し追うことにした。
「鮎美!! おれはあいつを追うから、ひとりでがんばってくれ!!」
見た感じ鮎美より弱そうな相手と判断し彼女に任せて走った。
「最初からそのつもりよ」
少年の力を借りずにひとりで闘う気だったので一対一の状況になり、静かな闘志を燃やして構えた。
(さてどうやって生け捕りにするか)
邪魔者達がいなくなったので盗賊ギャルは相手に悟られないように悪い頭を必死に絞って捕獲方法を考える。
ゴングはないが美少女同士の闘いが始まる。
笑う邪悪なピエロ クラウン。メスガキの盗賊ギャル。片方はベジカラフルよりひどい扱い。
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