第35話 改邪帰正
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鮎美が焼却ロボと戦闘をしている頃。法歩と精鋭部隊は沼束を攻撃していた。
彼女の指示で団員達は空を飛びながら基地を攻撃して制圧し、進行している。
武影が教えてくれた無人の基地を攻撃しているので反撃はなく、精鋭部隊は無傷だった。
基地を制圧し、攻撃をやめ、団員が法歩に近づいた。
「羽尾指揮官。この基地にも敵がいません。この攻撃に意味があるのですか?」
無人の基地ばかり制圧しているので懐疑的な者達もいた。法歩は精鋭部隊をだまして時間稼ぎをしていた。
「無人の基地ほど制圧しやすいものはない。外堀を埋めるのは大事なことだ。私のやり方に文句でもあるのか?」
もっともらしいことをいって睨んだ。
「ありません」
納得し、団員は仕事に戻った。
(しかし、このままではいけないな)
もっともらしい理由でだましたが、これ以上、無人の基地を攻めると同じような団員が出て、だますのが難しくなる。
(架空の敵がいれば。ん?)
式神端末が鳴ったので取りだした。
「こんな時にだれだ?」
法歩は少し怒った。
「羽尾指揮官だ。どうした?」
繭林第一基地の連絡だったので出た。
「なにい!!」
話を聞いて彼女は驚いた。
「そうか。分かった」
式神端末を切り、一瞬、笑みを浮かべて真剣な表情になった。
「全員!! 繭林第一基地に戻るぞ!!」
法歩は大声で指示を出し、飛んでいる団員達は驚いた。
「なぜです!? まだ敵と戦っていません!!」
突然の帰還なので精鋭部隊は納得できない。
「ご領主様が暗殺されそうになった!! ご領主様のために戻る!!」
「ご領主様が!!」
領主が暗殺されそうになったことを知って、精鋭部隊は文句などいえなかった。先ほどの連絡は元に戻った世冥が出したものだった。
「制圧した基地も捨て、敵がくる前に移動する!!」
連合団と戦闘をせずにここから離れることができるので法歩は心の中で喜び、指示を出した。
「「「了解!!」」」
団員達は飛んで移動した。
(なにがあったんだ)
心の中で半分喜び、半分不安になり、無傷の精鋭部隊とともに繭林に帰還した。
◇
帰還した法歩は繭林第一基地の指揮官室へいった。
「ご領主様!!」
世冥が立っていたので驚いた。領主の部屋は壊れて使えないので、ここにいた。
「そちらは?」
領主のそばにいる緋恋を見て、少し警戒した。
「彼女は私を元に戻してくれた恩人のひとり 杉木緋恋だ」
「杉木。あの男の娘」
世冥が殺した男の娘と分かり、法歩は頭をさげた。
「止めることができなくて申し訳ない。そして、ありがとう」
彼女の父を殺したのは世冥だが、死なせてしまった責任があって謝り、領主の恩人なので、お礼をいった。
「いいんだ」
法歩の立場では止めることができないのは分かっており、父を殺された恨みは消えていた。
「ご領主様」
頭をあげた法歩は世冥を見た。
「亡霊石の悪霊が私に乗り移っていたが、緋恋達のおかげで元に戻った」
長く仕えている彼女は世冥が元に戻ったことが分かり、喜んだ。
「迷惑をかけた。本当にすまなかった、羽尾指揮官」
悪霊のせいでも責任を感じており、世冥は頭をさげた。
悪霊が乗り移っていた世冥にひざまずくのは屈辱だったが、今なら平気で法歩はひざまずいた。
「おかえりなさいませ、ご領主様」
本当の領主が戻ってきたので喜び、涙を浮かべた。
「私は領主をやめる。協力してくれ」
「はい」
世冥がケジメのためにやめるので止めない。これが二人の最後の仕事になった。
領主が元に戻り、法歩が帰還したので沼束を攻撃することはなくなった。
「名門貴族の男の娘の残酷オスガキ無双」と「非正規団員の小事件集」も連載中です。




