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第30話 怒り伝播

 ◇


 沼束と繭林第一基地で激しい戦闘が行われている頃。伊仙奇第四基地の団員達はそんなことなど知らない。


「ちっ!」


 凪がいらつきながら廊下を歩いており、舌打ちをした。なにをやってもうまくいかなくなり、秀羽や取り巻きとの関係も悪くなって、味方がいない。

 落ちぶれても前より強気で態度が悪く、周りと対立しており、バカにされている。


「くっ!」


 包帯が巻いてある顔はまだ痛くて、廊下のゴミ箱を蹴って八つ当たりした。ゴミ箱の中身をぶちまけて彼女は移動する。


「おい。ゴミを片づけろ」


 三人の女性団員が笑いながら注意した。


「ああっ?」


 機嫌が悪い時に注意されたので凪は女性団員達を睨んだ。


「あんた達が片づければいいだろ」


 三人はエースだった彼女に媚びへつらっていた格下だが、秀羽や重月、グループを恐れていたので、今では凪を見下している。


「グループが崩壊したから、もうあんたなんて怖くない」


 格下が強気な態度で見下しているので凪の怒りは増していく。


「あんたがぶちまけたんだから早く片づけろ。元エース」


 女性団員は飲みかけのペットボトルを投げた。


「なっ!?」


 凪はかわすことができず、頭に当たって中身がかかった。


「「「ハハハ!」」」


 同じようなことをされてきた三人は気分がよく、頭が濡れている彼女を見て笑った。

 凪も同じように笑ったが、自分が笑われるのは我慢できなかった。

 ペットボトルが当たって、顔がしみるので格下にやられたことを理解し、ドス黒い怒りと殺意でいっぱいになった。


「ぶっ殺す!!」


 怒りと殺意に支配されている凪はブレーキが壊れ、刀を抜いて三人に斬りかかる。


「わっ!?」


 斬りかかってくるほどのバカと思っていなかったので三人は驚いた。二人は武器がなく、ひとりは刀を抜いて散開した。

 落ちぶれても格下の二人を斬り殺した。ペットボトルを投げた女性団員は刀を構えているが、凪は刀で弾いた。


「死ねえ!!」


 女性団員を斬り殺し、廊下は三人の血で赤くなった。


「格下の分際で私をバカにするからだ」


 バカにした三人を殺して満足し、凪は悪い笑みを浮かべて、刀を鞘にいれた。


「凪が団員を殺したー!!」


 殺すところを見た団員がいて騒いだ。


「こんなカスどもを殺した罪で捕まるのはごめんだ!!」


 一時の感情で殺しても彼女に後悔はなく、格下を殺した罪で捕まるのは嫌なので逃げた。


「緊急事態!! 凪が逃げたー!!」


 凪が三人の団員を殺したことは基地中に広がり、警報が鳴り響く。


 ◇


 凪は捕まらず、伊仙奇の街まで逃げた。基地が騒いでいるだけで手配されていないので平気だった。


「もう団員じゃないから、もっと遠くへ逃げないと!」


 罪を償う気などなく、団員や第四基地に未練がないので彼女は悪党の思考になっていた。凪は悪党の素質があり、落ちぶれたことで道を踏み外した。

 手配されて通報されるとまずいので伊仙奇の街から出ようと走る。その時、落ちている荷物を見つけたので止まった。


「落ちている物は拾った人の物。これから逃亡生活をするからな」


 荷物を拾って自分のものにした。


「泥棒!! おれの荷物を返せ!!」


 一般人の男性が怒鳴った。いきなり泥棒といわれたので凪は怒って睨んだ。


「これがあんたのって証拠でもあるの?」


 荷物を見せて挑発する。


「盗人猛々しいやつだ!! コインロッカーに入れておいたおれの荷物がなくなってて、お前が持ってんだよ!!」


 荷物を盗まれた怒りで男性はひどく怒っており、彼女を犯人と決めつけている。

 盗まれた荷物を凪が拾って犯人になってしまったが、自分のものにしたので泥棒と同じだった。


「そんなの知らないよ。これは私が拾ったから私のものだ」

「なんだと!!」


 怒らせるような言い方で男性の怒りは増した。


「返してやれ、この泥棒!!」

「そうだ、そうだ!!」


 周りに野次馬がおり、凪を非難した。


「その人がいつも持ってるものだから、その人のだよ!」

「さっさと謝って返せ!!」

「若いくせに泥棒なんてやって恥ずかしくないのかい?」


 男の味方ばかりで凪を泥棒と決めつけている。いつも見下している一般人に非難されているので凪はきれた。


「返せばいいんだろ!? 受けとれ、この!!」


 彼女は荷物を勢いよく投げた。


「あっ!!」


 男性はとることができず頭に当たって死んだ。男性が死んだので野次馬は青い顔になり、静かになった。


「あんな荷物で騒ぐのは大げさだよな」

「ほんと、ほんと」


 冷や汗をかいて手の平を返した。


「悪口の炎!! 消えろ!!」


 凪は三人殺したので躊躇がなく、非難した野次馬を許さず、能力を使って燃やした。


「うわああああああ!!」


 燃えなかった野次馬は逃げ惑い、ぶつかる者が続出した。


「邪魔だ!! この!!」


 怒った野次馬の男がぶつかった男を殴った。


「なにすんだよ!!」


 殴られた男は怒り、殴り返した。


「やめろ!! そんなことしてる場合か!?」

「ひっこんでろ、カス!!」


 二人を止める男がいるが、殴り倒された。


「やったな!!」


 その男も怒り、争いに加わった。ちょっとしたことで野次馬は怒り、手当たり次第に暴れ、関係ない人達も争いに巻き込む。

 凪の怒りが移って広がっていくように人々は怒り狂って争い、ケンカが殺しあいになりそうだった。


「これはいい! もっとやれ!!」


 争う人達を見て凪は喜びながら逃げた。

 凪を捕えるために稲子と未舞、喜末が出動したが彼女を捕えるどころではなかった。三人は争いに巻き込まれて凪を逃がしてしまった。

 領民達は凪の能力で怒りやすくなっていたので稲子達は影響を受けず、増援がきて争いは止まった。

 秀羽と名尻指揮官はこのようなことをして悪党になった凪を庇うことができないので見捨て、彼女は手配された。


 


 


 

 悪党になった凪。彼女の能力は相手を怒りやすくすることもできます。

 「名門貴族の男の娘の残酷オスガキ無双」と「非正規団員の小事件集」も連載中です。

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