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美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者  作者: ライトニング
2章 グラディエイキャット編
20/212

第3話 美女の神隠し

 行方不明の美女が突然現れた事件発生。

 ◇


「さてどれにすっか」


 いつものように古貞は哨戒を終え、コンビニに寄って昼食を選んでいる。高山奇にきて、かなり経ち、自分の庭のように街にも慣れ、今ではコンビニの常連だった。


「今日はオニギリにすっか」


 昼食が決まり、オニギリコーナーに手を伸ばす。


「古貞君」


 聞き覚えがある声に反応し手を止めて振り向いた。


「鮎美」


 そこには白い団員服姿の少女がいた。


「自炊してるお前がコンビニにくるなんて珍しいな」


 一緒に昼食をとることが多いので彼女の食生活は分かっており、コンビニ弁当をあまり食べず弁当も鶏のササミや野菜が多い栄養重視。


「いつも自炊してるわけじゃないわ。寝坊とか作るのが面倒な日もあって、たまに買って食べるし生活用品も買うから、けっこうくるわ」


 ひとり暮らしはなにからなにまで自分でやらなければいけないので気楽ではない。


「お互いひとり暮らしは大変だな」


 彼女の辛さが分かる少年は同情した。


「古貞君はそうでもないでしょ」


 鮎美は商品を見て移動しながら嫌みを言った。同じひとり暮らしだが少年は広い部屋に住み、冷凍食品などのレーションがあり不自由なく生活している。

 ほとんど自炊をせず冷凍食品に飽きたら、コンビニや飲食店で好きな物を食べる生活を送っている。


「まあね」


 嫌みを気にせずに笑い、オニギリを選ぶ。彼女もオニギリを選ぶように古貞の近くへ寄った。


「特訓ばかりで疲れちゃって晩ご飯も手抜きが多いわ」


 自炊がおろそかになったのは少年とのスパーリングや滞空術の特訓が原因だった。


「けど滞空術を会得しただろ」


 特訓の日々で成果が出て、鮎美は滞空術を完全に会得し、それを利用した攻撃も編みだした。特訓によって二人の距離も縮み、偶然コンビニで遭遇しても気軽に話せるようになっていた。


「あとはその力を存分に披露できるチャンスがあればな」


 彼女が得た新たな力を見せつけて活躍すれば現状が変わるかもしれない。


「この平和な高山奇でそう簡単に事件が起きるとは思えないわ」


 戦闘で役に立つ力なので闘わないと意味がない。それに自分の現状改善より平和優先の不器用な性格なので、なかなか報われない。


「うわっ!!」

「おおっ!?」


 その時、平和をかき乱すようにコンビニの外から人々のざわめきが聞こえてくる。


「えっ!? なにっ!?」


 少女は驚き、動揺し外の方を見た。


「なにかあったのか?」


 古貞の方は冷静でコンビニからゆっくり出て周りを見渡す。鮎美も少年についていくように外に出た。

 野次馬が多く、皆の視線が集中しており二人もその方向を見て騒ぎの原因が分かった。


「うおっ!」

「えっ!?」


 少年は少し驚き、少女は顔を赤くして驚いた。二人が見たものは全裸の女性だった。

 なにも身につけておらず裸足でたどたどしく歩き、表情は羞恥心などなく白目をむきつつボンヤリしていて口はだらしなく開きっぱなしでよだれがたれている。

 長い茶髪は乱れており、全身汗まみれで昼の照りつける日光が艶めかしく体を光らせる。


「なんだ、あれ!?」

「気持ちわるっ!」


 いい体つきだが、男性達は性的な目で見ず不気味なものを見ているような感じでドン引きしていた。


「痴女?」

「頭おかしいんじゃないの」


 女性達は同情や恐怖、軽蔑などが入り混じった目で見ており、目をそらす者や親は子供に見せないようにしている。

 物珍しいので人々は集まり、やばい女に近づかないようにし彼女がくると下がって道を開けていく。

 警察団や基地の団員がきていないので古貞が対応し野次馬をかきわけるように進み、鮎美もついていく。人々も団員と気づき道を開ける。


「おい、あんた!! 今日は裸になるほど暑くねえだろ!! 春の陽気でも、そんな格好じゃ風邪をひくぜ!!」


 正気じゃない女性に大声で呼びかける。


「ああ……ああ……」


 女性はまったく反応せず止まらない。


「春だからな、こういうのが出てくるか。それにしてもまだわけえのに……辛いことでもあったのかな」


 古貞は年上の女性に同情した。


「露出狂や性犯罪じゃなさそうね。表情がやばいわ」


 鮎美は動揺しながらも、なんとか冷静に女性の体と表情を見て状況を分析している。


「あれ、この人!?」


 顔を凝視して、だれだか分かったように驚いた。


「鮎美の知り合いか?」

「違うわ。見たことがある顔で知り合いじゃないわ」


 少年も女性の顔を凝視するが、見たことがない顔で美女だということしか分からない。

 女性は二人に近づくように歩くが、足が限界なようで歩みが遅くなった。そして力尽きたようによろけて、うつぶせに倒れた。

 倒れたことに古貞、鮎美、野次馬は驚き、さらにざわついた。


「ああ……」


 最後の力を振り絞り女性は古貞達に手を伸ばし、縋るようなかすれ声を絞りだした。しかし彼女の手をつかむ者はいなかった。


「たす」


 助けを求めようとした瞬間、死んだように気絶し痙攣を起こした。


「おい!! おい!!」


 古貞が大声で呼びかけるが反応なし。


「鮎美、彼女を見てくれ。男のおれがいくのはちょっと」


 周りには大勢の人がおり、男の彼が全裸の女性に触れるのは少々問題があるので少女に指示を出した。


「了解」


 鮎美は指示に従い、女性に近づき自分の団員服の上着を引きちぎるように脱いだ。下は紫のレオタードで恥ずかしくない。

 彼女を抱きおこし、上着をかけて見えないようにした。


「しっかりして!!」


 体をゆすって大声で呼びかけ、胸に耳を当てる。


「弱いけど心臓は動いているから生きてるわ」

「そうか」


 気絶しているだけと知り、古貞は安心し少女は女性にキスをするような感じで顔を凝視した。


「やっぱり、この人は行方不明のグラビアアイドルだわ」


 彼女だけでなく野次馬の中にも女性のことに気づいていた者達はいた。


「おい!! 基地へ運んで保護しようぜ!!」


 全裸の女性をこのままにはしておけないので基地へつれていくことにした。


「了解」


 鮎美は軽々と女性を持ちあげて背負った。


「はい、どいて、どいて!! 見せ物じゃねえぞ!!」


 古貞は野次馬をどかすように進み、少女は女性の重さを感じていない軽い足取りで基地へ向かう。

 白昼に現れた謎の美女。平和な高山奇の街を騒がせたが、徐々に静けさが戻り、野次馬は散っていく。


 ◇


 古貞の部屋。全裸の美女を基地の医務室へ運び、二人は席に着いて休んでいた。


「あの人、だいじょうぶそうでよかったね」


 医者から彼女の状態を聞いた鮎美は安心しており、部屋の主に話しかけた。


「ああ、そうだな。それであいつはなんなんだ?」


 あの騒動では、ゆっくり聞けなかったので女性の正体を聞く。


「彼女は数週間前に行方不明になったグラビアアイドルでそんなに売れていない有名人よ。ニュースや週刊誌で小さな話題になって防衛団の行方不明者リストにものってるわ」


 少年はニュースや週刊誌などをあまり見ないので知らなかった。


「身代金などの要求がなく人質としての価値が低いからトラブルか失踪扱いで警察団が捜していたわ」


 辛辣なことを言うが、彼女の言う通り一般人に毛が生えたようなグラビアアイドルを誘拐しても身代金は期待できない。


「顔と体目的の誘拐、人身売買か」


 若い美女をさらう目的はそれぐらいしか思いつかないので古貞はそう判断した。


「それと数年前から今回のように皇東各地で若い女性が急にいなくなって、しばらくすると記憶を失った状態で戻ってくる事件が増えてるわ」


 今回の事件に関係があるようなことも話した。


「若い美女ばかりが消える神隠しか。鮎美も気をつけろよ」


 普通にきれいで狙われる可能性があり少年は少し心配になった。


「え、ええ。でも私は一般人とは違う団員だし滞空術を身につけたからだいじょうぶよ」


 古貞の言葉で顔を赤くし、その顔をごまかすように力こぶを作るようなポーズをとった。


「たしかにおめえは一般人よりはつええけど滞空術はまだ実戦で使ってねえし特訓のようにいかないこともあるぜ」


 鮎美の弱点を指摘した。滞空術を利用した攻撃は特訓で古貞にしか使っていないので実戦経験が乏しい。


「そうね、気をつけるわ」


 これまで実戦ではいいことがない彼女は嫌というほど分かっており肝に銘じた。


「行方不明者のリストとかほしいな」


 気にもかけていなかった事件のことを知って少年は興味を持ち、リストをほしがった。


「リストならここからでも見られるよ」


 テーブルの操作パネルをいじってエネルギー画面を出し、さらにいじって女性達の顔が並んだリストを映した。


「これがその事件の行方不明者よ」


 エネルギー画面は少年に見えるように動いた。


「どこを見ても美女ばかりだ。おっ! あいつがいた」


 美女ばかりの画面を楽しみながら見て目の保養をし、保護したグラビアアイドルの顔を見つけた。はしゃぐ少年を見て鮎美はつまらなそうな表情を浮かべた。


「職業も年齢もバラバラで戻ってきた女と戻っていない女がいるな」


 共通点は若い美女というぐらいでグラビアアイドルのように戻ってきた女性にはマークがついており、まだ戻っていない女性が多い。


「手がかりとかねえのか?」

「女性達は記憶を失っていて、なにも覚えていないし体は打撲などが多いけど、すぐに回復して社会に復帰した人が多いくらいしか分からないそうよ」


 鮎美の説明で手がかりがほとんどないことが分かり、これでは解決などできるわけがない。


「保護したあの人も記憶があるかどうか」


 グラビアアイドルの頭の方を心配した。


「人身売買組織から逃げてきたか捨てられたか、それとも他のトラブルか」


 少年は思いつく限りのことを考える。


「まあ私達がいくら考えてもしょうがないわね。この事件は警察団に任せましょう」


 庶民の下級団員ではどうすることもできず自分のことで精いっぱいなので鮎美は考えるのをやめた。


「そうだな」


 興味がなくなったように古貞は操作パネルのスイッチを押してエネルギー画面を消した。彼は好奇心で調べていただけで解決する気はない。


「それじゃあ私いくね」


 保護した女性のこととそれに関係することを十分話したので少女は部屋から出ようと立ちあがった。


「今日、特訓は?」


 滞空術を会得しても少年との特訓は続けており、古貞は予定を聞く。


「今日はお休みにするわ」


 人助けをして疲れたので今日の特訓はなしで自動ドアへ向かう。


「ん、分かった」


 古貞は納得し座ったまま鮎美を見送った。


「でえじょうぶかねえ、高山奇の平和は」


 胸騒ぎを感じながらも他人事のように思い、マンガに手を伸ばして読む。この時、少年は自分がこの事件に関わることなど知らずマヌケ面をしていた。



 


 次は神隠しの犯人登場。

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