第26話 領主の秘密
四人が聞いてくれるので世冥は話を続ける。
『小さい頃から超能力がある私は亡き母の跡を継いで領主になった』
超能力というレアな能力と母が領主なので産まれた時から勝ち組だった。しかし、すべてが幸福ではなかった。
上馬の女神と呼ばれるほどの領主になっても部下達の期待で押しつぶされ、表面だけ従う者が多く、灼熱コブラのような暗殺者の相手をし、形だけ支える味方しかいなかった。
『心と体が削れる孤独な領主生活で疲れていた小さい頃の私はあんな商人を入れてしまった』
小さい領主の負担は大きく、最大のミスをしてしまった。
『あの暗厨がこの巨大な亡霊石を持ってきて、悪霊が私に乗り移って成長し、上馬の魔女になってしまった』
世冥は話だけでなくテレパシーで巨大な亡霊石を持ってきた商人の姿を古貞達に見せた。
「こいつは満奈がいってた変な商人だ」
短いオレンジの髪で黒いサングラスをかけていて、緑のスーツ姿の若い男性で満奈の情報と同じだった。
『上馬を治めながら、ばれないように悪人達を支援し、逆らう者達を従順にしてきた』
乗り移った悪霊が好きなようにやり、防四郎を返り討ちにし、七人の女犯罪者を色欲衆にした。
抵抗しても精神が弱く、初めて会った時、古貞を殺さなかったことと超能力を封じたことしかできなかった。
『私が弱いせいでこんなことになってしまった。私は領主失格だ』
上馬がこうなったのは暗厨と亡霊石の悪霊だけでなく、弱い自分のせいでもあると思っている。
『だから私ごと悪霊を殺して、すべてを終わらせて!!』
命令ではない悲痛な願いが四人の頭に響き、彼女の声は消えた。
「余計なことをしゃべりやがって!!」
悪霊が世冥の精神を完全に支配し、テレパシーを封じたので話せなくなった。
「ばれちゃあしょうがない。私は世冥ではなく亡霊石の悪霊 傾爛だ」
赤い着物姿の花魁の霊が世冥の頭上に現れた。若い美女だが性格がきつそうな顔をしている。
傾爛は贅沢をして貴族と街を滅ぼして殺された悪女で亡霊石の悪霊になった。
「真実を知ったお前達に世冥ごと私を殺すことができるか?」
領主を人質にし、離れないように彼女の体に入り、挑発して笑う。
「卑怯者!!」
世冥を殺すつもりだった緋恋は本当の仇が分かり、悪霊だけを倒すことができないので、戦意が揺れていた。
しかし本当にやばくなったら彼女ごと傾爛を殺す気で灼熱コブラとヴィジランスも少し同情しただけだった。
古貞は真剣な表情を浮かべて領主を見ているが、戦意を彼女に向けていない。
「この小娘でお前達を倒してやる」
今の世冥では勝てないので傾爛は自分の力を使って彼女を強くする。
ピッチフォークを消し、破けて全裸になり、瞬時に緑のレオタード姿になって、長い髪はポニーテールになった。無敵の宝玉は胸の中央について光り、赤い線が全身に広がっていき、両目が赤くなって古貞達を睨む。
「超能力は使えなくなったが、世冥の体を限界まで強化した」
裸足で床を踏み砕き、強さをアピールした。超能力をやめ、ズバ抜けたパワーとスピードで攻めることにし、動きやすい姿にした。
ブルマ男の時の悪霊と違って傾爛はとても強く、世冥の超能力を限界まであげていたので、今の彼女は意思がなくて力を制御しないモンスターになっていた。
「あんな怪物を殺さずに世冥を助けるのは無理だ。古貞。世冥のことは考えずに殺した方がいい」
助ける方法がなく、テレパシーで彼女の覚悟は伝わっており、緋恋は少年に助言した。領主を助けることより古貞を死なせたくない気持ちの方が大きい。
「おれはひねくれ者だから、殺してくれっていうやつは殺さねえ」
世冥を殺す気がなく、笑みを浮かべており、彼女を救えるような頼もしさがあった。
「攻撃できるのなら攻撃してみろ!! 小娘がどうなってもいいのならな!!」
傾爛は領主の体を動かし、助走のように突っ込む。
「おれの攻撃を知らねえのか? 破紋邪!!」
古貞は刀を光らせて振り、くらった彼女は止まった。
「なっ!?」
世冥の体は斬れず、傾爛が斬れてダメージを受けたので驚いた。
世冥は体操選手のような姿で戦闘をします。
「名門貴族の男の娘の残酷オスガキ無双」と「非正規団員の小事件」も連載中です。




