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第20話 独房の宝

 独房には調度品がなく動物の檻のようで床に血のようなルビーと涙のようなサファイアが散乱しており、その宝石が霞むほどの美少女がぺたん座りをしていた。

 肩に届くほどの銀髪のセミロングでアメシストのような紫の猫目は優しそうな感じだった。

 ボロボロの貫頭衣姿でみすぼらしく、ダイヤモンドのような美しい肌は傷だらけで血が流れていなくても痛々しい。体つきは細くて引き締まっており胸と尻は控えめで形がいい。

 頑丈な手枷は両手を拘束しており少女の細腕はある程度しか動かない。足の裏が少し汚れている裸足で片足には足枷があり重そうな鎖と鉄球がついていた。


(幻にいた顔だ!!)


 茶釜屋敷の風呂の幻にいた顔だが少年は警戒し、いつでも刀を抜けるようにしており睨んだ。


「おめえは色欲衆か!?」


 今までの戦闘を考えれば彼女を敵と思うのは当然だった。


「違います! 私は色欲衆じゃないです!」


 必死な少女を見ても信じるのは難しい。


「じゃあだれだ!? なんでここにいるんだ!?」


 分からないので聞いて判断する。


「私の名前は北平きたひら 宝璃ほうり。世冥に捕えられて、ここにいます」

「世冥に!?」


 領主が捕えた少女と分かって古貞は驚いた。


「なんで捕まったんだよ? 犯罪者には見えねえし、世冥が捕えるような人物なのか?」


 彼女が捕まった理由が分からないので聞く。


「この独房を見てください。宝石などがたくさんあるでしょう」


 心が宝石のようにきれいな少女は丁寧に話した。


「おお。お前がきれいだから宝石が霞んでいた」

「えっ……」


 少年の言葉で照れて赤くなった。お世辞がうまい方ではないので心の底からの本音だった。

 独房の中をよく見るとルビーとサファイアが床に散乱しており水洗トイレがなくて、おまるがあり砂金と金の塊、アクアマリンがあり、簡素なベッドにもアクアマリンと砂金があった。


「ここは宝石だらけだな」


 独房にたくさんの宝石と貴金属があり宝庫のようだった。


「この宝石は私の能力で出したものです」

「えっ!? ここにある宝石を!?」


 独房にある宝石などは宝璃が能力で出したもので古貞は驚いた。


「能力で生みだした宝石や貴金属は材質が同じの偽物で価値はねえ。全部偽物かよ」


 つつじの能力も金と同じ材質のもので価値はなく能力で生みだした宝石などは本物ではないと世間の常識で決まっている。


「いえ。私の能力は本物を生みだすので、ここにあるものでも、すごい価値があります」


 少女は首を横に振り、とんでもないことをいった。


「なんと!! 全部本物!?」


 常識を覆すことなので驚き、たくさんの宝石と貴金属を見た。


「この能力を知った世冥は私を捕えて宝石などを出させるために、ここに閉じこめました」


 宝璃は捕まった過去を思いだして悲しくなった。彼女の能力を利用して財産を増やし、スルーダイルは大量の宝石を得ていた。


「この能力のせいで私はひどい目にあってきました」

「金持ちになれる能力だけど、そのせいで捕まって、こんなところに監禁されたら意味ねえな」


 億万長者になれる能力でも彼女は幸せになれなかった。


「私の心や体に苦痛を与えて出たものが宝石などになるので、いつでも出せる万能なものじゃないです」


 つらい欠点があり傷だらけの理由が分かった。


「この傷は鞭でたたかれたもので出た血はルビーになって涙や汗はサファイアになりました。耐えられなくて泣き叫んでも世冥はたたくのをやめませんでした」


 その時の苦痛を思いだし震えた。


「下剤を飲まされて無理矢理、排せつをさせられて大きいのは金の塊に小さいのは砂金になり世冥は私の排せつを見て笑っていました」


 苦痛を受け、惨めな気持ちでいっぱいになり宝石などを出すたび人間の尊厳がなくなっていった。生きていれば、いくらでも出せるので領主は生殺しのような苦痛を与えて死なないようにしている。


「世冥のやつ。許せねえな」


 ひどいことをし、ちょっとうらやましいので少年は怒った。


「私の能力は悪人達が利用するから亡くなった両親は隠すようにいっていました。ばれないように、なるべく人と関わらない生活をしていて今と同じくらい寂しかったです」


 今は苦痛を与えられ宝石などを出し自由がない生活だが能力がばれないようにしていたので昔も孤独な生活で、その寂しさがつらく泣いて涙がサファイアになった。

 そのサファイアを売り生活に困らなくても彼女は人とのふれあいを欲していた。


「まあ、おれがきたから安心しな。独房から出してやる」


 古貞は彼女を助けようと刀を抜いて鉄格子を斬り中に入った。


「まあ」


 世冥や灼熱コブラとは違う少年が近づいてくるのがうれしかった。彼がここにきたのは偶然だが宝璃は運命を感じていた。


「枷を斬ってやる」


 宝石を出させるため能力を封じない動きを制限する枷なので簡単に斬れ、刀を鞘にいれた。


「あっ」


 両手と片足の枷がなくなり少女は両手を見て喜んだ。


「傷も治してやる。治布!!」


 痛々しい傷が似合わないので古貞は五本の指から銀色の糸を出し、瞬時に銀色の長い布を作り彼女の全身に巻く。血はルビーになって傷は固まっており、また鞭でたたけば開くほどで治さず化膿しないように傷つけていた。

 回復効果がある布は全身の傷を治していき、終わるとほどけた。痛々しい傷がなく玉のような肌になっており可憐な妖精に見えた。


「傷が!!」


 全身の傷が消えたので驚き、喜んで涙を浮かべ立ちあがった。


「ありがとうございます、古貞さん!!」


 宝璃は感謝し少年に抱きついた。


「お、おう」


 心地いい玉肌とやわらかい胸の美少女でも、あまり体を洗うことができなかったので少しにおい、うれしさは半減していた。

 解放し傷を治してくれた古貞に好感を持ち、おとぎ話に出てくる王子に見え、その人とのふれあいがうれしくて濡れている体でも気にせず、なかなか離れなかった。


「本当にありがとうございます。私のすべてを捧げて必ずお礼をします」

「お、おお」


 彼女の重くて強い意志に押され少し恐怖を感じた。


「おれは色欲衆と世冥との戦闘があるからついてこい。ここよりおれといた方が安全だ」


 ここに彼女を置いていくと敵に利用されてしまうので一緒にいた方がマシだった。


「はい」


 古貞のそばにいたいので彼女に恐怖はない。


「どうやって次の色欲衆がいる部屋へいけばいいんだ?」


 偶然きてしまった部屋は色欲衆がいる部屋ではないので今までのようにいくことができない。


「分かりません。ごめんなさい。お役に立てなくて」


 ここに監禁されていた彼女も知らないので申し訳なさそうな表情を浮かべて頭をさげた。


「気にすんな。ん?」


 壁を見ると小さな穴ができ、大きくなっていった。今まで通った穴と同じものができた。


「穴ができた。これで次の部屋へいける」


 この部屋から移動できるので古貞は喜んだ。


「いくぞ、宝璃」

「はい」


 少年は穴へ向かい、少女は楽しそうについていく。二人が通ると穴は閉じた。解放した新しい仲間との冒険が始まった。


 ◇


 次の部屋の壁に大きな穴ができ、古貞と宝璃が出ると穴は閉じた。


「うわっ!? なんだ、この部屋は!?」


 部屋に着いた古貞達は部屋を見て驚いた。石造りの広い部屋で天井には太陽のような照明があって暑く、その熱で床に火がついて燃えているところがある。

 古貞の濡れた体は乾き、汗を流しても蒸発するほど暑い。


「暑いです……はあん……」


 宝璃の汗も宝石になる前に蒸発し暑さで顔は赤くなり、苦しそうに熱い息を吐いた。

 石造りの部屋は燃えるだけで壊れることはなく乾燥していて熱がこもっており石窯のようだった。


「ようこそ」


 女性の声が聞こえたので見ると、なめらかな鱗がある黄金のビキニ姿の若い女性が両手を合わせて絨毯のように燃えている炎の床を裸足で歩いていた。部屋や炎の熱を感じておらずクールな表情を浮かべている。


「灼熱コブラ!」


 知っている相手を見て宝璃は恐怖で熱い体は冷え、青い顔になった。


「今度こそ色欲衆だな」


 今までの色欲衆と同じ敵意を感じ古貞は刀を抜いて警戒した。


「色欲衆の灼熱コブラです。宝璃様がいるのは予想外でしたが侵入者を倒して捕えればいいだけです」


 侵入者が独房にいったことを知らないので一緒にいる少女を見て少し驚いた。

 独房に戻されるのは嫌なので体を縮めて少年の後ろに隠れ、敵を睨むが迫力がない。


「私が最後ですので私を倒せば世冥様のところへいくことができます」


 侵入者達によって七人の色欲衆は灼熱コブラだけになった。主を守るというより仕事をちゃんとやる感じで負けることができない戦闘でも冷静だった。


「緋恋は三人、倒したのか!」

「緋恋さんってだれですか?」


 相棒の活躍を知って古貞は喜び、緋恋のことを知らない宝璃は困っていた。


「色欲衆を六人倒したことはお見事です。しかし、そちらの方と同じように倒します」


 灼熱コブラは燃えている床を指さした。炎で気づかなかったが、よく見ると緋恋が倒れていた。


「緋恋!!」


 燃えている彼女を見て古貞達は驚いた。

 宝璃の名前はジュエルキャタピラーです。

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