第4話 空と陸の蹂躙
◇
精鋭部隊が止まって別働隊が進んでいる頃、連合団は戦闘態勢をとり古貞と緋恋、満奈は隠しダンジョンの転送装置の前にいた。
「今がチャンスや」
繭林第一基地に精鋭部隊などがいなくなったので転送装置でいくことができる。
「頼む、満奈」
普通の転送装置と違い、使い方が分からないので満奈に任せた。
「任せて」
少女は腹部の花から長い舌を伸ばし、さゆりの石像の鼻に入れて電気を流した。
「エネルギーよし!」
鼻の穴から長い舌を抜き、へその穴がスイッチで長い舌を入れて押し引っ込めた。エネルギーを与えて起動したので、さゆりの石像の腹部に人が通れるような小さな穴ができた。
「さゆりさんそっくりだ」
腹部に穴ができたので少年は、さゆりの能力で別空間にいったことを思いだした。
「よし!! いくぞ、緋恋!!」
「おう!!」
古貞は穴に入って奥へ進んだ。小さい穴だが広がるので体が大きい緋恋も簡単に入ることができた。
二人が通っていなくなると穴は消え、石像にひびがはいって崩れ落ちた。
「頼むで、岡やん、杉ちゃん」
満奈は崩れ落ちた石像を見て二人の勝利を祈った。
◇
古貞と緋恋が転送装置で繭林第一基地へいった頃、別働隊の装甲車は沼束に着き停止した。寄り道せず、まっすぐきたので精鋭部隊より早く着くのは当然だった。
「小娘ども!! 私達はここにいるから連合団がいるところまで飛んでいけ!!」
籾手屋達は安全な場所で待機し恋花達を敵のところへいかせる。装甲車からアウトリガーが出て安定し恋花達がいる後ろ部分の上が開き、カタパルトが出て上を向いた。
恋花達は戦闘の荷物を装備し背中に折りたたまれた白い鳥の翼を二枚つけた。
「全員、片道の翼を装着!!」
玉里は全員の背中を確認してカタパルトにのった。
「鳶羽玉里!! 天まで飛ぶぜ!!」
カタパルトは動き、彼女は勢いよく射出された。かなりの高さまで飛び、背中の翼を広げて進む。
「灰山水糸!! 発進!!」
次にカタパルトにのったのは水糸で楽しそうに射出された。
「おっと!」
少し体勢が崩れても両手の平と両足の裏から泡がすごい炭酸水を出して体勢を立て直し背中の翼を広げ飛行した。
「私が飛ぶ番だ」
先輩達に続くために真剣な表情の恋花はカタパルトにのった。初めて飛ぶので緊張しているが頭の中で何回もイメージしており失敗などない。
「七恋花!! 飛びます!!」
勢いよく彼女も飛び、イメージ通り翼を広げて飛行に成功した。三人が飛ぶと籾手屋達はバイオートマトン達を操作し、カタパルトにのせて淡々と射出していく。
「これでいい。巨大な象に針を刺すようなものだが痛みはある」
籾手屋は悪い笑みを浮かべた。まともな戦力が三人だけの別働隊が胡麻見家を滅ぼした連合団に勝てるわけがない。かき乱して被害を与えれば十分な戦果になるので精鋭部隊と協力するのが無理な別働隊は奇襲を行う。
空を飛行している恋花達は連合団がいるところへ向かっている。
「慣れると雄大な空と大地が美しいですね」
恋花はバイオートマトン達を操作しながら、いつも以上に大きい空と大地に見惚れている。
「恋花。敵が現れたから戦闘に集中しろ。雄大な空で散って大地に落ちることになるぞ」
「はい!!」
恋花は玉里の言葉で気を引き締めた。遠くに空を飛んでいる絵亜郎と淫魔達がいた。礼羽がいないので少し頼りないが数が多い。
「精鋭部隊じゃないけど沼束を攻める敵には容赦しない。全員、攻撃開始!!」
空からくる精鋭部隊に備えていたが敵なので絵亜郎は両方の弓を向け、淫魔達はマシンガンを向ける。
「各自よけろ!!」
無数の光の矢と銃弾が飛んできたので玉里達は攻撃をかわしていく。背中の翼は後ろに飛んで逃げることができないので飛びながら回避するしかない。
恋花はバイオートマトン達を操作しながらかわしており先輩達より負担があり、かわせなかったバイオートマトンは落ちていく。
「うわあ!!」
かわしきれず翼が片方壊れて水糸は落ちた。
「水糸先輩!!」
後輩はかわすのが精いっぱいで先輩を助けることができない。
「水糸ならだいじょうぶだ!! 恋花!! このままだとやばいので私達も地上へ下りるぞ!!」
「はい!!」
片道の翼は移動用のもので空中戦に慣れていない玉里達は地上へ向かう。敵が空からいなくなったので絵亜郎達は攻撃をやめた。
「あとは地上部隊に任せよう」
地上に味方がいるので絵亜郎達は敵を追わなかった。落ちている水糸は役に立たない翼を捨て巨大な泡の玉で全身を包んだ。地面に落ちて割れても彼女は無事だった。
玉里達は着地し翼を捨てて地上で身軽に動けるようにした。
「空の敵はきませんね」
恋花は絵亜郎達を見ながら専用武器の白いライフルを出した。
「やつらが私達の相手をするようだ」
玉里は地上にいる敵部隊を指さした。白美とハーレムガードがいて空中の部隊より数が多く、数が少ない別働隊ではまともな戦闘にならないほどだった。
「攻撃!!」
指揮を執っているのは飛羽子で白美達はエネルギー弾を連射する。
「うっ!!」
凄まじい攻撃に驚き、恋花もエネルギー弾を連射しバイオートマトンを操作してマシンガンを撃つ。しかし攻撃の勢いが違いすぎて、バイオートマトンはエネルギー弾が当たって消滅していく。
「このままじゃ全滅だ!! 敵がいないところへいくぞ!!」
「はい!!」
玉里は戦いにならないと判断し指示を出した。戦闘を放棄して逃亡することはできないが、これは戦闘をするための移動なので逃亡ではない。
玉里はボールのように弾んで移動し水糸と恋花、バイオートマトン達は必死に走った。白美達は必死に逃げる敵を容赦なく攻撃しバイオートマトンの数は減っていく。
攻撃が届かない距離になったので白美達は攻撃をやめた。空と陸の手荒い攻撃の歓迎で別働隊はまともな戦闘ができなかった。
◇
必死に移動した別働隊は、だれもいない街に着いた。この街はバカ当主の悪政で滅んだので、だれもいない。
「先輩達はどこにいるのでしょう?」
他人を心配する余裕がなく移動しているうちに別々になってしまった。街にいるのはたしかで恋花はライフルを構えて周りを警戒し、バイオートマトン達を広範囲に移動させた。
「人がいない街で静かすぎて不気味ですね」
バイオートマトン達の視界を共有し街を調べ、先輩達や敵を捜している。彼女の頭の中で街の地図ができていく。
「玉里先輩と水糸先輩がいました!」
玉里と水糸の近くにバイオートマトンがいたので見つけることができた。二人も別々になっていたので早く合流しようと彼女達の近くにいるバイオートマトンの位置と地図をあわせてルートを導きだそうとしている。
その時、二人の近くにいたバイオートマトンの視界が消えた。
「えっ!?」
恋花は驚き、近くにいる他のバイオートマトンの視界で見た。
「敵!!」
玉里と水糸は会敵してしまった。空にいる絵亜郎の報告で別働隊がこの街にくるのが分かり部隊をいかせることができた。
自分のところにも敵がいるかもしれないので恋花は警戒し物陰に隠れ、バイオートマトン達で見張りをする。
やられてばかりの別働隊。
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