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第3話 時間稼ぎのフルコース

 娯飯喫茶で秘密の食事をする話です。

 ここは普通の店ではない。そのことを知っているのは武影と法歩だけで、なにも知らない団員達はここで休憩し話す意味が分からず少し動揺していた。それなりの理由がないとごまかせないだろう。


「お前達。移動で疲れただろ。ここで休憩をして腹ごしらえをするぞ」


 休憩と食事でごまかす。精鋭部隊の団員でも少し疲れていて腹も減っている。


「僕もお腹が減っていてちょうどいい。反逆者どもを倒す勇士達に食事をおごろう」


 休憩と食事でさらに時間を稼ぐことができるので武影はおごるフリをした。


「ありがとうございます、幼仲様。それでは、この店で休憩だ」


 おごるバカ当主と休憩の指示を出した指揮官に逆らう者はおらず団員達は休憩することになった。


「おい、店主!!」


 法歩は勢いよくドアを開けて入り、武影と舞沙も入った。


「はい?」


 店内には色気があるコスプレ衣装の若い女性店員達がおり、白いコックコート姿の若い女性が三人を見て、マヌケな声を出した。白いコック帽を被っており白いショートのかっこいい美女で清潔感がある。


「店主サラ」

「はい。いらっしゃいませ、羽尾指揮官」


 彼女はここの店主で頭をさげると、すべての女性店員が頭をさげた。


「腹が減ったので貸し切りにしてもだいじょうぶか?」


 この店の広さなら貸し切りにすれば、すべての団員が入れる。


「はい。開店前で、お客様がまったくこないので貸し切りにできます」


 精鋭部隊の出動の影響もあり客がくることはないだろう。


「それはいい」


 法歩は店を利用できることを喜んだ。


「うまい料理をたくさん頼む。未成年の団員がいて仕事中だから酒はなし。白ワインのボトルに水を入れたものを出せば十分だ」

「はい」


 仕事中なので酒は禁止の注文をした。


「それと私達は特別ルームを利用するから特別料理を持ってきてくれ。私は酒なしで、こちらの方達には上等な酒を頼む」

「かしこまりました」


 注文を終え、法歩は特別ルームへ向かい、武影と舞沙はついていく。団員達も店に入り自由に席に着く。


「さあ、みんな! 忙しくなるわよ!」

「「「はい!!」」」


 サラ達は張りきり、厨房へ向かった。サラは速い動きで料理を作り、女性店員達は安定した動きでたくさんの料理や飲み物を運んでいく。

 未成年の団員達はジュースやお茶を飲み、大人の団員達は白ワインのボトルに入っているミネラルウォーターを飲んで、ほろ酔い気分を味わう。

 女性店員達に見惚れる者もいれば料理や飲み物を楽しむ者もおり精鋭部隊は少しだらけた。

 そんな賑やかなところと違い、法歩と武影、舞沙は特別ルームにおり席に着いていた。特別ルームはドアがある広い個室で静かに食事を楽しむことができ、団員達の賑やかな声が聞こえない。

 武影はなんでも話す感じだが法歩がなにも言わないので話にならない。彼女は周りを警戒し、二人が気づかないようにテーブルにあるスイッチを押した。


「さて……お前はだれだ?」


 予想外の言葉に驚き、二人は意味が分からなかった。


「だれって僕は幼仲だよ」


 武影は冷や汗をかきながら答えた。


「私はご領主様の報告だけは信じている。幼仲様が死んだのはたしかだ」


 世冥を別人のように思っていても仕事の能力だけは認めていた。殺された幼仲が生きているのはおかしいので演技をして、ここまでつれてきた。

 バカ当主のフリをしている武影は青い顔になり舞沙は法歩を睨んでいる。


「この部屋は防音で、このスイッチを押すと私達の会話はどうでもいい会話になるから、なにを話してもだいじょうぶだ」


 特別ルームは密談などをするためのもので、ここにつれてきたのは二人を殺すのではなく本当の会話をするためだった。

 この店は団員が密談などをし、女性店員が色仕掛けをして情報を集める一部の団員が知っている裏工作を支援する移動組織でもある。

 沼束の転送装置と同じで、さゆりが万が一のために用意していた組織で、ここには彼女が集めた女性だけが働いている。


「さあ、お前はだれだ? 腹を割ってなんでも話そう」


 殺気や圧がなく話しやすい感じでも武影はなかなか話すことができなかった。法歩はいらつかず武影が話すのを待っている。


「失礼します」


 静かな部屋のドアをノックし、サラが入ってきた。


「お待たせしました」


 たくさんの料理を持ってきて、テーブルに置く。料理は温かい豚肉のステーキとオムライスが三人前で飲み物は白ワインと白ワインのボトルに入っているミネラルウォーター。


「どうぞ、ごゆっくり」


 まだ料理があるのでサラは部屋から出てドアを閉めた。


「まずは腹を満たそう」

「そうだな。食べよう」


 法歩は優雅な態度でワイングラスにミネラルウォーターを注ぎ、武影と舞沙はうまそうな料理と酒の魅力に負け、白ワインを開けてワイングラスに注いだ。


「ここの豚肉のステーキはジンジャーソースで親しみやすい味だ」


 ミネラルウォーターを飲んで口の中を潤し清めた法歩は料理の説明をした。


「やわらかい!」


 ナイフで簡単に切れ、フォークが簡単に刺さるほどやわらかいので舞沙は驚いた。そして切った肉を口に入れた。


「うまい!」

「んまい。ワインによくあう」


 ろくなものしか食べていない二人は肉料理の味に喜び、武影は白ワインを飲んで口の中を洗い流す。


「あむ! んん!」


 慌てて食べた舞沙は肉が喉につまりそうになったので白ワインを飲んで流した。微笑ましい食事だが武影は真剣な表情をしてナイフとフォークを置いた。それを見て法歩も真剣な表情をした。


「羽尾指揮官。実はかくかくしかじかで」


 酒の力があり武影はすべてを話す。この会話はどうでもいい会話になっている。


 ◇


「なんということだ。そんなことになっていたなんて」


 とんでもない真実を知って法歩は食欲がなくなるどころか怒りとストレスで食欲が増し、自分の料理を平らげた。


「すべてを知って、これからどうするのですか、羽尾指揮官?」


 武影はバカ当主のフリをやめて敬語で話し法歩は敬語をやめていた。


「私はご領主様に逆らえないというより勝てない。だが沼束を攻めることはできない」


 指揮官はミネラルウォーターを一気に飲み、酔ったような気分になり勢いよくワイングラスを置いた。


「ご領主様にばれないように、ゆっくり進んで時間稼ぎをするしかない」


 逆らうことや勝つことができない彼女は細やかな抵抗しかできない。彼女は指揮官でいくらでもごまかすことができる立場なのが幸いだった。


「失礼します」


 ドアをノックして、サラが入ってきた。


「これが当店自慢の特別料理です」

「いい匂いだ」


 彼女が持っている料理からいい匂いがし武影達の鼻は喜んだ。


「なにこれ?」


 サラがテーブルに置いた料理は肉の丸焼きだが武影と舞沙は分からず、食べたことがある法歩は知っている。


「ウサギの丸焼きです」


 調理したサラは初めて食べる二人に教えた。


「ウサギとは!」


 ウサギと知って武影達は喜び、よだれが出そうになった。


「スパイスにつけこんだウサギの肉を余分な脂がなくなるほどオーブンでじっくり焼き、ワインとハーブ、調味料などを煮こんだ特製ソースがかかっています。どうぞ、召しあがってください」


 料理の説明をして店主は部屋から出た。三人はひとり一羽の丸焼きを食べる。


「肉は少しかたいけど嫌なかたさじゃない」


 武影はナイフで切り、フォークで刺して肉を見た。脂が少なく味が凝縮されたような肉だった。


「表面が香ばしくてサクサク。パサパサの肉だけどスパイスがきいていてうまい」


 ソースがかかっていない肉はスパイスの味がし、ジャーキーのようなうまさがあった。ソースがかかっている肉をとり、さらにソースをつけて食べた。


「んまい! 肉がソースを吸って味が中までしみこんでる!」


 武影は舌鼓を打ち、贅沢をしていた上流階級の気分を味わった。


「うまい」


 舞沙は肉を食べて恍惚の表情を浮かべた。

 武影と舞沙の活躍で法歩は正当な時間稼ぎができ、精鋭部隊は娯飯喫茶から動かなくなった。連合団は精鋭部隊が止まったことに気づき別働隊を警戒した。

 娯飯喫茶は正式な伍味駄目食堂のようなものです。

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