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第31話 新生

 古貞にやられた重月が生まれ変わる話です。

 ◇


 連合団が筋骨隆々裸パスタを食べて働いている頃、沼束のだれもいない森の地面に大きなくぼみがあり重傷の重月が倒れていた。

 古貞に蹴りとばされた重月はここまで飛び、地面に激突した。


「ち、ちくしょう……こさだ……!」


 弱々しいが憎悪に満ちた声で自分をこんな目にあわせた相手への殺意しかなく不気味だった。なんとか体を動かそうとしても少ししか動けない。

 蹴りとばされたダメージで体はつぶれ、地面に激突したダメージもあり元の姿に戻った彼は原形があっても中身がひどかった。


「いてえ……!」


 死んでいないので全身に激痛があり、パワーアップした姿になれず回復もできないので苦しんでいる。激痛で眠れず飲まず食わずでも死ぬことなく、ここから移動することができなくて体はゆっくり死んでいる。


「古貞……絶対、殺してやる!」


 古貞を殺さないと気がすまない重月は顔色が悪くなっており激痛など気にせずにもがく。ここはだれもこない森で連合団に協力する領民が多いので彼に気づかないだろう。

 しかし彼の弱々しい怨嗟の声に気づき近づく者がいた。


「こいつは陸雄が強くした少年だ」


 重月に近づいたのは憎閔だった。


「ダークエルフ!!」


 少年は憎閔の姿を見て驚いた。


「いやダークエルフでもいい。おれを助けろ」


 偉そうに助けを求めるが憎閔は調べるように体を見ている。


「おい!! 見てないで早く助けろ!!」


 自分より強い相手でも逃げることができないので強気でヤケになっていた。


「無理だ。体がグチャグチャのメチャクチャで治しても体は自由に動かず、もう戦闘はできない」

「なっ!?」


 ダークエルフは笑いながら言い、重月は絶望し静かになった。もう戦えないのは絶望が大きく、その絶望は怒りや憎しみに変わり彼の心は歪んでいく。


「でも役に立たない人間の体を捨てて魔族の体になれば動くことができ今より強くなれるぞ。私の僕になるのなら魔族にしてやるぞ」


 憎閔は悪魔のような笑みを浮かべた。


「ぬっ!?」


 聞き逃さなかった悪魔の言葉で重月は悩む。人間を捨てるのは、さすがに抵抗があり、いくらダークエルフの美女でも僕になるのは絶対嫌だった。


「嫌ならここでゆっくり死になさい。そうなったら虫や動物に喰われて、惨めにこの世から消えて終わりよ」


 重月は死んで虫や動物に喰われることを想像し顔色がさらに悪くなった。こうなると悩む必要などない。


「死ぬのはごめんだ……人間をやめる。僕になるから魔族にしてくれ。古貞を殺せるのなら魔族でもなんでもなってやる!!」


 今の彼の人生はどうしようもなく、このままでは死ぬので魔族になることを決めた。


「よし。あんたを魔族にしてやる」


 人間が堕ちる姿が楽しく憎閔は重月の下に魔法陣を出した。魔法陣は少年の使えなくなった体を消して心と命を保ち、消した体を新しい魔族の体に創り変えていく。なんの痛みもなく変わっており順調だった。


「完了」


 重月が魔族になったので魔法陣は消えた。


「体が動くぞ!」


 体に激痛がなく動くことに驚き、立ちあがった。


「これが、あんたの新しい姿だ」


 ダークエルフは少年の反応を楽しんでおり手鏡を出して今の姿を見せた。


「えっ!? これがおれ!?」


 手鏡に映っている姿を見て重月は驚いた。

 人間の時と同じ筋骨隆々の体格で全身がくすんだ金色をしており裸のようで裸ではない。頭が牛で両足が蹄と立派な角がある牛の獣人になっていた。


「どんな姿になるかは分からなかったけど食べたものの影響が出たようね」


 強食ビーフを食べた影響でこのような姿になった。


「人間の時は強さがバラバラでメチャクチャだった。今の姿は洗練された強さで無駄がない」


 陸雄のやり方では間違った強さになっていたので憎閔のやり方で正しい強さになった。


「たしかにパワーアップした時より力を感じる」


 あまりかっこよくない姿だが前より強くなっている。


「専用の武器があるのはうれしいな」


 自分の体なので新しい能力が分かり肝臓の場所に手を突っ込んだ。


「レバーテイン!!」


 痛みや出血はなく引っぱると赤黒い剣の形をした肉が出てきて穴は閉じて治った。武器耐性や六本の腕、股間から砲弾を発射する能力がなくなっても強力な専用武器があるので問題なかった。


「今日からあんたは私の僕で名前は肉牛覇血にくぎゅうはちだ」


 新しい名前をつけたダークエルフを見て重月は悪い笑みを浮かべた。


「だれが、お前の僕になるか!! もうお前は用済みだ!!」


 約束を破り、彼女を殺そうと斬りかかる。しかし憎閔は余裕の笑みを浮かべており、よけなかった。重月の体が急に動かなくなり武器は止まった。


「どうしたんだ!? 動け!!」


 強くなった力で必死に体を動かそうとしても、びくともしない。


「愚か者。あんたは私の命令に従い、危害を加えることができない体になったのよ。だから、あんたは私の僕」


 魔族の体になると同時に彼は憎閔の僕になっていた。


「や、やばい!!」


 用済みの憎閔を殺して自由になろうと思っていたが殺すことができないので重月は焦っている。


「お仕置きよ。鬼曼珠!!」


 ダークエルフは手の平から勢いよく炎を放ち、重月の腹部を燃やしてふっとばし大きな穴をあけた。


「ぐおおおおおお!!」


 魔族になったので、これほどの攻撃をくらっても死なず出血もなく、ただ痛みがあり片手で穴を押さえた。


「もう私に逆らうな。いいわね?」

「は、はい……」


 勝てないことが分かり弱々しくなった。


「私の名前は憎閔。分かったか、肉牛覇血」

「は、はい。憎閔様」


 屈辱より恐怖が勝ち、重月は肉牛覇血となり跪き、主はいい気分になって微笑んだ。


「それでいい。早く体を治しなさい」

「はい」


 肉牛覇血は跪いた状態で剣を食べた。剣のような切れ味がある肉を丈夫な歯でかみちぎって食べると体は治っていく。すべて食べると完全に治った。強食ビーフの影響で肉を食べると強くなり回復する体になっていた。


「いくわよ」

「どちらへ?」


 憎閔が移動を始めたので肉牛覇血は立ちあがった。


「あんたは私についてくればいいのよ」

「は、はい」


 睨まれた僕は萎縮し主についていく。ダークエルフの憎閔と魔族の肉牛覇血。人間ではない二人は沼束からいなくなった。

 重月は人を捨てて強くなりました。次回から領主の秘密編の予定です。

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