箸休め話 髪チョコ
バレンタインデーに変わったチョコをもらった話です。
日桜皇国の愛鯱にある中心地 尾和利屋。愛鯱の中心地の中で、うまくて有名な食べ物が多い。
その領地の領主がいる尾和利屋第一基地の指揮官室。領主は領主専用の離宮におり、ここには指揮官がひとり座っていた。
短いオレンジの髪、金色のようなオレンジの団員服姿で折りたたまれた黄色の翼の形をしたマントをまとい、黒いブーツを履いていた。
黄金の気品と鶏の勇猛さがあるかっこいい少年だ。
彼の名前は手羽崎 朱真。尾和利屋の名門貴族 手羽崎家の嫡男で愛鯱領主を擁立し愛鯱を統一しようとしている若き梟雄。
人望がなく自分の実力と部下達のおかげで今の地位に就き、わずかな反対勢力を相手にしている。
そんな彼は部屋で休んでおり、デスクの上にある箱の山を見ていた。今日はバレンタインデーで彼はチョコをもらった。貴族の嫡男で愛鯱の統治者なので多くの女性にもてているが中には殺し屋もおり、もらったチョコは警戒しながら開けている。
「普通のものだ」
どれも安全で高級食材を使った手作りチョコや高級ブランドのチョコと本命ばかりで彼はうれしかった。正室の座を狙う上流階級の女ばかりで庶民のチョコは届かない。
「これが最後だ」
最後の質素なラッピングの箱を開ける。
「うわっ!? なんだ!?」
中身がチョコではないチョコのような色の長い髪が大量に入っていたので朱真は驚き、ひきつった表情をした。
「これは嫌がらせだったか。捨てよう」
嫌がらせに慣れていても気味が悪いので捨てようと持った。その時、髪から甘い香りがした。
「チョコの香り? まさか」
朱真はおそるおそる手を近づけ髪の毛を一本つまんで見た。髪の毛は溶けて液体になり指についた。そして指についている液体を舐める。
「やっぱりチョコだ」
チョコの味がしたので頭と舌がおかしくなりそうだった。髪の毛に見えるほどチョコを極細にしたもので指の熱で溶けチョコの味しかしなかったので、チョコだけを伸ばして作ったものだと分かった。
「これほどのチョコを作るのは簡単じゃない。早く食べないと」
チョコと分かり、高級チョコを食べなかった朱真は興味を持ち、食事用の箸を使って極細のチョコを持った。
「モンブランのようなものかと思ったけど箸で持っても切れない」
指の時は熱で溶け、箸では溶けずチョコとは思えないほど丈夫で切れることもなかった。麺のようにすすらず口の中に入れて歯で食べやすい長さに切った。
「チョコが儚く溶けていく」
口に入れた瞬間、極細のチョコは口内の熱で溶けてなくなっていく。甘ったるい固形のチョコと違い、チョコの甘みと苦みが口に広がっていき、喉を通る。
チョコを食べたようで食べていない感じがして、いくらでも食べることができ朱真は箸を進める。髪をおいしそうに食べているような姿なので部屋に彼しかいなかったのが幸いだった。
チョコを食べていると作った相手が見えそうになったが、よく見えず、このチョコを作っている姿が見えた。作っているのは少女でやわらかいチョコを両手で持ち、華麗に踊りながら極細に伸ばしていき自分の体に当たらないようにし空気で冷やしている。
チョコを味わいながら少女の美しい踊りが見られるのは今までなかった。もうチョコがなくなり朱真は箸を置いた。
「このチョコには想いというより作った者の魂を感じた。すばらしい」
このチョコは好意というより凄まじい技術などで作って感謝を表現していたので朱真は喜んでいた。
「こんなチョコを作れるのは彼女しかいないな」
すべてのチョコは直接もらっておらず、他のチョコのように名前がないが、これほどのチョコを作れるのは彼女しかいないので、すぐ分かった。彼ならすぐ分かるので名前がなかったのかもしれない。
「これほどのチョコのお返しはどうするか。金の延べ棒か、占領した土地か、それとも私のこ」
ホワイトデーのお返しで悩んでいる。庶民の彼女が朱真の子供を産めば側室になり貴族といかなくても財産を得ることができる。彼は仕事以上に考えていた。
朱真の名前は手羽先でモチーフは朱雀です。
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