第26話 余裕の湯浴み
領主が湯浴みをする話です。色欲衆のひとりが登場します。
◇
別働隊の三人が食事をしている頃、世冥は領主専用の大浴場にいた。多くの人間が入れるほど広くて豪華な石造りの大浴場でライオンの壁泉から温泉と同じお湯が出ており広い浴槽を満たしていた。
「こんな時間に入る風呂は贅沢だな」
彼女のために大量のお湯が出ており、ここに入れるのは領主と許可した者だけで全裸の世冥はカーペットの上でうつ伏せになって笑っている。繭林団の精鋭部隊と別働隊が動くので余裕があり、こんな時間に湯浴みができる。
「ご領主様の特権です」
ひとりの若い女性がおり、うつ伏せの世冥をマッサージするように両手で泡立てて洗っている。背中に届くほどの長い銀髪で無表情のクールな美女。なめらかな鱗がある黄金のビキニ姿で裸足だった。
「気持ちいいぞ、灼熱コブラ」
領主は洗っている女性を褒めた。
「ありがとうございます」
仕事でやっており褒められてもうれしくない表情で心がこもっていない。
彼女の名前は灼熱コブラ。色欲衆のひとりだ。侍女のようなことをしており他の色欲衆とは違う特別な女性だった。
「次は前を洗え」
世冥は仰向けになって命令した。
「かしこまりました」
灼熱コブラはマッサージをするような手つきで領主の体を洗う。
「私を殺そうとしたやつが体を洗っているのは優越感がたまらないな」
従順な彼女を見て心と体が気持ちよくなり世冥は笑みを浮かべた。
「私は敗北した身です。勝者に従うのは当然です」
心がこもっていない言葉だが仕事はちゃんとやっている。
灼熱コブラは犯罪者で世冥を殺そうとした。防四郎と同じようで違い、彼女は世冥が別人のようになる前の小さい時に暗殺を行い、ちゃんと刑務所送りになった。
彼女が暗殺をしたのは自分が領主になるという軽はずみなもので世冥に負けて実力差が分かり刑務所では真面目だった。
領主暗殺は重罪でいつ処刑されてもいいと思っていた。しかし灼熱コブラは処刑されることなくスカウトされた。逆らうことなどできず色欲衆で世冥直属の侍女になった。表の使用人と違い、彼女の本性を知っているプライベートの侍女で世冥はごまかす必要がない。
元々器用な彼女は刑務所生活のおかげで侍女の仕事もそつなくこなし世冥の本性を知っている使用人達以上に身の回りの世話をすることが多い。
優秀だが、考えが分からない相手なので信頼はしておらず便利と思っていた。すみずみまで洗った灼熱コブラはシャワーで泡を流していく。
「洗い終わりました」
「ご苦労」
世冥は立ちあがり浴槽に近づいて、お湯の中へ入った。
「いい汗をかいたから気持ちいい」
彼女は浴槽に寄りかかって湯の温かさを感じており体が温かくなった。
「どうぞ、ご領主様」
灼熱コブラは冷たいミネラルウォーターのペットボトルとプラスチックのコップをのせたトレイを置いて主にコップを差しだす。
「気がきくな」
顔が赤く喉が渇いていたので世冥は喜んでコップをとり、侍女はミネラルウォーターをこぼさず正確に注いだ。
「おいしい」
冷たいミネラルウォーターを飲むと喉は潤い、体が冷えて心地よく、お湯がまた体を温める。
「お前も入れ」
「かしこまりました」
領主の思考を読んでいた灼熱コブラはビキニを脱いで素早く体を洗って泡を流し、ゆっくり静かに、お湯の中へ入る。領主の許可がなければ入れない大浴場で湯につかっているが灼熱コブラは慣れていて、このようなことで喜ぶタイプではなかった。
「おかわり」
「かしこまりました」
リラックスする暇がなく、ペットボトルを持ってコップにミネラルウォーターを注ぐ。
「沼束に羽尾指揮官率いる精鋭部隊と別働隊が向かい、宝石を補充した。あとは終わるのを待つだけだ」
風呂でくつろいでいるのは世冥だけで反乱のことは他の者達に任せていて余裕がある。暗殺の時から成長した彼女を見て灼熱コブラは悲しげな表情を浮かべた。ろくでもない領主になっていたので悲しいのかもしれない。
世冥が風呂でくつろいでいる頃、繭林第一基地にある特別な独房に少女がいて床で眠っている。薄暗くて顔は分からないがボロボロの貫頭衣姿で体は傷だらけだが出血がなく裸足だった。両手には手枷、片足には足枷があり重そうな鎖と鉄球がついていた。
薄汚れた独房には調度品がなく動物の檻のようで床に血のようなルビーと涙のようなサファイアが散乱していた。繭林第一基地は謎が多い。
色欲衆は七人で虹カメレオン、スルーダイル、灼熱コブラの三人が登場しました。あと四人です。
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