第25話 別働隊の先輩達
恋花が別働隊の先輩達と親睦を深める話です。
◇
強化処置が終わった後。別働隊専用の部屋にあるトレーニングルーム。起こされた恋花は実戦トレーニングをさせられていた。無数のドローンが縦横無尽に飛んでおり光線を発射した。
「ああああああ!!」
光線をくらった少女は悲鳴をあげた。
「はっ! ふっ! くっ! ん!」
光線が当たらないように無数のドローンの動きを見ながら移動している。黒い首輪と拘束具のような黒い下着には懲罰機能があり制御チップのせいで逃げることもやめることもできない。
専用武器の白いライフルを与えられたので飛んでいるドローンを狙ってエネルギー弾を撃つ。しかし当たらず後ろに移動したドローンの光線を背中にくらった。
「ああああああ!!」
体に傷はつかないが激痛があり、体がその激痛を覚え、彼女はおびえながら戦闘をしている。
「攻撃は当たっていないが、いい表情だ」
籾手屋達はトレーニングルームの外でドローンを操作し苦痛で顔が歪む少女を見て笑っていた。
攻撃が当たらず光線を受けているので恋花は両目をゲーミングカラーにして飛んでいるドローンを見た。見た瞬間、ドローンは止まった。その両目で見たドローンは同じように止まり彼女を攻撃しなくなった。
「すごい! ドローンをハッキングした! 頭がいいやつはこんな方法を思いつくのか!」
攻撃ではなくハッキングで無数のドローンを止めたので籾手屋は少し驚いた。制御チップは別働隊の団員達を操作できるので、サイバネティックスが得意な彼女は瞬時にチップを解析し応用して機械を見ただけでハッキングできるようになった。
無数のドローンを止め、ライフルで正確に狙いエネルギー弾を発射する。万が一のため光だけの弾しか撃てないようになっているので当たってもドローンは壊れずに、ゆっくり落ちて機能を停止した。
「見事だが無駄だ」
簡単なハッキングで籾手屋達の操作の方が強く、コントロールを奪い返し停止したドローンを再起動して飛ばした。
「はっ!!」
コントロールが戻ったことに気づき彼女はまた見てハッキングをしようとしたが光線の集中砲火が速かった。
「うあっ!! ああああああ!!」
全身に光線が当たっており激痛で少女は悲鳴をあげた。光線が当たっている姿と悲鳴が美しくていやらしいので籾手屋達は興奮している。
「もういいだろ」
光線攻撃をやめ、ドローンを所定の場所へ戻した。
「ああ、ああ、んあ。んんん!」
元の両目に戻った恋花はへたりこみ、ライフルで体を支え、全身の激痛で苦しみながら休んでいる。
「次はスパーリングだ」
ドローンでの訓練が終わっただけで、まだ地獄は終わっておらず休む暇がなかった。
「出番だ、玉里、水糸」
籾手屋の命令でトレーニングルームに二人の少女が入ってきた。恋花と同じ黒い首輪をつけており拘束具のような黒い下着姿で裸足だった。
「鳶羽玉里だ。先輩として胸を貸してやる」
恋花と同じくらいの背で古貞達と同じ年齢。黒髪のツーブロックで気が強そうな少女は自己紹介をして自分の胸を叩いた。
「先輩の灰山水糸だ。どこからでもかかってきなさい!」
玉里の隣にいる少女も年上だが恋花より背が少し低い。紺碧のショートボブでゆるくて元気がある少女は自己紹介をして拳を構えた。
「初めまして、先輩方。七恋花です。よろしくお願いします」
制御チップで三人は戦うしかないので恋花はなんとか立ちあがって頭をさげた。
「武器なしで二人の能力は封じてあるから恋花もライフルなしの格闘戦をしろ」
「はい」
ドローンと違って見せかけの弾はきかないので彼女はライフルを置いた。
「それじゃあ始めろ」
籾手屋の命令で二人は後輩に向かっていく。ドローンと違い、彼女達は自分の意思で動いている。経験と身体能力では玉里と水糸の方が上で普通なら勝てない。
しかし恋花には二人とは違うチップがある。彼女が頭で戦闘のことを考えるとチップは瞬時に体を動かす。
(すごい!! 想像通りに動くことができて違和感がない!!)
考えただけで動くことができ、先輩達の攻撃をかわしていく。
「こいつ、すごい!!」
「当たらない!!」
先輩の意地があり玉里と水糸は必死に攻撃しているが当たらず能力を使いたいのに使えないのは辛かった。
かわしてばかりの恋花が攻撃を考えると体が動き、玉里を殴り倒して水糸を蹴り倒した。この攻撃もチップのおかげで、いつもの彼女ではこれほどの威力はなく攻撃もできなかっただろう。
「やるじゃん、後輩!」
「期待の新人だ!」
先輩を倒した後輩を責めず彼女の強さが分かったので二人はさわやかな笑みを浮かべて立ちあがった。好印象の先輩でも真面目な恋花は手を抜かず自分の強さを調べるために二人を練習台にする。
「なっ!? 体が動かない!?」
「どうなってんの!?」
頑丈な二人はまだ戦えるが急に体が動かなくなった。
「本当に賢い娘だ。彼女達を操作して止めた」
恋花の制御チップは別働隊の団員達を操作できるので二人の動きを止めていた。止めるだけでなく自由に動かすこともできる。
動けない二人を攻撃し同士討ちさせることもできるが、それは甘かった。
「まあ、こちらで操作できる」
ドローンの時と同じで恋花のコントロールを解除し動けるようにした。そしてスパーリングは再開され、籾手屋達は戦う三人を見て楽しむ。
籾手屋達が操作できるので彼女達は休むことも倒れることもできず戦えなくても戦うしかない。
◇
スパーリング後。籾手屋達があき、恋花が使えるようになったのでスパーリングは終わり、三人は別働隊の団員達が生活する部屋にいた。培養液で三人は頑丈になっているのでスパーリングで痛みはあってもケガはしていない。
非人道的な扱いだが質素な部屋を与えて人間らしい扱いもしていた。狭い質素な部屋で食糧のダンボールなどが多く、それを調度品のように扱っている。
スパーリングでお腹がすいた三人は好きな食糧を選び、木箱を椅子にして座り食べていた。食糧はレトルトやコンビニ弁当、缶詰めなどがあり豊富だった。
「今日の食事が最後になるかもしれないな」
玉里はカップラーメンをすすっていた。
「こんなのでも食べられなくなるのは辛いね」
水糸は缶詰めを食べ終え、おにぎりを食べた。
「お二人は私のように別働隊にきたのですか?」
缶詰めを食べている恋花は二人に話しかける。これから、ともに戦うので親睦を深めようとしている。
「私は領主に逆らって異動になったんだよ」
後輩と違って玉里は領主に逆らったせいで別働隊に移ることになった。世冥の本性を知らないので満奈のように獣人団の基地に送られなかったが少し逆らっただけで別働隊に送った彼女のことをよく思っていなかった。
「私は上官に無能扱いされて追いだされて、ここで働いてる。頭にチップを入れられたのは痛かった」
おにぎりを半分残した水糸は食べ終えた缶詰めに入れ箸でかき混ぜながら話して食べた。上官の目が節穴で追いだされた彼女は別働隊で働くことになった。玉里と同じで世冥の本性を知らず、よく思っていない。
「そうですか。大変だったんですね」
自分と同じ処置をされた二人に同情し缶詰めを食べ終えた恋花は食パンをちぎり、缶詰めの汁をつけて食べた。
「ああ。別働隊は囮や危険な仕事が多くて私と水糸だけになるほど減った」
カップラーメンを半分残した玉里は缶詰めを開け汁ごと中に入れて箸でかき混ぜて味を変えた。
別働隊は死んでもいい人材を集めた部隊で生き残っている二人の先輩は運がよくて優秀だった。
「スパーリングで恋花を戦闘不能になるまで痛めつけて明日の戦闘に出さないようにしようと思ったけど籾手屋はそれでも操作して戦闘に出すな」
「そうだね。そういうやつだ。まあ戦闘は私達に任せて好きなように指示を出して、恋花ちゃん」
玉里と水糸はこんなところにきた後輩を大切に思っている。
「ありがとうございます、先輩方」
スパーリングの時は頼もしく今は優しい先輩達なので恋花は感動し涙を流しそうになった。
「おいちい」
カップラーメンのスープを残し、玉里はおにぎりを入れ箸でかき混ぜて食べ、感動をぶち壊し、和やかな空気になった。
先輩達の説明とハッキング能力で別働隊の情報を集めて理解したので恋花は別働隊の即戦力となった。
玉里の名前は球と鞠。水糸の名前は炭酸水と水素です。彼女達は能力者で能力は名前の通りです。
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