第16話 漢と男の対決
新当主 凱矢との戦闘回。
少年が刀を構えたので凱矢は刀を睨んだ。
「刀を使うのか? 武功鷲の力を忘れたわけじゃないよな?」
武功鷲には武器特効と武器を溶かす毒があり、古貞の刀をダメにしたことがあった。生子の再利用能力で刀を直した時は使わずにキックで闘ったが今回は刀を使う。
「忘れたくても忘れることができねえよ、その魔剣は。けど今回はあの時とは違う」
笑っている少年を見て対策に気づいた。
「そうか。ならもう一度壊してやる!!」
凱矢は突っ込み、魔剣を振る。古貞が刀で防ぐと凄まじい衝撃を感じ、刀はダメージを受けている。しかし前のような刃こぼれにならず、きれいなままで魔剣を押し返し後退させた。
「こいつなら武功鷲の対策はしてあるよな」
連合団がドワーフ団の基地を解放したので刀を強化することができる。鐘千代のおかげで武器特効や毒がきかない刀になっており、なんの心配もない。
「だが今のおれは魔剣だけの男じゃないぞ!!」
「刀を持ったおれの強さを見せてやる!!」
二人は突っ込み剣と刀を振った。
「くっ!!」
古貞は肩を斬られて血を噴きだし、凱矢は前髪を斬られた。前髪で隠れていた両目を晒し陰キャの顔から実直なイケメンになった。
古貞は相手の両目を斬ろうとしたが前髪しか斬れず肩を斬られてしまい、刀を振るのが辛くなった。
これでは闘いにくいので相手から離れ、回復能力を使って肩の傷を治すことにした。凱矢はそれを許さず斬りかかる。
「鬼曼珠!!」
少年は剣をかわして離れ、刀から炎を放った。
「ぐおっ!!」
胸部の装甲に当たり砕けて、ふっとんだ。防御に優れた装甲で、あまりきいていない。しかし装甲がなくなったので防ぐことができなくなった。
「治布!!」
攻撃をくらって相手の動きが少し止まったので瞬時に銀色の長い布を作り、肩の傷に巻いた。傷は治り、刀を振るのが楽になった。
「ああああああー!!」
「ぬおおおおおー!!」
二人は叫んで突っ込み、刀と剣がぶつかり合い、お互いの体に攻撃が当たらない。男同士の会話のようなぶつかり合いで周りに人がいたら死ぬほどの激闘で広い部屋が壊れそうだった。
ぶつかり合ってダメージを受けても刀は壊れることなく少年は剣の腕を発揮して闘っている。
「名状至合体!!」
凱矢は魔剣に無数の触手が蠢くような黒いエネルギーをまとって振った。古貞は刀で受けたが刀にダメージはなく体がふっとびそうになり耐えた。
彼の攻撃ではなく歴代当主の攻撃をひとつにした名もなき攻撃だ。分からずに使った攻撃は武器に当たると相手だけにダメージを与えるものだということが分かった。
武器ではなく相手を壊す防御不可能攻撃を受けてしまった古貞は相手から離れ、回復効果がある布で痛みが少しなくなった。使いこなせていない感じで威力があまりなく耐えることができた。
「がいやー!!」
「こさだー!!」
二人は相手の名前を叫んで突っ込み、刀と剣を振る。
「どわあ!!」
「くっ!!」
二人は攻撃をくらい、古貞は離れた。腹部を斬られたが回復効果がある布のおかげで中身が出ず出血が少ない。それでも片膝をついた。
凱矢は両脚を斬られ動くことができず、なんとか立っている。
「やるな、古貞!」
両脚の痛みに耐えながら笑みを浮かべて少年を褒めた。強がって笑っているのではなく自分の最期の相手が見事な攻撃をしたので褒めただけだ。
「これで終わりだ、凱矢!!」
古貞は刀を杖のようにして、なんとか立ちあがり構えた。彼はやることがたくさんあるので、この戦闘を終わらせようと最後の攻撃を行う。
「望むところだ!!」
最後の攻撃と分かり凱矢も剣を構えて対抗する。
「混肉!!」
古貞は全身の筋肉を強くし刀が壊れるような力で握っている。
「名状至合体!!」
魔剣に無数の触手が蠢くような黒いエネルギーをまとったが先ほどと違い、凱矢の頭上に歴代当主の霊が現れ、エネルギーが部屋全体に広がっている。
歴代当主がこの攻撃に力を貸しており凱矢は使いこなそうとしている。
「いくぞ!!」
全身の筋肉が強くなっているので凄まじいスピードで凱矢に向かっていき、刀を振った。
「ぐうう!!」
魔剣で受けた瞬間、黒いエネルギーが黄金のエネルギーに変わり凄まじい衝撃で部屋が揺れて少年はダメージを受け服がボロボロになった。
この攻撃が凱矢のものになった瞬間で歴代当主の霊は彼を見守っている。
「くうううううう!!」
拮抗しており歯をくいしばって全身に力をいれて押しても相手はなかなか動かない。しかし古貞の力は伝わっており魔剣にひびがはいっていく。
「ぬうううううう!!」
凱矢も負けずに押し、黄金のエネルギーが増して古貞にダメージを与えるが強化した体は防御も増しており、あまりきいていない。
「でええええええい!! 追風乗!!」
少年が渾身の力をいれて叫ぶと刀の峰どころか全体から風が出て押し鋭く振った。魔剣は砕けて黄金のエネルギーは消え、そのまま凱矢は斬れた。凄まじい衝撃で頭部の装甲はふっとび服もボロボロになり歴代当主の霊も消えて彼は仰向けに倒れた。
先ほどの攻撃は偶然できたもので狙ってやったことではなかった。新当主と歴代当主はひとりの少年に敗北し、胡麻見家の歴史はここで滅んだ。
「見事だ、古貞……」
全力を出して敗北した凱矢に後悔はなく古貞の強さを褒めて笑みを浮かべている。回復能力でも助からない致命傷なので命乞いなどしない。
もう助からない相手なので殺して楽にしようと凱矢を見下ろす。自分の死が分かっており恐怖がなく逃げることもできない体なのでジタバタしなかった。
「お前は強くて最高の相手だ」
強くても最低な相手ばかりと戦っていた古貞にとって凱矢は最高の好敵手だった。
「そうか……」
少年の言葉がうれしく、思い残すことがない男は両目を閉じ、とどめを待つ。しかし少年がとどめをさす前に広い部屋の一部が爆発した。
「なんだ!?」
突然、爆発したので二人は驚いた。
古貞と闘ったことが凱矢の救いです。
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