第14話 戦士達の熱戦
練治の戦闘がよく分かる回。
電太の戦士の装甲に似ているが体つきが女性でかなり違う。白い骸骨の仮面と白い全身タイツのような装甲で両手には鋭い金属の爪があり両足には特殊素材の黒い五本指の靴下と女忍者のような姿だった。
背中には小さなジェットエンジンがあり、ファンが回って空気を出して吸っている。
「これが戦士の装甲 女性バージョンだ!!」
電太から聞いていたので詳しい。前の戦士の装甲と違って今回は女性バージョン。人体実験で変身装置を頭にうめこんだので式神端末の操作で変身させることができ、どんな命令も機械のように従う。
「いけ!! やつを殺せ!!」
予吉の命令に従い少年に向かっていく。
「くっ!! 熱刀!!」
雑草兵や豚人類より強そうな速さなので水晶を赤く光らせた。刀の形をした赤い水晶は熱を増幅することができ、熱くした指以上の威力がある。
そんな水晶を振るが女性はかわした。速い動きの練治と同じスピードで、いくら振りまわしてもかわし鋭い両手の爪で攻めている。
「ちっ!!」
かわしてもかすって切れ、練治は血まみれになり痛いので舌打ちをした。
「この!!」
スピードをあげて水晶を当てても斬れなかった。男性バージョンとは違う頑丈で柔軟な装甲だった。溶断できないほど頑丈で動きの邪魔にならないやわらかさがあり軽い。
女性は速くなった練治に対抗しようと背中のジェットエンジンから空気を噴射して浮いた。命令に従うだけでなく敵を倒す知能があり自分で考えて機能を使うことができる。
女性バージョンは背中のジェットエンジンで空陸海の移動が可能な機動力重視。スピードが増し飛びながら両手の爪で攻撃する。
「ぬあっ!!」
練治は切り刻まれ、ボロボロになりながらなんとか水晶を当て無意味な攻撃をしている。
「小僧は終わりだな!! これほどの護衛をくれた電太に感謝だ!!」
勝利が近いので予吉は喜び、荷物から宝石を出して頬ずりした。
「もうあきらめて死ね!! 死ねば両親に会えるぞ!!」
余裕の笑みを浮かべて少年を挑発する。挑発で練治は怒り、力強い目で予吉を睨んだ。傷だらけの血まみれになっても彼はあきらめていなかった。
「熱防装!!」
爪の攻撃がきた時、少年は全身を熱くし、バリアのようにして爪をくらった。熱で金属の爪は一瞬で溶け、彼にダメージはなかった。
普通なら火傷するので攻撃を躊躇するが痛みを感じていない女性は攻撃を続ける。いくら攻撃してもダメージを与えることができず爪がダメになっていき、練治の水晶をくらっている。
装甲が斬れていない彼女は攻撃をやめ浮くことができなくなり地面に着地してよろけた。
「もう限界か!?」
予吉は余裕がなくなり焦っていた。再び攻撃しても動きがおかしくて遅く途中で止まり簡単にかわすことができる。
高性能なのに雑草兵や豚人類のように手軽に使わなかったのは試作品でメチャクチャに改造された女性の体はもう限界で長時間の戦闘は無理だった。しかし彼女の動きが悪くなったのは、それだけではなかった。
彼女の体から黒い煙が出て苦しむように攻撃をやめて止まった。
「どうしたんだ!?」
予吉は驚き、練治は笑みを浮かべた。
「装甲は斬れなくても熱は伝わる」
熱い水晶が当たるたび装甲の中の女性に熱を与えて体を熱くしていた。熱で肉は焼け、血は蒸発し全身から黒い煙が出ている。背中のジェットエンジンのファンを回転させ熱を外に出して冷たい空気を吸っているが、もう遅い。
「熱伝動!!」
止まっている彼女に水晶をたたきこんだ瞬間、爆発したように赤く光り女性は一瞬で黒こげのカスになり跡形もなくふっとんだ。
「すまない」
楽に死なせることができなかったので彼女に謝罪した。それでも彼女は辛い機械のような人生から解放された。
装甲は無傷でも中身がないので維持できなくなり消えた。
「電太め!! 負けてしまったじゃないか!!」
女性を倒した練治より欠陥品を渡した電太に怒っている。
「次はお前だ」
少年は体と水晶を熱くするのをやめ予吉を睨んだ。護衛がいなくなって彼は冷や汗を流しているが余裕があった。
(私にはコソ泥の羽根がある! これでリヤカーごと脱出だ!)
中折れ帽の中にアマゾポリスで使用した派手な羽根がある。練治が近づく前に逃げようと帽子に手を伸ばす。しかし、あるはずの羽根がないので予吉は慌てて帽子を取って中を見た。
「ない!? どういうことだ!? ちゃんとここに入れておいたはずなのに!!」
揺すってもなにも出てこない。奥の手がなくなったので予吉の余裕はなくなり動揺している。
コソ泥の羽根はゴキブリがくわえており、動揺している予吉と睨んでいる練治は気づいていない。練治達の戦闘を見ている時、ゴキブリが帽子の中に入って気づかれないように持ちだして逃げた。
ゴキブリは羽根をくわえたまま飛び、見えなくなっていく。
「よく分からないが覚悟しろ」
動揺している理由が分からないが逃げていないので練治はゆっくり近づく。戦闘が苦手な予吉は近づいてくる少年に恐怖を感じている。
「ま、待ってくれ!! 頼む!! 殺さないでくれ!!」
なにもない帽子を捨て、リヤカーから降りた。
「私を見逃せば、この金品をくれてやる!! 私の護衛になってついてくれば、もっとやるぞ!! 一生遊んで暮らせるぞ!!」
媚びへつらう笑みを浮かべ、荷物から宝石や金を出して軽く投げ練治に当てる。今は命の方が大事で渡したくない金品を渡すほど必死だった。
しかし少年は宝石や金を拾わず踏まないように気をつけながら近づいている。予吉は欲で動く者ばかり見てきたので金品に反応しない練治が別の生き物のように見えており恐怖が増していた。
「じゃあ女はどうだ!? お前好みの美女を何人でも紹介してやるぞ!! これだけ金があれば女なんていくらでも!!」
助かるために適当なことを言っている。練治をバカ当主のように扱っているが彼は予吉を信用していないので、うまくいくわけがない。
「私はお前の両親を殺していないだろ!! すべてバカ当主のせいだ!!」
反応がなく彼が目の前まできたので予吉は恐怖の限界に達して怒り、すべての罪を幼仲になすりつけた。
「お前も多くの領民を苦しめたから幼仲と同じだ。潔く死ね」
幼仲と同じで多くの領民から搾取し苦しめて死なせたので、その人達のためにも殺さないといけない。もう助からないことが分かり予吉は絶望の表情になっていた。
死なないように安全なところで仕事をし、危険なことは他人にやらせていたので、このような状況に慣れていない。
「嫌だー!! ここで死ぬのは嫌だー!! 私は長生きしたいー!!」
死ぬのが嫌で情けない顔になり逃げようと背を向けた。
「もう終わりだ」
情けない悪党に呆れ、練治は素早く動き水晶で予吉の背中を斬った。
「……こうなったのは、すべてバカ当主のせいだ」
斬った相手より無能な主を恨んで倒れた。幼仲は敵味方に恨まれており、この世に本当の味方はいないだろう。
水晶は熱くないので普通に斬れたが予吉の死体は大量の宝石や貴金属になった。自分の体にも金品を隠していた。
「この金品を守らないと」
水晶を腰にさげ、落ちている金品を拾って、リヤカーに載せていく。この金品を盗まれると困るので練治は基地へいかず、ここで金品を守ることにした。復讐をやめ大きな仕事をし、貧乏貴族の少年は大きく成長した。
コソ泥の羽根を奪ったゴキブリは武影が操っていかせたもので予吉の逃亡を妨害し少年を助けたのは大手柄だった。
その勇者ゴキブリは飛んで戻ってきて練治にばれないようにコソ泥の羽根を分かりやすい場所に落として飛び去った。役目を終えて自由に飛び、人間に駆除される生活に戻る。
練治、お疲れさまです。
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