第1話 出動の儀式
五魔獣団最後にして最強のドラゴン団が行う恐ろしい儀式。
義賊生活五日目の朝。夏が終わって秋となり暑くも寒くもないちょうどいい陽気だった。
五魔獣団最強のドラゴン団の基地は今までの基地より大きくて広く、変な熱気があり不気味な太鼓の音が鳴り響き、冷たい恐怖があった。
広い庭にはドラゴン団の団員の竜人と人間の団員達がいる。ドラゴン団は五魔獣団最強だが数が少なく人間の団員の方が多い。
団員だけでなく巨大なドラゴンが一体おり、基地や庭が広いので邪魔にならず、ここではドラゴンは兵器のようなものだった。
ドラゴンは醜く太っている毒々しい紫で羽が小さい。そのドラゴンの前には処刑台にX字に拘束されているハーレムガードの若い女性がいた。かなり痛めつけられており気絶していた。
「これから出動の儀式を始める!!」
「「「おおお~!!」」」
ドラゴンはしゃべり、その言葉を聞いて団員達は熱狂し、おどろおどろしい奇声をあげた。太鼓は竜人が手で叩いており、不気味なリズムで儀式という感じだった。
処刑台の女性は目を覚まし、周りを見た。
「あっ!! あああー!!」
自分の状況が分からず、おびえて悲鳴をあげる。優秀で戦闘に慣れているハーレムガードの団員でも普通ではない狂気を感じ真っ青になっている。
「まず美しい生け贄を捧げる!!」
醜いドラゴンがいう生け贄とは彼女のことで団員達は興奮し好色な目で見ており、太鼓の音も激しくなっていく。
「ああ……」
集中している視線と太鼓の音で彼女の恐怖は増していき、震えながらドラゴンを見ている。ドラゴンは下卑た笑みを浮かべ炎を吐いた。生け贄と処刑台だけを燃やす火力で女性は生きたまま焼かれた。
一瞬で肺などが焼け、悲鳴をあげることなく燃えて消滅した。
「「「おおお~!!」」」
団員達は喜び、生け贄を捧げたので太鼓の音はやんだ。生け贄を燃やした醜いドラゴンは小さくなり、人間くらいの大きさと形になっていく。
顔は先ほどのドラゴンと同じでブヨブヨの肥満体型。上半身には青い鱗がある団員服の上着、下半身はなにも着ておらず太い蛇のような竜人の中年男性だった。
「儀式の締めだ!! 女をつれてこい!!」
彼が五魔獣団最後にして最強のドラゴン団の団長 後入戸蛇尾だ。
「「はい!!」」
蛇尾の命令で二人の竜人がハーレムガードの若い女性をつれてきた。この基地には幼仲に逆らったハーレムの女達やハーレムガードがおり、ドラゴン団は好きなように扱っている。
「助けてー!!」
どうなるか分かっている女性は必死に暴れるが屈強な竜人達から逃げることなどできなかった。
「こいつは活きがよくて血がうまそうだ」
竜人は彼女の顔をつかみ、恐怖で歪む顔を見て笑った。
「お前は儀式の締めで後入戸団長に血を捧げるのだ。光栄に思え」
「そんなのいやっ!! 幼仲に逆らうんじゃなかった!!」
殺される恐怖で真っ青になり泣き叫ぶ。いくら泣き叫んでも、やめるわけがなく竜人は彼女の髪をつかんで引っぱり、ナイフで首を切った。
首からおびただしい量の血が流れ、なかなか死なず苦しんでいる。竜人はその血をドクロの盃で受けとめて満たす。
「どうぞ、後入戸団長。新鮮な血です」
女性が出血多量で死ぬと竜人は血が入った盃を蛇尾に渡した。
「うむ。うまそうな血だ」
女性の死という余興を楽しみ、血の匂いに酔っている。蛇尾は盃に口をつけ血を飲む。
「んん! うまい!」
甘美な血の味に喜び、口から小さな火を出した。女性の死体はそのへんに捨てられ、同じような女性の死体があり、ゴミのような扱いだった。
「さすが高名な呪術師 後入戸団長。すばらしい儀式です」
人間の中年男性が拍手をした。短い紺碧の髪でトカゲのような顔だが、れっきとした人間。緑の鱗がある団員服姿で黒いブーツを履いていた。
彼の名前は鱗座 銅真。沼束第一基地の指揮官だ。
「鱗座指揮官。お前も飲め」
蛇尾は血が残っている盃を渡した。
「ありがたき幸せ」
ドクロの盃で人間の血を嫌がらず銅真は蛇尾が口をつけていないところに口をつけて血を飲んだ。
「うまい! お前達も飲め!」
酔ったような表情になり、自分の部下に盃を渡す。かなりの地位の部下達は抵抗なく飲み、血はなくなった。
「これで、お前達も悪霊の加護を得て強くなった。連合団など相手ではない」
ただの景気づけだが飲んだ者や飲んでいない者達は強くなったような気分で正気ではなかった。
蛇尾がドラゴン団の団長になってから、いかがわしい儀式が行われ、犠牲者は増え、団員達は余興のように楽しんでいた。
「はい!! 我々、第一基地の団員!! ドラゴン団とともに戦います!!」
第一基地の団員達も戦闘に加わる。沼束では当主の幼仲が一番偉く、第一基地の指揮官である銅真が次に偉い。
しかしドラゴン団の方が強く、幼仲の命令で人数が少ないドラゴン団をサポートするようになっており銅真達は文句をいわずに従っている。
銅真は贅沢な生活で腐り、周りに流されやすい指揮官なので贅沢ができる幼仲に従い、彼が負けると自分もすべてを失ってしまうため必死になって戦う。
「出動の儀式は終わった!! 準備をして連合団を皆殺しにしてこい!!」
蛇尾はいかず銅真に任せた。彼はあまり優秀ではないが強力なドラゴン団がいるので負けることはない。
「ようし!! 暴れるぞ!!」
竜人達の体は大きくなっていき、赤と緑のドラゴンになった。広い庭はドラゴンだらけになっても余裕がある。ドラゴン団の団員達は蛇尾と同じようにドラゴンに変身することができる。
赤いドラゴンは巨体で羽が小さいので飛ぶことができず力強く地面を踏む。緑のドラゴンは体が小さくて羽が大きい飛竜で空を舞う。
しかしドラゴン達は基地から出ず銅真率いる団員達は邪悪な笑みを浮かべて出動の準備をしている。
恐ろしい準備をしており、連合団はドラゴン団の恐ろしさを嫌というほど知ることになる。
蛇尾はドラゴニュート。銅真はリザードマンです。
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