第13話 花園館
花園館での闘い。恐ろしい植物の宝庫。
◇
その後。哨戒に出た古貞は花園館へ向かう。知っている場所なので迷うことなく到着した。
西洋の広い庭園と館があるが、古くて暗く不気味な植物がおいしげっていた。
「昔はきれいな花々が咲いていた美しい館だったようだが今じゃこれだ。前見た時より不気味になったな」
気味が悪く、入りたくないので顔をしかめたが、門扉に近づく。さびついていて植物が巻きついている門扉は少し開いており、そこから入った。
「ここを通るのか」
うっとうしい植物が目の前に広がっていた。ジャングルのような庭園を通らないと館には着けない。
「まるで探検だ」
少し楽しくなり懐から聖女の雫を出し、胸につけて進む。
「進みにくいな」
植物が邪魔なので歩きにくく注意しながら進んでおり速く移動することができない。確実に一歩ずつ進み、館へ向かう。
何事もなく進んでいると植物が動き、根が足で人間くらいの赤い花の怪物が現れた。
「敵のおでましだ」
古貞は刀を抜いて構える。大きな花は回転し無数の花びらをブーメランのように飛ばしてくる。
「なんと!!」
花とは思えない攻撃に驚き、かわしながら刀で斬っていく。かわした花びらは周りの植物を切りながら飛び、戻って花にくっついた。
花びらが戻ると、また回転して迫ってくる。
「こんなもん!!」
少年はかわして茎を斬った。地面に落ち、回転は止まり急速にしおれていく。花の怪物を倒すと今度は巨大なカマキリが二体現れた。
「変なカマキリだな」
二体のカマキリには柔らかい粉がついており、動きが少しおかしい。一体が古貞に襲いかかるが、一瞬でバラバラにした。その時、粉が舞う。
「これは花粉だ!!」
体にかからないようにし二体目のカマキリに向かっていく。攻撃をかわし背後へ回り、腹を斬った。花粉が舞い、カマキリは倒れた。しかし花の怪物が集まってきている。
「さすがにすべてを相手にするのは無理だな!!」
刀を鞘に入れ、敵を無視し館へ向かって逃げる。地面を跳び続けて移動し敵から離れることができた。
「ハチ!?」
新たな敵 巨大ミツバチが飛んできたので古貞は姿勢を低くし、茂みに隠れた。ミツバチはこちらに気づかず巨大な花にとまって蜜を集める。だが体に花粉がついた瞬間、動きがおかしくなっていく。そして街へ向かって飛んでいき、花園館を出た。
「たまに見かける花粉だらけのハチ。さっきのカマキリと同じで動きが変だった。あの花粉が操っているのか?」
茂みから出ようとした時、別のミツバチが飛んできたので隠れる。同じ花にとまり花粉がついて、おかしくなり街の方へは飛ばず別の方向へ飛ぶ。
その時、隠れていた巨大カマキリがミツバチに襲いかかり捕えた。抵抗が弱く逃げることができず喰われていく。
一心不乱に貪っているが、花粉がつくと食べるのをやめて、先ほどのカマキリと同じように動きがおかしくなった。ぎこちない動きで庭園をさまよい、姿が見えなくなった。
「さっきのカマキリも花粉がついた昆虫を喰ったのかもしれねえな」
茂みから出て、恐ろしい花から離れて移動する。
「人間も操るのかな? まあ聖女の雫があるからだいじょうぶだろ」
胸につけてある聖女の雫が光る。
「それにしても喉が渇いたなあ。自動販売機でもあればいいのに」
かなり歩き、戦闘でかなり喉が渇き、疲れていた。飲み物など持っておらず聖女の雫でも喉を潤すことはできない。
「なんだか甘い香りがするな」
植物の臭いとは違う甘い香りがし、その香りをたどって歩くと大きな花があった。花の怪物よりは小さく、茎が女性の体のような形で花には長い管がある。
「この花からする。これも変な花だな」
近づいても攻撃せず茎をくねらせて誘惑している。
「顔がねえから気持ちわりいな」
植物なので興奮はしないが、甘い香りが漂う長い管には魅力を感じた。花は管を少年に向けて、おとなしくなった。
「吸えってことか?」
管は縦に揺れた。
「毒があっても聖女の雫があるから平気だ」
少し警戒しながら管を持ち、くわえて吸う。液体が流れ、古貞の口に入る。
「うめえ! 蜜というより甘い汁だな! さっぱりとした甘さが喉を潤うだけでなく疲れまでふっとんだ!」
味がよく疲労回復効果がある甘い汁を飲んだことで元気になり管をはなした。
「ここの植物にもいいやつはいるな」
回復してくれた花がきれいに見え、少年は笑った。
「よし、館までもう少しだ」
地面を跳び続けて移動し館へ向かう。あと少しで庭園から出られるが、銃弾のようなものが飛んできて邪魔をした。
かわして見てみると人間くらいの巨大な花があり、古貞に狙いを定め、種を飛ばす。
「おっと!!」
難なくかわすと一発ずつ発射する。まったく当たらないので今度はマシンガンのように撃ち続ける。
「扇空波!!」
かわすのが面倒なので古貞は手で勢いよく扇ぎ、突風を起こした。種はすべてふきとび、花に命中し、ボロボロになった。種を飛ばすことができなくなり急速にしおれていく。
これで敵がいなくなり庭園を突破した。
「……近くで見ると本当に不気味だな」
イバラだらけの館で恐怖を感じた。
「さてと、どうやってへえるか」
扉もイバラだらけで入るのが難しいので館の周りを調べる。すると水音がしたので、そこへ向かうと大きなプールがあった。周りは不気味な植物だらけで入る気になれないが、泳いでいる女性がいる。
泳ぐ姿が優雅でプールからあがり、美しい体を見せる。葉っぱのビキニで濡れた体がいやらしい。しかし興奮できなかった。なぜなら相手はアネモウネだった。
彼女はデッキチェアの近くにあるテーブルからタオルを取って体を拭く。さらに古貞を回復してくれた花があり、長い管をテーブルのグラスに向け、甘い汁を注いだ。
髪を拭いている彼女は少年に気づき、タオルをテーブルに置き、グラスを取って不気味に笑う。
「こんなに早く会えるなんて、うれしいわ。私達の再会に乾杯」
グラスを掲げて飲む。泳いで疲れた体を回復させ、味がいいので恍惚の表情を浮かべて舌なめずりをした。
「あんたもどう? ジューストローの甘い汁。ここまできた疲れがふっとぶわよ」
飲み干したグラスを突きだす。
「もう飲んだからいいよ」
「そうなの? 庭園のジューストローはここと違って調教をしていないから自分で管をくわえて吸わないと飲めないわ。度胸があるわね」
彼の行動力に少し驚いて笑った。
(植物も利用する者によって善にも悪にもなるな)
回復してくれた花が敵を回復させたので悲しむ。
「庭園でおれを襲い、花粉で害虫どもを操っている趣味の悪い花はなんなんだ!?」
「植物学者の亡き父が遺伝子操作をして生みだしたものよ。私が育てたら独自の進化を果たし番犬ならぬ番花になったわ。ここにくるバカどもを殺したり、捕えたりしてくれるから便利よ。まあ、あんたはそれを突破したけど」
ベジカラフルの肉食野菜と同じで手下のようなものだった。
「花びらが凶器のブーメランビリアに害虫しか操れない操縦花草、種を発射するマシードン。そして回復効果がある甘い汁を出すジューストロー。まだまだ庭園には、たくさんの植物があるわ」
聞いてもいないことを自慢するように話す。
「そんなことを話していいのか?」
「いいのよ。だってあんたは私の栄養になるんだから!!」
凶悪な笑みを浮かべて叫ぶと周りの植物から巨大なピンクの花が出てきて彼女の体についた。
「いくわよ!!」
アネモウネはプールに跳びこんだ。
「逃げるわけじゃねえな」
嫌な予感がし刀を抜いた。するとプールから勢いよく巨大な花が出てきた。
「チュパカズラ!!」
「オーヒョヒョヒョ!!」
不気味に笑い、無数のツルを伸ばして動かす。
「あの女はチュパカズラに変身できるようだな!!」
プールには彼女がいない。チュパカズラは無数のツルを振って攻撃する。
「庭園で戦った植物どものでかいやつだと思えばどうってことねえ!!」
古貞には余裕があり、ツルをかわしていく。
「鬼曼珠!!」
刀に炎をまとい、ツルを斬って炎を放った。斬られたツルとチュパカズラは燃える。しかし、ツルをプールの水につけ、水をかけて炎を消し、再び攻撃する。
「水だったら、なっから風!!」
無数のツルをかわし、刀から冷たい風を放つ。チュパカズラは少し凍って動きが鈍くなり枯れていく。さらにプールの水も表面が少し凍っていた。
無数のツルで攻撃するも動きが遅くなったので簡単によけられ、斬られていく。ツルをすべて失ったチュパカズラは蜜を噴きだして膨らんでいく。
「あの時と同じだ!!」
古貞は急いでプールから離れた。それと同時に破裂し破片と水が飛び散る。
「つめてえ!!」
少し凍らせて冷たくなった水を浴び、濡れてしまったが、ダメージはない。プールを見るとチュパカズラの破片だらけで少し壊れており、水はなく周りが濡れていた。
「アネモウネはいないな」
プールに近づき、底を見ても彼女はいなかった。しかし横の壁に通路があった。
「あそこを通って逃げたか」
古貞は刀を鞘に入れて下り、通路へ向かう。
「逃がさねえぞ、アネモウネ!!」
暗く湿っている通路へ入り、奥へ進む。
アネモウネの家族は植物学者の亡き父と野菜犯罪者の姉 ベジカラフル。母親は?
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