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第12話 小才子の支援

 稲子の活躍回。役に立つサブヒロイン。

 ◇


 伊仙奇第四基地の医務室。古貞と秀羽を運んで逃げてきたさゆりは二人を別々のベッドに寝かせた。


「古貞君」


 さゆりは古貞の方を心配しており、彼のそばに座って見ている。


「チュパカズラの毒をなんとかしないと! でもどうすれば!?」


 解毒方法がないので困っていた。


「失礼しまーす!!」


 そこへ稲子が元気よく自動ドアを開けて入ってきた。


「稲子さん!? どうしたの!?」


 突然、入ってきた彼女を見て驚いた。


「岡ちゃんが敵にやられたって聞きまして!」


 彼のことを心配しており、秀羽のことはついでといった感じだった。


「ええ。チュパカズラの毒で眠っているわ」


 他の連中とは違い、信頼できるので少年の状態を話す。


「それなら、これの出番!!」


 稲子は懐から小箱を出し、開けて無色透明の宝石がついているバッジを出して見せた。


「それは聖女せいじょしずく!!」

「そうです! これをつければ解毒と浄化をしてくれる高価なアイテムです!」


 さゆりは驚き、稲子は自慢するように説明する。


「これを岡ちゃんにつけます!」


 秀羽もいるが一切迷わず古貞の胸につけた。


「私がいうのもなんだけど秀羽君につけなくていいの?」

「岡ちゃんをよく思わない連中は多く、私も中立ですけど秀羽より彼に使った方がいいと判断しました!」


 自分の目を信じ、打算的で見込みがある方に賭けて笑った。


「さすが商人。渋香保の桃猫ももねこ


 さゆりは協力的な少女を褒めた。聖女の雫は光り、体から毒を消していく。光が消えると古貞は重いまぶたを開けた。


「ここは?」


 起きあがって周りを見る。


「さゆりさん。と稲子?」


 稲子がいることに少し驚き首を傾げた。


「よかった。目を覚ましたわ」


 二人は元気そうな少年を見て喜び安心した。


「おれはアネモウネにやられて」


 負けたことを思いだし、歯をくいしばる。


「ええ、チュパカズラの毒で眠っていたわ。でも稲子さんが聖女の雫をつけたおかげで毒は消えたわ」


 自分がここまで運んだことを言わずに稲子の働きを話した。


「聖女の雫を!? こんな高価な物を……ありがとう、稲子」


 胸にある聖女の雫を見て驚き、古貞は頭を下げた。


「ここぞという時に使えって親があまったやつをくれたんだよ。今がその時だから気にしないで。一度つけると、その人しか使えないから返さなくていいよ」


 古貞に高価なアイテムを与えたことなど後悔しておらず明るい笑顔を向けた。


「それにしてもアネモウネ。とんでもない強敵が現れたわね。私でも勝てない相手で私の能力では古貞君をこれ以上、強くすることもできないわ」


 さゆりは真剣な表情でアネモウネの強さを思いだし、なんの対策も思いつかず少年にアドバイスができない。


「だいじょうぶです。今回の闘いでやつの攻撃はだいたい分かりましたので今度は負けませんよ」


 落ちこんでおらず恐れもなく敗北をバネにして勝利に活かそうとしている。


「ふふっ、頼もしいわ」


 今の古貞を見ていると敗北が想像できず真剣に考えることがバカらしくなって微笑む。


「それなら私がそのアネモウネの情報を調べてあげるわ」


 稲子が協力してくれる。彼女には情報収集能力があり、多くの団員に提供している。


「助かる。頼むぜ」


 昔は利用しなかったが、頼ることにした。


「覚悟しろよ、アネモウネ。いて!」


 ベッドから下りようと動いた時、痛みを感じたので止まった。


「聖女の雫は回復効果がないから毒が消えただけよ」


 さゆりは少年をゆっくりベッドに寝かせる。


「アネモウネから受けたダメージが治っていないわ。今日は休みなさい」

「えっ!? さゆりさん!?」


 彼女はベッドにあがっており、古貞を押さえつけようとしている。別空間ではないうえに稲子がいるので恥ずかしくなり抵抗する。しかし本気で嫌がっておらず抵抗が弱い。


「医務室ではちょっと!! ここの先生に見られたら大変ですよ!!」


 自分がなんと言われても構わないが、さゆりの評判に傷がつくのは嫌だった。


「だいじょうぶよ。先生はいないわ。なにかの用事でしばらく戻ってこないよ」


 少年は彼女のウソに気づき、眠っている白衣の男を見て恐怖を感じた。昔の古貞は傷だらけになることが多く、彼だけ面倒そうに治した男なので顔を覚えており、印象が悪かった。


「ドアも開かないようにしたから私達だけだよ」


 稲子もベッドにあがり、古貞を押さえつけてウインクをした。自動ドアは停止になっていた。

 二人は少年を挟み、起きられないように押さえつけて寝ている。


「今日はしっかり休んで体を治しなさい」

「そうだよ。そんな体で闘ったら勝てるものも勝てないよ」


 さゆりはお腹を優しくなでて耳もとで囁き、稲子はいたずらっぽく笑った。


(休めるかよ!! でもいい匂いと体の感触で心地いいな)


 顔を赤くし変な笑みを浮かべて、おとなしくしている。痛みなどふっとび、心と体は癒されていく。

 ひとり寂しく寝ている秀羽とは大違いだった。


 ◇


 次の日の朝。基地にきた古貞を見て団員達は冷たく笑う。アネモウネにやられたことが基地中に広がり、いい気味と思っている。

 底辺だった少年が活躍しているので、よく思わない者は多く、味方がほとんどいないほど嫌われていた。慣れているので、まったく気にせずにアネモウネを倒すことを考えていた。


「岡ちゃん!!」

「うおっ!?」


 稲子が後ろから元気よく声をかけたので驚いた。


「稲子。アネモウネのことは分かったんか?」


 彼女は気さくで人気があるので仕事として話すことにした。


「もちろん! 私をだれだと思ってんの!? それじゃあ教えるね」


 笑ってウインクをし、調べた敵の情報を提供する。


「アネモウネは岡ちゃんが捕まえたベジカラフルの妹で上流階級だったみたい」

「ベジカラフルのやつから、もっと聞けばよかった」


 古貞が怒ると刑務所にいるベジカラフルはくしゃみをした。


「それにしても上流階級とは。秀羽と同じ貴族ってことだろ?」

「うん。伊仙奇の貴族で桂家かつらけといって花園館はなぞのかんと呼ばれていた館に住んでいた四人家族よ。美人姉妹がいて、ベジカラフルがかつら みどりでアネモウネがかつら つぼみという名前よ」


 彼女のおかげでいろいろなことが分かっていく。


「花園館って、あの不気味な古い館か。そんな家族が住んでたなんて知らなかった」


 館のことは知っていたが、物心がついた頃にはだれもいなかった。


「十年前、父親が亡くなって落ちぶれていき、母親も亡くなり、美人姉妹もいなくなって桂家は滅んだらしいわ」


 いろいろな情報を得たので思案する。


「なるほど。花園館へいってみっか。度胸試しをした若者達が戻ってこないうわさがあって調べにいった団員達も戻ってこねえ。なにかあるかもしれねえな。ありがとよ、稲子」


 情報を提供してくれたので、お礼を言った。


「いいって。それより花園館にアネモウネがいたら勝てるの?」


 笑っているが目は真剣だった。


「ああ。これがあるからでえじょうぶだ」


 懐から聖女の雫を出して見せ、すぐにしまった。庶民の彼がつけていると目立つので懐に隠していた。


「じゃ!」


 これ以上、話すとまずいと思い、彼女から離れる。


「がんばってね。ほい」


 稲子は団員服をずらし、片方の乳房を見せて励ます。周りには見えておらず彼だけ乳房を独占していた。


「お、おう」


 十分見た古貞は慌てて移動し、彼女は素早く乳房をしまった。




 稲子の働きでアネモウネの過去判明。

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