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美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者  作者: ライトニング
6章 血みどろの潰し合い編
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第14話 苦しく生きる者達

 悪政の中、生きる者達回。新キャラ登場。

 ◇


 沼束第一基地周辺の街。ここの人々も搾取されているが当主がいる街なので他の街より豊かだった。それでも生活が苦しく、幼仲の気分次第で殺される者が最も多い街なので領民達の心は荒んでおり余裕がなかった。

 第一基地で反乱があっても少し驚くだけで幼仲の部下達の顔色をうかがう生活に戻る。八つ当たりがあるかもしれないので反乱を迷惑と思っている。

 そんな人々が生活している街の路地裏にテントがある。汚くて穴を布などで補強してあり雨風をなんとかしのぐ程度のものだった。

 そのテントの外には二人の男がおり、壊れそうなアウトドアチェアに座っていた。


「どうした、練治?」


 二人の男のうちひとりは練治で周りを警戒していた。彼は最短ルートやトラックに隠れて乗るなどをして昨日この街に着いた。きた目的は復讐で幼仲を殺すこと。

 しかし、いきなり基地へのりこむ気はなく練治は死んだことになっているので大型犬の姿で街を調べた。昔とは違うひどい街を見て少年は悲しんで怒り、幼仲への憎しみが増していった。

 そして路地裏で休もうとした時、路地裏の主と出会い、正体を見せて匿ってもらっていた。


「敵がこないか警戒していました。おれ反逆者なので武影さん達に迷惑がかかったら大変です」


 憎しみで我を忘れるようなことはなく生活が苦しいのに助けてくれた恩人に感謝し役に立とうとしている。元々復讐などに向いていない性格なので憎しみが長続きせず思いだして膨らむくらいだ。


「練治はいい子だね。まあ、ここに敵がきたことなんてないからだいじょうぶだよ」


 ここで生活しているので説得力がある。

 路地裏のぬし 武影むかげ。細くて弱そうな体格でいろいろなボロ布を集めて作った長そでと長ズボンで穴があいた黒い長靴を履いており、汚い灰色の靴下が見えていた。

 口もとが見える黒い覆面を着用しており顔は見えないが、やせこけた精悍な顔つきの若い男性ということは分かった。

 武影の話では幼仲の部下達が遊び半分で顔の上部分を刃物で傷だらけにしたので覆面を着用しているらしい。そのため練治は顔を見たいとは思わなかった。


「これを食べるかい?」


 優しい笑みを浮かべ、手の平から野球ボールくらいの大きさのオレンジの玉を出した。蜜が固まった玉で甘い香りがする。


「ちょうだいします」


 腹が減っている練治は玉をとって食べる。ゼリーのような食感で甘くておいしく口の中でとろけた。


「便利な能力ですね」

「ああ。この能力で空腹をしのぐことができた」


 食糧を生みだす能力のおかげで悪政がひどい街でも生きていくことができた。


「あっ! きました!」


 小型犬くらいの大きさのアリが現れ、武影に近づく。人間を襲う危険なアリだが、おとなしく武影に懐いている。


「ほら、食べろ」


 手の平からオレンジの玉を出してアリに与えた。アリは玉を食べていき、おいしさでおかしくなったような動きをする。


「虫が食べると言うことをきく能力があるのもすごいですね」

「人間には害がなく昆虫を手懐けて操る能力だ。まあ昆虫は玉がおいしくて、もっと食べたいから僕に従って守っているようなものだ」


 アリの頭を優しくなでると犬のような動きをし、移動する。昆虫を使役する能力でアリに見張りをさせ、敵がきたら妨害するようになっている。


「買ってきたぞ。武影、練治」


 若い女性が二人に近づいた。アリが妨害せずに通したので敵ではない。

 背中に届くほどの長いクリムゾンレッドのツーサイドアップで青紫のアイシャドウ、赤い口紅が塗ってある唇と肉食動物のような八重歯でけばけばしい感じの美女だ。

 上半身がたくましく、マルーンのレオタード姿で裸足。両手に食べ物と飲み物が入ったトートバッグを持っており力強い。


舞沙まいさ

蛾間がまさん」


 二人は礼儀正しい態度で女性を見て喜んでいた。まるで足を向けて寝られないような感じだった。


「いつもありがとう」

「ありがとうございます」

「気にしないで。好きでやってることだ」


 女性はきれいな八重歯が見えるように笑い、トートバッグを置いた。彼女は武影に食べ物などを持ってきて養っていた。練治もそれをもらっているので二人は彼女のおかげで腹を満たすことができる。


「玉だけじゃ足りないから食べよう」

「はい」

「私も食べるわ」


 食べ物などを持ってくるだけでなく一緒に食べることもあり舞沙は武影の隣にあるアウトドアチェアに座った。彼女が持ってきたものなので食べる権利がある。


「私は唐揚げ弁当」

「僕はシャケ弁当」


 武影は舞沙がとってから弁当をとった。


「お弁当、温めますか?」

「私はいい。冷めた唐揚げ弁当もおいしいわ」

「頼む」


 舞沙はフタを開け、武影は練治に弁当を渡した。彼が両手で持って集中すると弁当は赤く光る。


「どうぞ」

「熱い!」


 渡された弁当はちょうどいい熱さになっており、フタを開けると湯気とおいしそうな匂いが出た。

 弁当を渡した練治はトートバッグからカップラーメンをとり、フタを開け、ペットボトルの水を入れてフタを閉じた。集中すると中の水が赤く光ってお湯になり、フタのすき間から湯気が出てきた。


「熱の能力は便利だね。簡単にお湯が手に入るのは大きい」

「はい」


 時間になったのでフタを開け、できたカップラーメンを見て割り箸を持つ。練治の熱能力は汎用性があり、うまく調節しカップラーメンのように水だけに熱を与えることができる。


「バカ当主の悪政でまた食べ物の値段があがったわ」


 舞沙は愚痴をこぼしながら弁当を食べる。彼女は働きながら武影を養っているので生活が苦しかった。


「無能な僕のせいで申し訳ない」


 武影は無職だ。仕事は失敗ばかりで働いても借金になるだけなので舞沙に頼る生活をしていた。その関係は幼仲の悪政の頃から続いており彼女は気にしておらず彼は気にしていたが、どうすることもできなかった。

 彼女はここの出身ではなく旅のイベントコンパニオンでこの近くの宿泊施設に住んでおり武影がいるため、ここから出ることができなくなっていた。


「幼仲め!!」


 練治はバカ当主を憎みながら麺をすする。


「今バカ当主を殺すのは無理だよ。チャンスがくるまでここで待った方がいい」

「はい」


 今いっても幼仲を殺すのは無理なので少年は武影に従い、ここでチャンスを待つ。悪政で人々は苦しんでいるが、武影や舞沙のようにたくましく生きている者達がいた。


 ◇


 第一基地の特別拷問室。ハーレムの女達とハーレムガードの反乱は失敗し彼女達はここではない牢屋にいる。反乱に消極的だった女達も同罪で捕まり、反乱に積極的だった女達を責め、ケンカになっていた。

 そして、ここには三人の女がおり生子のように拘束されていた。二人は穴だらけの血まみれで死んでおり、幼仲は生きている女を激しく責めている。


「よくも、この僕に逆らったな!!」


 生子の時と同じように警棒で叩いているが警棒には無数のトゲがあり、二人の女はこの警棒で死亡した。

 逆らったことが許せず怒りに任せて警棒を激しく振り、女の体を傷つけていく。三人の女は反乱で目立った者達で、これは拷問というより八つ当たりの処刑だ。


「殺して……殺して……!」


 弱い力なので、なかなか死ぬことができず痛みに耐えられない彼女は死を望んでいる。肌に穴があき、皮が破れて血を噴きだし床に飛び散っている。


「僕は沼束で一番えらいんだぞ!! 僕に逆らうやつは死ね!! 逆らったことを後悔して死ね!!」


 醜く喚き、一心不乱に叩きまくる。生子は恐怖を感じて見ていた。逆らった女達を責めて殺すことで頭がいっぱいなので生子は眼中になかった。余計なことを言えば彼女も危ないので黙っている。

 うちどころが悪く、大量の血を流したので女は死に幼仲は叩くのをやめた。三人に怒りをぶつけて殺したが、彼の怒りはおさまっていない。


「僕の平和な生活がおかしくなったのは反逆者ども。いや古貞がきてからおかしくなってしまった!! すべて古貞のせいだ!!」


 古貞がきたことで反逆者達の動きが活発になったようなものなので彼のことを憎むようになった。


「やつを殺すだけでは生温い!! 僕に逆らったやつの家族も殺す!! 獣人団に反逆者だけでなく古貞の家族も殺すように命令しよう!!」


 自分に逆らう者やその家族にも容赦しない。そうやって、うるさい者達を黙らせて統治してきた。


(古貞の家族が危ない!!)


 囚われの彼女にはなにもできない。


 舞沙のモチーフは蛾とワガママ。練治は第一基地周辺の街に隠れていた。

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