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第11話 植物の反逆

 強くなった主人公、初めての危機。

 ◇


 重月の母親とのことを忘れて古貞は哨戒をしていた。昨日、肉食野菜達が暴れたので街はかなりやられており、復旧作業をしている。


「警察団がなんか調べてる?」


 青い団員服姿の人達がいるので近づいた。


「なにかあったんか?」


 気になったので聞く。彼のことをよく思っていないので嫌な表情を浮かべたが、仕事ということで話す。


「また男が殺されたんだよ」

「最近、伊仙奇で起きてる男ばかりを殺害する怪事件か」


 彼も男で仕事柄、知っていた。


「目撃者の話だと昨日の夜、変な女が男をたたきのめしていたらしい。目撃者は我々に通報したが遅かった。犯人は変な女で殺し方も同じだ」


 警察団員は死体を見せた。液体が人の形をしていた。


「骨も肉も溶けてる。まるで溶かして栄養を吸ったみてえだ」


 直感的にそう思った。


「その男の持ち物があった。これは溶けていなかった」


 見せたのは刀だった。


(その刀は苦旅の!? やられたのは苦旅か!?)


 見覚えがある刀だったので表情に出さずに驚いた。闇討ちをした相手だが溶けた姿を見て、哀れに思った。


「あんたも気をつけた方がいいぞ」

「ああ、きいつけるよ」


 十分情報を得たので古貞は移動する。


(男殺しは苦旅を倒すほどか。とんでもねえな)


 まだ遭遇していない強敵に少しおびえながら哨戒を続ける。


 ◇


 哨戒の途中、畑に巨大な害虫が大量に発生したので古貞は駆除をしていた。


「こんなに湧きやがって!!」


 楽勝な芋虫相手でも数が多いので駆除しても、なかなか減らない。そこへ援軍がやってきて駆除を行う。秀羽がいたが、凪達や取り巻きはいなかった。


(くそ!! どいつもこいつもおれから離れていきやがって!! だれのおかげでエースになれたと思ってるんだ!!)


 頼りになる味方がいないので苦戦しながら芋虫を倒している。


(満場一致とはいえ重月を追放したのはまずかった!! あの脳筋がいなくなったせいでだれもおれに従わなくなり、おれから金をせびるだけのグループになってしまった!!)


 エースグループは崩壊し、金目当ての連中しかおらず、そいつらは金だけもらって、ここにきていないので彼は孤立していた。


(苦旅は男殺しにやられて古貞を殺していない!! どいつもこいつも役に立たず、おれの邪魔ばかりする!!)


 戦っている古貞を忌ま忌ましそうに睨む。


(庶民のくせにあの強さ!! そして、くだらないとはいえ、おれが持っていない能力!! 貴族のおれが無能力者で庶民の古貞が能力者なんて!!)


 落ちこぼれで能力者なのが気に入れず秀羽は古貞を虐げていた。


(ここで活躍して、おれが優秀だということを証明しないと!!)


 すべてを失い、ほぼヤケになっており刀を振りまわして芋虫を斬っていく。


「このままだとスタンピードになるかもしれねえ!」


 古貞だけでなく、ほとんどの団員が恐れており、急いで駆除する。蛹になっている芋虫もおり、攻撃するが頑丈で傷つかない。

 そして蛹が割れ、中から巨大な蝶が出てきて飛翔した。


「まずい!! 蝶になっちまった!!」


 芋虫から蝶の相手になり、古貞達は上を見た。人間くらいの大きさだが、華奢で戦闘力が低く、あまり高く飛んでいないので、こちらの攻撃が当たりやすい。

 戦う気がなく蝶はヒラヒラと飛んでいる。古貞は高くジャンプして派手な色の羽を斬った。墜落し地面に激突した蝶はなんとか生きており動く。団員達は弱っている蝶にとどめをさした。


「早く蝶を倒さねえと!!」


 次の蝶に狙いを定めた時、巨大な鎌が蝶を捕えた。


「しまった!! カマキリだ!!」


 巨大なカマキリの出現に古貞は驚いた。カマキリは蝶を逃がさないようにして貪り喰っている。


「このままじゃ蝶を食べるためにカマキリなどの肉食昆虫がきて、スタンピードになっちまう!!」


 食べ終えたカマキリは飛んでいる蝶だけでなく団員達も見ている。戦闘力が高い肉食昆虫でも一体だけなので、なんとかなる。

 巨大カマキリは食欲を満たそうと団員達に襲いかかり暴れる。捕まったら喰われてしまうので必死にかわしている。


「空飛ぶ蝶より、おれ達を喰う気か!?」


 ひとりの団員が捕まり、抵抗虚しく喰われてしまった。それを見た者達は恐怖で青ざめており、気分が悪くなった。このままでは自分達だけでなく一般人まで喰われてしまうので早く倒そうと古貞は向かっていく。

 その時、地面が盛りあがっているのが見えたので離れた。巨大な唇のような赤い花が出てきて、触手のような長いツルが無数にあった。


「吸血植物チュパカズラだ!!」


 古貞は植物の名前を叫んだ。


「オーヒョヒョヒョ!!」


 赤い花は唇のように動き、不気味に笑った。


「生物の血を吸い、肉を喰う悪魔の植物!! なんでこんなところに!?」


 秀羽達も驚いている。その場から移動できないチュパカズラはツルを伸ばしてカマキリを捕えた。抵抗しても無駄で引っぱられていく。よだれのように蜜をたらし大きく開けて、カマキリを丸呑みにした。咀嚼せず口の中で溶かしているようだった。

 さらにツルを伸ばし蝶も捕えて食べていく。害虫達がいなくなると今度は団員達を喰おうとしている。


「あの花は虫だけでなく人間も喰うから処分しねえと!!」


 おぞましい花なので古貞達は処分しようと向かっていく。チュパカズラはツルから無数のトゲを出して振る。

 古貞と秀羽はかわし、他の人達はくらってしまった。団員達は眠ってしまい、立つことができない。

 眠っている者達をツルで捕えて食べ、戦えるのが二人だけになった。


「チュパカズラのツルには生物を眠らせる毒のトゲがある!!」


 詳しい秀羽は毒を恐れて下がり、古貞は刀でツルを斬っていく。無数にあり、斬っても生えてくるので、キリがない。


「燃えちまえ!! 鬼曼珠!!」


 いらだち刀に炎をまとって放った。


「ンン!!」


 チュパカズラは燃えて不気味に悶えているが、蜜を噴きだして炎を消す。ツルがなくなり、花は少しこげていた。

 さらに蜜を噴きだして花は膨れていき、破裂した。


「な、なんだ!?」


 破片などが飛んできたので、かわしていく。花があった場所にはアネモウネがいた。


「また変なのがいる。変な女だな」


 彼女を見て、うんざりしている。


「なかなかの炎で燃えて蜜が出ちゃったわ」


 アネモウネは恍惚の表情を浮かべ、股間の花をいじる。蜜がたれ、土を少し溶かした。


「気持ちの悪い女だが、今までの敵とは違うな」


 粘着質な恐怖を感じ、少し後ろに下がった。


「あんたは今までの男どもと違って、いい栄養になりそうだわ」


 舌なめずりをし、前髪で隠れている目で少年を見ている。


「今までの男!? お前、男殺しか!?」


 犯人のようなことを言ったので驚いた。


「その通りよ。男の肉と骨と血はおいしくて私にとって、いい栄養になるわ。でも最近はろくな男しか食べていないから物足りないわ」


 隠すどころか堂々と話す。


(あの女が苦旅を倒した男殺し!! 重月達、駒がいないからまずい!! だからといって逃げても終わりだ!!)


 勝ち目がないと分かっても逃げることができず秀羽は目立たないように刀を構える。


(こいつが苦旅をやったのか)


 彼の仇を討つ気はなく、これ以上、被害を増やさないために闘う。


「いいわあ。元姉を倒したやつだから期待しちゃう」


 闘う気満々の古貞を見て彼女は興奮しており頬が赤い。


「元姉って、ベジカラフルの妹か!?」


 彼が倒した女性は彼女くらいしかいないので、すぐに分かった。


「方向性の問題で縁を切ったからどうでもいい女よ。今はあんたを食べたくてしょうがないわ!!」


 姉のことはどうでもいい感じで少年のことしか考えていない。


「今度こそ燃やしてやる!!」


 能力を使おうとした時、アネモウネは胸部の花から花粉を放った。


「なんだこれ!? 花粉!? なんともねえ?」


 花粉をくらって驚いたが、体になんの変化もなく団員服に花粉がついて汚れた。


「こけおどしか? 鬼曼珠!! えっ!?」


 刀から炎がまったく出てこない。


「能力が使えない!?」


 炎だけでなく、すべての能力が使えないことに気づいた。


「能力封じの花粉よ。こうやって相手を無力にして、いたぶるのが好きなのよ」


 恍惚の笑みを浮かべて能力が使えないことを教え、片手をチュパカズラのツルに変えた。


「能力なしで闘うしかねえか!!」


 能力なしで闘うのは慣れていないが、敵は待ってくれないので向かっていく。アネモウネはツルを鞭のように振る。


「くっ!!」


 刀で防いでも自由に動くので、くらってしまった。古貞は近づけず反撃もできずツルをくらい続ける。


「いい!! すごくいい!!」


 苦悶の表情を浮かべている少年を見て興奮し喜んで容赦なくツルを振る。昔の自分では耐えられない攻撃をなんとか耐えていた。


「調子に乗んな!!」


 刀でツルを斬っても、すぐに再生した。


「甘くて、とろける蜜でもどうぞ!!」


 胸部の花から蜜を出し、古貞にかけた。


「団員服が溶けてる!? 体も!?」


 粘り気がある蜜は彼の団員服を少し溶かしていき、肌にダメージを与えた。さらに体から力が抜けていく。


「おいしそうな体!!」


 アネモウネは少し見えている少年の体を見て、舌なめずりをし、胸部と股間の花から蜜をたらしている。


「これはまずい!!」


 能力を封じられ、ボロボロの状態なので焦っている。追いうちをかけるようにツルで刀を奪い、投げ捨てた。

 そして、すかさず彼の首にツルを巻きつけ、凄まじい力で引っぱり、振りまわして地面にたたきつけて引きずる。


「とどめよ!! おやすみ!!」

「いづっ!? トゲ!!」


 ツルから無数のトゲが出てきて、古貞の首に刺さった。ツルが離れるとチュパカズラの毒が回り、眠気が襲ってくる。


「やべえ。ねみい」


 眠気に耐えきれず、うつ伏せに倒れた。


「私の攻撃にここまで耐えるなんて。やっぱり他の連中よりマシだったわ」


 興奮を抑えて、ゆっくり近づく。


「ああ! 興奮しすぎて、よだれと蜜があふれちゃう!」


 我慢できず舌を出して、よだれを流し、股間の花は口を大きく開ける。


「いただきまあす!」


 少年を食べようとした時、秀羽がアネモウネの背中に斬りかかる。彼女を討ち取ればヒーローになれるが、そう甘くなく蹴りとばされた。


「そういえば、もうひとりいたわね。顔がいい方だから、こいつを食べたら、あんたも食べてあげるわ」

「あー!! あー!!」


 恐怖で錯乱し蹴られた痛みなど忘れ、刀を捨てて眼鏡を落とし無様に逃げた。


「逃げられないわよ」


 冷めた表情でトゲだらけのツルを振る。背中を見せているので、かわすことができず、くらってしまい死んだように眠って倒れた。


「さて今度こそ」


 笑みを浮かべて振り向くと古貞はいなかった。彼は遠くにおり、黒いレオタード姿で裸足のさゆりがいた。


「あんたは繭林の白百合 船津さゆり」


 彼女を見て、アネモウネは殺気に満ちた怒りの表情を浮かべた。


「私のことをご存じのようね」


 さゆりは鋭い殺気に満ちた冷たい表情をしていた。


「あんた有名だから知ってる。でも私の敵じゃないわ。さっさとそいつを返しなさい。私の栄養よ」


 まったく恐れておらず、いらついていた。


「返すわけないでしょ。この子を食べるなんて許さないわ」


 堂々としているが敵の強さが分かっており、無理をしている感じだった。


「私、男は食うけど女は殺す方だから、あんたを殺して食うことにしよう」


 ツルで地面を叩く。さゆりは刀を抜いて構える。


「くらえ!!」


 胸部の花から花粉を放つ。古貞と違い、彼女はかわした。能力封じに失敗したので近づけさせないようにツルを振りまわす。

 攻撃をかわしていき、ツルを斬り、再生する前に一気に近づいて胸部の花を突く。しかし花の口が刀をかんで止めた。いくら力をいれても動かない。


「金属は溶かせないけど、あんたなら溶かせるわ!!」


 股間の花から蜜を出す。とっさに刀をはなしてかわしたが、少しかかってしまい、レオタードがボロボロになってしまった。少しかかった程度で肌が丈夫なのでダメージはない。


「武器なしで闘うの?」


 バカにして笑い、花の口で刀をかみ砕いた。


「そうね。あなたと闘う必要はないわね」


 勝ち目がないので、さゆりは冷や汗を流して笑った。


逃避光とうひこう!!」


 手の平から強烈な光が出て、アネモウネはまぶしくて目を閉じた。


「くっ!! いない!!」


 光が消えると、さゆりと古貞はおらず秀羽もいなくなっていた。


「逃げられたか。まあいい。また会えるでしょ。その時が楽しみだわ」


 アネモウネは胸部と股間の花から蜜をたらして畑から消えた。古貞の快進撃は強敵によって止まってしまった。


 


 





 姉より強いアネモウネ。能力封じの花粉に溶かす蜜、眠らせる毒のトゲ。

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