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番外編 死にゲー体験

 古貞達が沼束へいく前、細川指揮官に仕事を押しつけられていた時の話。

 高山奇の又座書店。古貞は自分の部屋で式神端末のゲームをしていた。式神端末のゲームだがエネルギー画面が出ており、ゲームの内容がよく見える。

 部屋には団員服姿の鮎美と石榴、聖華がおりエネルギー画面とゲームをしている少年を見ていた。


(部屋に美少女達がいるのは変な気分だな)


 少年は少し赤い顔をし、気にしないようにゲームに集中している。いやらしいものなどがない殺風景な部屋でマンガがあるくらいだ。


「うおっ!?」


 主人公キャラがやられそうになったので変な声を出してしまった。彼がやっているのはヘルムで顔が見えない鎧の騎士がモンスターを倒しながら進んでいる横スクロールゲームだった。

 鎧の騎士はモンスターの攻撃を受けて、やられてしまった。鎧の意味がないほど弱かった。


「また死んだ!!」


 キャラが死んだので悔しがっている。美少女達がいるから緊張して集中できなかったのではなく、このゲームが難しいから死んだだけだ。


「オカイコ、弱いね! また死んだ!」


 石榴は楽しそうに笑っている。バカにしているのではなく、はしゃいでいるだけだった。


「敵キャラの動きは分かるけど難しそう」


 鮎美は目がいいので敵キャラの動きが見えており、初見殺しにすぐ対応できそうだが主人公キャラの性能が悪く操作が苦手なので、クリアする自信がなかった。


「こういうゲームはよく分かりませんが古貞さんが上手だということは分かりました」


 聖華は負けた古貞を励ます。ゲームをやったことがない彼女は自分でやるより観る方が好きで少年のプレイを観て楽しんでいた。


「ありがとう、聖華。まだ残機があるから続きをしよう」


 ゲームの続きをしようとした時、キャラが動かなくなった。


「あれ? 動かねえ。ネットで不具合がある死にゲーって書いてあったから、それかな?」


 いくら操作してもキャラは動かず、ゲームはちゃんと動いている。


『もうヤダー!!』


 突然、主人公キャラが叫び、勝手に動いて走った。


「なっ、なんだ!?」


 古貞達が驚くと画面が光り、少年は画面に吸いこまれて消えた。


「オカイコ!!」


 三人の少女は驚き、画面を見た。そこには古貞がいた。


「古貞君がゲームの中にいる!?」

『どうなってんだ!?』


 鮎美達だけでなく少年も自分の姿と状況を見て驚いていた。


『あれ!? 動けねえ!!』


 自分の体なのに動くことができず動揺する。


『あんたはこの死にゲー デスナイトの不具合で主人公キャラになったのよ』


 困っている少年の前に若い女性が現れた。ピンクのアイシャドウに赤い口紅が塗ってある肉厚の唇がセクシーで背中に届くほどの長い赤紫の髪。深紅のドレス姿のグラマーなお姫様だった。


『あんたはこのゲームのヒロイン!! ってことはやっぱりここはゲームの中!?』


 彼女を見て理解した。コスプレではない正真正銘デスナイトのヒロインだ。


『不具合ってなんだよ!?』


 動けない体で必死になって聞く。


『あんたが主人公を死なせすぎたから主人公が嫌になって逃げたのよ。それによって不具合が起き、あんたはゲームの空間にきてしまい主人公キャラになったのよ』

『なんてこった!! 不具合ってレベルじゃねえ!! 死にゲーがデスゲームになっちまった!!』


 とんでもない不具合を知って古貞達は絶望しそうになった。


『ここから出ることはできねえのか!?』

『ゲームと同じでクリアすれば、ここから出られるわ』


 救済措置があり、古貞達は安心しそうになったが、これは死にゲーでクリアするのが難しくゲームオーバーになりやすい。

 不安だらけの少年にヒロインは優しくチュートリアルを行う。


『あんたは主人公キャラと同じだから自分の意思で動くことはできず操作されて動くことができるわ』

『石榴達に任せるしかねえのか』


 他人に体を操作されるのは、あまりいい気分ではなかった。クリアは自分の力ではなく少女達にかかっていた。


『ゲームオーバーになっても死ぬことはないけどクリアしないと、ここから出られないし、セーブ機能がないので最初からやり直しになるわ』


 ヒロインの説明でクリアするまで出られないことが分かった。


『それじゃあゲームスタート!!』


 説明が終わり、ゲームが始まると突然、悪魔が現れて彼女をさらって消えた。


『オープニングと同じだ』


 ヒロインがさらわれるところから始まり、ゲームと同じだった。


『最初のステージへいくぞ!! 操作してくれ!!』

『分かったわ!』


 古貞の指示でゲームが得意な石榴が操作をする。ゲームが苦手な鮎美と聖華では少年の操作をミスするかもしれなかった。石榴が操作すると古貞は動いた。


『動いたけど、なんだか自分の体じゃねえみてえだ』


 変な気分で歩き、自分の意思で止まることができなかった。


「私がオカイコを操作してる」


 石榴は緊張というより少年を操作できることに興奮していた。


『最初のステージだ』


 最初の森ステージに着いた。古貞だけでなく多くのプレイヤーがクリアできなかったステージだ。不気味な森で突然、敵が出てきて攻撃や隠れている小さな敵の攻撃など初見殺しが多い。


『プレイヤーじゃなくてゲームのキャラでこのステージをやることになるとは。主人公キャラはいつもこんなものを見ていたのか。そりゃ逃げるな』


 画面や横スクロールと違い、とてもリアルで恐怖を感じていた。


「いくぞ、オカイコ!」

『頼むぜ、石榴!!』


 石榴の操作で古貞は刀を抜き、鮎美と聖華は見守っている。主人公キャラと違い、自分の武器が使えるのはうれしかった。


『早くクリアする必要はねえ!! 慎重にいけ!!』

「了解!」


 少女は画面に集中して少年をゆっくり動かす。森の奥へ進むと突然、鳥の怪物が出現し襲いかかってくる。


「敵だ!!」


 ゲームの知識があるので操作して攻撃をしようとした時、主人公キャラとは違う動きになった。


『鬼曼珠!!』


 刀に炎をまとって放ち、鳥の怪物を消滅させた。


「主人公キャラにオカイコの攻撃なんてない!!」


 石榴達は驚き、古貞はあまり驚いていない。


『なんとなく使えるのは分かっていた。これはいい!』


 ゲームのキャラになっても少年の強さは健在だった。主人公キャラは剣と盾が武器で遠距離攻撃がなく近づいて攻撃するしかなかった。しかも敵は遠距離攻撃があるので近づくのが難しい。

 しかし古貞の性能でゲームができるので主人公キャラのように負けることはない。


『このまま攻撃をしまくって進め!!』

「了解!!」


 石榴は少年を操作して進む。出現する敵を斬って進み、速い動きでかわしている。主人公キャラの弱さがなく性能がいいので自分でプレイした時より速く進むことができる。


『くっ!』


 それでも難しいゲームで石榴の操作が悪い時があり敵の攻撃をくらってしまった。


「ごめん、オカイコ!!」


 攻撃をくらった少年を見て石榴は慌てて謝った。


『謝るくらいなら、ちゃんと操作をしてくれ! 少し痛かったけど、だいじょうぶだ』


 鎧の騎士のような一撃でやられる紙耐久ではないので耐えることができる。


「このゲームで古貞さんの体を治すことはできないのですか?」


 ダメージを受けた少年を見て聖華は心配し石榴に聞く。ゲームで回復などがあるくらいは知っていた。


「このデスナイトは死にゲーで回復なんてないよ」


 主人公キャラは一撃でやられるので回復などない。


「それなら治師手!!」


 聖華は画面に映っている少年に手の平を向けて光を放った。


「いくらなんでもゲームのキャラに回復能力は無理じゃ」


 全員、彼女の行動は無意味と思ったが古貞の体は治っていき、残機も増えていた。


『すげえ!! 治った!!』


 古貞は回復したことに驚き、同時に喜んだ。ゲームのキャラになっても彼は味方の支援を受けることができた。


「これなら、なんの問題もなくクリアできる!!」


 難易度が高い死にゲーが一気にヌルゲーになったので石榴の不安はなくなり、落ち着いてプレイすることができる。


 ◇


 ヌルゲーになったことで難易度が高い即死攻撃の数々を突破し古貞は最後のステージである魔王の城まできた。

 そして主人公キャラでは勝てない魔王を実力でねじふせて倒した。


「やったー!! 魔王を倒したわー!!」


 本来の主人公キャラではないが魔王を倒した喜びが大きく、石榴にとっては些細なことだった。


「おめでとう!」

「おめでとうございます」


 鮎美と聖華にも感動が伝わり、拍手をした。


『ゲームの魔王にやられたらシャレにならねえよ』


 自分の手で魔王を倒したので少年は最高の気分で喜んでいた。


『ヘルプ!!』


 ボロボロのドレス姿でX字の台に拘束されているヒロインが助けを求め、体をくねらせている。


『今助けてやるよ』


 エンディングなので操作する必要がなく古貞は勝手に動いてヒロインを助けた。


『ありがとう。エンディングが終われば、あんたは元の世界へ帰ることができるわ』


 ボロボロのドレス姿がいやらしく、目のやり場に困ってしまう。ゲームのキャラだからこその美しさと魅力がある。


『そうか。クリアしたことねえからな。どんなエンディングだろ?』


 見たことがないエンディングなので期待している。そして禍々しい魔王の部屋から一瞬でお姫様のようなヒロインの部屋に変わった。


『わっ!?』


 周りだけでなく古貞とヒロインの姿も変わっていた。古貞はパンツだけでヒロインはいやらしい赤い下着姿だった。


『その姿は!?』


 古貞だけでなく少女達も驚いた。


『エンディングはベッドインよ』


 ヒロインは雲のようなやわらかいベッドに近づき、横になった。


『さあ、いらっしゃい』

『体が勝手に!?』


 彼女が手招きをすると少年は動き、ベッドに近づく。


「ゲームでそんなことをしていいと思ってるの!?」


 石榴は少年の式神端末を壊すほどの力で操作するが、エンディングは自動なので意味がない。


『このままじゃ自主規制になる!!』

『だいじょうぶ。画面ではシルエットとエンドロールだから』


 画面ではそうでも主人公キャラの古貞はモロ見えてしまう。いくら美女でもゲームのキャラが相手なのは少し抵抗がある。


『姫!! 戻ってきました!!』


 少年がベッドにあがろうとした時、鎧の騎士が勢いよくドアを開けて入ってきた。鎧の騎士は古貞とヒロインを見て、ヘルムの上からでも分かるほどの青い顔をして涙を流した。


『なんでエンディングにこいつが出てくるんだ!!』

『また不具合が起きて、こうなっちゃったみたい』


 不具合によって主人公キャラがヒロインの部屋にきてしまった。


『おのれ、この魔王!! 姫になにをしている!?』


 鎧の騎士は怒り、剣を抜き、盾を構えた。


『おれは魔王じゃねえ!! おめえの代わりに主人公になった被害者だよ!!』


 そんなことを言っても意味がなく彼にはパンツ一丁の少年が魔王に見えており斬りかかった。エンディングのせいで動けず操作もできない古貞は剣をくらったが、ザコの主人公キャラの攻撃などきかなかった。

 そして紙耐久なので反動でふっとび、壁をぶち破った。主人公キャラは鎧や服などが脱げて外へ落ちた。


『おのれ、魔王!! 必ず姫を助ける!!』


 ヘルムとパンツだけになった主人公キャラは立ちあがり、新たなゲームが始まろうとしている。

 不具合で主人公キャラが古貞を倒すまで出られない死にゲーになってしまった。主人公キャラの性能では古貞に傷をつけることはできないので石榴がいくら操作してもクリアはできない。


『ゲームオーバーカ!!』


 古貞達はとんでもないクソゲーに呆れるしかなかった。その後、聖華が大金でプロゲーマーを雇い、裏技でクリアし古貞は戻ってきた。



 次回から血みどろの潰し合い編の予定です。

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