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第1話 芋虫の少年

 書きためていたものを初めて投稿しました。

 和の国 日桜皇国ひざくらこうこく上馬じょうまの中心地 伊仙奇いせんき。領地は海が遠いので野菜などを作っており、畑や田んぼが多い。

 そのため害虫などが発生し人々は作物を守ろうと戦っていた。


「槍で突け!!」

「逃がすな!!」


 今も白い団員服姿の人々が武器を持って巨大な芋虫を攻撃している。芋虫は毒々しい派手な色で人間よりも大きい。畑の周りには同じ芋虫の死体があり、喰い荒らされた野菜があった。

 一体の芋虫に集中攻撃をするとのたうちまわり、団員達に突進する。


「おら!! 肉の壁だ!!」


 筋肉質でたくましい体の少年団員が近くにいた肥満の少年団員を盾にした。少年はふっとんで転がり、それを見て他の団員達は笑った。


「今だ!! 攻撃!!」


 眼鏡をかけた少年団員の指示で一斉に槍で突き、たくましい体の少年団員が歯をむきだしにして笑い、刀で斬った。芋虫は緑色の血を噴きだして倒れた。


「よし!! この畑の芋虫は全滅だ!! みんな、よくやった!!」


 最後の一体を倒したので眼鏡の少年は叫び、団員達は歓声をあげる。


「「「秀羽!! 秀羽!! 秀羽!!」」」

「「「重月!! 重月!! 重月!!」」」


 活躍した二人を称える声が畑中に響く。眼鏡の少年とたくましい少年はいい気分になり愉悦に浸る。


(なに、みんなの勝利みたいに喜んでんだよ)


 肥満の少年団員だけはふてくされて寝転がっており、耳障りな声を聞かないように耳をふさいだ。


「あっ! ここに芋虫の生き残りがいる!」


 金髪のベリーショート少女がいたずらっぽく笑って槍で軽く突いた。


「いてっ!」


 痛みで起きあがると皆の視線が集中していた。先ほどの芋虫を見る目よりもひどい冷ややかな目だった。


「そいつは芋虫以下のやつだが、一応仲間だ」


 眼鏡少年の言ったことが面白く、みんなは爆笑した。肥満の少年はなんとも思わず笑い声を聞いていた。


 ◇


 伊仙奇第四基地いせんきだいよんきち。芋虫退治を終えた団員達は戻っていた。


「まったく、お前はなにをしていたんだ!?」


 基地の指揮官室では耳をつんざく女性のうるさい声が響いている。

 指揮官室には肥満の少年団員が立っていた。短い青の髪で瞳は黒く、背が低くて醜い肥満体型で白い団員服がきつそうだった。黒いブーツを履いているが、畑で転がったので白い団員服と同じように汚れており新品でまったく使われていない刀を腰にさげていた。

 偉そうに椅子に座っている若い女性は長い紫の髪で四角い眼鏡をかけており、いらだつ鋭い目と鬼のような美貌が怖い。黒いパンツスーツ姿で黒いパンプスを履いており、凛々しさと傲慢さがある。


「申し訳ありません、名尻なじり指揮官」


 謝る気などなく形だけの態度で頭を下げた。


「謝る暇があるなら結果を出せ!! 古貞こさだ!!」


 デスクを叩いて怒鳴る。謝っても彼女の怒りがおさまらないので頭をあげた。


「何度、言えば分かるんだ!? 何回も同じことを言わせるな!! 我が団の役に立て!! 害虫退治で皆の足を引っぱり、ろくに仕事ができないのは、お前だけだぞ!! もっとしっかりしろ!!」


 口うるさく怒鳴り散らす。


(いつもうるせえな。あんたが怒鳴れば仕事ができるようになるのかよ)


 古貞は聞くふりをしていた。


「他のみんなは給料以上の働きをしているのに、お前はただ給料をもらっているだけなんだよ!! 給料泥棒が!! お前のそのブクブクの醜い顔と体を見てるとイライラする!! 私はデブが嫌いなんだよ!!」


 仕事とは関係ないことを言って怒る。


(じゃあ、ここに呼ぶなよ。他のやつを怒鳴れないから嫌いなおれを怒鳴ってストレス発散してるだけだろ)


 何十回も怒鳴られているので少年はうんざりしている。


「ちゃんと聞いてるのか!?」


 聞いていない感じだったのでデスクを叩いた。


「聞いていませんよ。やべ!」


 正直に答えてしまった。


「聞いていないだと!?」


 余計怒らせてしまい、彼女の顔は真っ赤になり、怒りマークだらけになった。


(これはやばいな!)


 命の危険を感じ、真っ青になった。


「出ていけ!! これ以上、話すことはない!!」


 さすがに部下を殺すようなことはせず怒って自動ドアを指さした。


「はい!! そうします!! 失礼しました!!」


 急いで自動ドアへ向かって指揮官室から出た。


(いつもならあんなことを言わねえのに。あんなのが上官でおれかわいそう)


 慣れているので、あまり気にしておらず指揮官室から離れて廊下を歩く。すると前から三人の男女が歩いてきた。


「よう、古貞!」


 先ほどのたくましい少年団員が凶悪な笑みを浮かべて声をかけた。ボサボサの赤い髪で三白眼。古貞と同じ白い団員服姿で黒いブーツだが、たくましい体つきで引き締まっている。使いこまれた立派な刀を腰にさげており、まさに益荒男。


重月じゅうげつ!!)


 心の中で名前を言った。


「また名尻指揮官に説教されたのか。このゴミめ」


 眼鏡をかけた少年団員が軽蔑の眼差しを向けている。短い黒髪で古貞や重月と同じ服装で少々華奢な体つき。高そうな刀を腰にさげており、知的で育ちがいい感じだった。


秀羽しゅうう!!)


 彼の顔を見て隣を見る。


「こっちを見るな、デブ! キモい!」


 金髪のベリーショート少女は気分が悪くなり威嚇する。スカートタイプの白い団員服姿で黒いブーツと脚がきれいでスタイルがいい。きれいな刀を腰にさげており、ギザ歯で意地が悪そうだった。


なぎ……)


 どうでもいい感じで目をそらした。


(嫌なやつらに会っちまった)


 三人の顔を見た古貞は顔をしかめた。


「いつまでたってもひとりで害虫駆除ができないザコ野郎!! この基地で駆除ができないのは、お前くらいだぞ! まあまた肉の壁として使ってやるから安心しろ!!」


 重月は古貞をバカにして笑う。


(いつもおれを盾にしやがって!! しかもおれが利用してるんだから感謝しろって態度がむかつくな!!)


 心の中で悪態をつく。


「貴様はこの団の恥だ。同僚だけでなく後輩や新人にもバカにされてる。それなのに、この基地にいるなんて。目障りで迷惑な存在だ」


 秀羽は眼鏡を光らせて言った。


(別におれはお前らや後輩達のために働いてるわけじゃねえ!! 生活のために働いてんだよ!! でなきゃこんなとこにいねえよ!!)


 むかつくが、言っていることは間違っておらず相手はこの基地のエースで貴族なので耐えるしかない。


「基地の女達も生理的に無理、デブでキモいって言ってて、こいつ嫌われてるよ! 役立たずの嫌われ者なんて生きてる意味ないよねえ!」


 凪は挑発するように笑った。


(てめえが女友達におれの悪口を言って拡散させたんだろ! こいつは顔と体以外最悪だな)

 古貞は少女の顔と体を舐めまわすように見た。


「なにジロジロ見てんだよ!! キモい!! こいつに見られると気分が悪い!!」


 少年の視線に気づき、両手で体を隠して騒いだ。


「重月!! こいつをなんとかして!!」

「任せろ!!」


 凪が指さすと重月は意気揚々と近づき、古貞の胸倉をつかんだ。


「お前、生意気で気に入らないんだよ! 弱いくせに他の連中みたいに媚びへつらったり、恐れたりしない!」


 古貞の態度が気に入らないので怒っており、乱暴に揺らす。秀羽と凪は楽しそうに見て笑っていた。

 周りには助けてくれる人はおらず、いたとしても見て見ぬふりや笑う連中ばかりで期待などしていない。


「そう言われても、おれは他の腰抜けどもと違って、おめえらが怖くねえんだからしょうがない」


 一瞬、彼の言葉が理解できず三人は固まった。


(なんで余計なことを言っちまったんだろ。いつもみたいに黙って殴られればいいのに)


 後悔したが口は止まらない。


「こんなのが、この基地のエースとは情けなくて笑っちまうよ」


 見下すような視線を向けて笑う。格下にバカにされたので三人の表情は険しくなっていく。


「早くこの汚い手をはなせ」


 重月の顔は真っ赤になり頭の血管が切れるような音がした。


「ぶっ殺す!!」


 古貞の顔面を殴った。一瞬、潰れてふっとび、仰向けに倒れた。


「殺さないだけでもありがたいと思え!」


 殴った手を振って少年を睨む。


「弱いくせに言いたいこと言ってバカね!」


 凪は倒れている少年を見て、いい気味と思い笑った。


「なんの役にも立たないやつにほざく権利などない」


 プライドが傷ついた秀羽は冷徹な言葉を吐いた。そして三人は古貞を放置して歩き、離れていった。

 秀羽達がいなくなったので少年は起きあがった。


「いてて!」


 殴られた顔面を手で押さえつつ確認する。


「鼻が少し潰れただけで血は出てねえな。巨大芋虫の体当たりの方が上だな」


 打たれ強い彼はあまりきいておらず立ちあがって顔面をさすった。


「エース三人を挑発するなんて。これでおれの立場はさらに悪くなるな」


 敵だらけの嫌な職場だが、あまり気にしておらず三人とは違う方向へ歩いた。


 ◇


 岡井家おかいけ。伊仙奇にある古貞の家で庶民らしく平凡。仕事を終えた彼は母親と一緒に夕食をとっていた。

 母親は息子と同じ青いショートで赤いジャージ姿の活発な中年女性だった。少食なようで彼女の量は少なく古貞の方が多い。


「毎日よく食べるわねえ」


 我が子の食欲に驚いていた。ご飯と唐揚げ、サラダがなくなっていく。


「母さんの料理はうめえし今日は好物の唐揚げだ。いくらでも入るよ」


 うまいのもそうだが、嫌なことがあったので食べて発散している。


「仕事でなにか嫌なことでもあったの?」


 母は鋭かった。食べるのをやめて真剣な表情を浮かべた。


「まあ、あったけど、でえじょうぶだ」


 母親を心配させたくないというより話してもどうしようもないことなのでごまかした。


「そう。無理はしないでね。お父さんが私達を捨てて家族はあんただけ。私はいつでも息子の味方。あんたは私の宝よ」


 慈愛に満ちた眼差しを向ける。古貞は照れ、食事を再開し、ご飯を空にした。


「おかわりっと」


 茶碗を持って席を立ち、炊飯器に近づいて、ご飯を盛る。


「もうないや」


 少年は炊飯器の中を見た。米粒ひとつ残っていない。席について料理を減らしていき、凄まじい量の野菜をなにもかけずに食べている。

 食べすぎで健康に悪いが母は止めず好きなように食べさせていた。

 







 次は主人公の仕事。

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