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源為朝  作者: 奈良県
8/12

為朝を巡る人間模様

さて、命からがら逃げ延びた鎌田は下野守義朝に「あへづきあへづき」報告する。


特に、激怒した為朝の恐ろしい様子の報告は注目すべき点の一つだ。


鎌田は以下のように語る。

「天の雷の甲の上に落ち懸かる心地して、目も眩れ、魂も失せ候ふ。馬よりも落つべく候ひつれども、運が強く候ひてこそ助かりて候へ。あな、しの勢や」


彼の報告から、改めて為朝の恐ろしさが伝わってくると言える。


これに対して義朝は「正清が八郎と思ひて、臆してぞさは思えつらん。八郎におきては、義朝、一当て当てん。何ばかりの事かあるべき」と、あくまで為朝を恐れない。

遂には自ら為朝に向かっていく始末である。


義朝の取った行動は実に勇敢で武士らしいと言えるかもしれないが、もう一度詳しく読むと勇ましさの中にも人間らしさが隠されているのが分かる。

 

例えば、為朝から挨拶代わりに矢を射られた際、義朝はその威力に驚愕する。


「下野守、目も眩れ、心も乱れて、既に馬より落ちぬべかりけるに、鞍の前輪を強く押へ、弓杖にすがり、鐙を踏み静めて、内甲をさぐりまはすに、血も流れず、疵もなし。心地少し安堵して、さりげなくもてなし(中略)打ち咲へば」とあるように、為朝の放った矢に対する恐怖を隠そうと努めて平常心を装う義朝の姿は極めて人間性に溢れていると言える。

 

更に為朝の口から発せられた次のような言葉と、それを聞いた後に取った義朝の行動は注目に値する。

為朝は「(前略)一の矢においては、旁々存ずる旨が候ひて、態と色代申し候ひぬ。御鎧をば八竜とは見て候ふよ。何にてもあれ、二の矢においては申し請けんずる候ふ。」と言いながら「手ぐすねを引き、そぞろ引きてぞ向ひたる。」のだ。

身の危険を感じた義朝は怖気付くが、「聞かぬようにもてなして」宝荘厳院の門の脇に退く。

先に述べた清盛の退却する姿とよく似ていると言える。


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