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今から帰る

作者: 祐天寺

「今から帰る」

久しぶりの帰省で友達と遊んでる最中からずっと通知が来ていた親からのLINEにそう返して、俺は新宿三丁目の改札をくぐった。


新宿三丁目から直通で最寄り駅まで行ける実家と、

2、30分に1本しか来ない一人暮らしのアパートの最寄り駅を比べながら電車に揺られていた。


久しぶりの東京の人混みに疲れていたからか、自分の乗っている電車が渋谷から急行に変わっていたのを自分の最寄り駅を通過して気づいた。


「まぁ、1駅くらい歩くか」 と、乗り換えるのもめんどくさかったから最寄りの隣の駅から歩くことを心の中で決め、そそくさと手荷物をまとめて吊革を握り直した。


その瞬間、ガタンッ! と大きな音を立て電車は急停止した。


しばらくアナウンスもないまま停車する電車の中で乗客達はいつになったら帰れるのかとイライラを募らせながら耐えていた。


目の前のサラリーマンのおっさんの苛立ちが茹だったタコのように真っ赤になった頃、車内アナウンスで人身事故が停車の原因であるという旨を伝えられた。


とりあえず次の駅までは進みそこで電車は暫く停止すると入ったアナウンスを皮切りに電車は動き出した。


駅について実家に帰るために電車で来た道を戻っていく。


人身事故が身近で起きたことに興奮しながら普段は歩かない線路沿いを選んで家路へ向かった。


事故現場だと思われる場所を通りがかった時には既に大勢の警察や野次馬が来ていた。その野次馬の1人に中学の同級生がいて興味本位で何があったのかを聴いたら、そいつは、まるで現場を見たかのように青白い顔をして 「女の人が電話をしながら笑顔で踏切をくぐって行った。」 と言った。


「へぇ、そうなんだ……」 あまり気分のいい話ではなく、続ける気にもならずに同級生にそれだけ返事をして事故現場を後にした。


家に帰ってから同級生から電話がかかってきて、悲しそうな声で 「さっきの人身事故で亡くなったのは、俺の姉貴なんだよね。普段は一人暮らししていて久しぶりに実家に帰るってなってたんだよ。だから、駅まで迎えに行って驚かそうと思って姉貴に電話した時に 今から帰る って言われた直後に大きな音がしたんだ。」 後半の同級生の声は湿っていた。


あの場で同級生に会った時に何か気づいてあげられなかったかと考えながら電話を切った。


失ってしまったものは仕方ないと自分の中で割り切った時に自分のスマートフォンが震えた。


相手は非通知だったから気味が悪く、無視をすることに決めた。


次に通知音が来て見たら1件のショートメールが来ていた。


内容は 「今から行くわ」 の一言


そのメールが来てから事故現場で会った中学の同級生とは連絡がつかない。


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