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王宮で獣王陛下のふんどしを縫ってます。

作者: 牡丹
掲載日:2020/01/08

滑って転んで、車にひかれて吹っ飛んで、ああこのまま死んだなって思ってました。そんな猛暑日。いや酷暑日でした。

そしてはっと気づいたら石造りの建物で、獣の革の敷物の上で寝ていました。

どうやらここは異世界のようです。

耳に尻尾。ふさふさの毛。

大きな個体から小さな個体。

木造と石造りの建物。

そして、人間は小さな国に住んでいて、めったに国から出ないそうです。商人と政治家位でしょうか、外国と接点があるそうです。

なので、珍しい存在のようです。

なぜなら、単純に弱い個体だからとのことです。

町外れで血だらけで倒れていて、発見された時は瀕死だったらしく、短い髪に短パン、タンクトップの私は大騒ぎだったそうで、何しろ頭髪以外は毛がないので、劣悪な環境にいて毛がなくなったとか奴隷か病気かと色々と噂になっていたそうです。

すっかり有名人です。

治癒院で、しばらくお世話になっていました。

宿無し金なし、知り合いもなし。

人間の国は、山越えて海越え、そのまた山越えて。

獣人の国の反対側だそうなので、諦めました。どうなるのでしょうか。山口さくら25才です。

途方にくれていましたら、熊の先生が王宮に知人が居るとのことで、仕事を紹介してもらいました。ですが不安なんです。力も強く魔法も使える獣人。私は弱いし、魔法何て無理です。どうなるのでしょうか。





そんな不安はどこに行ったでしょうか。

生来の器用貧乏なわたし、厨房で細かい細工の必要な作業を手伝ったり、ミニトマトを十字に切り込みペロッと剥いたりとか、繊細な工芸品の掃除とか。とにかく、腕力のある獣人には出来ない繊細な仕事をしています。


真夏の日本から、一足早く秋の獣人国で、冬の支度にお針子の仕事が有るとのことで呼ばれたのです。


「さくら。この生地に刺繍して欲しいのです。見ての通り生地も薄く繊細なので、扱いに困っていまして。刺繍はこちらで教えますから、できますか。」

ヤギの獣人に言われた。

「並み縫いしか、出来ないのですが大丈夫でしょうか」

「そうですね。なんとかしましょう。その代わり、出来るまで特訓です。他の仕事は出切るだけ断ってください。いいですね。」

「はい。よろしくお願いいたします。」

練習用に頂いた生地に、一生懸命に刺繍の練習をしたんです。そして、この世界のこの時代は布が貴重でしたので、ありがたいことに、貰えたので、布幅がちょうど良く足りないところは、足してとても大切な物を、作りました。皆さん自前の毛皮があるので。高貴な方はどんなものか分かりませんが、我々は庶民の洋服です。

この世界は丁度、中世のようで地球にあるパンツは存在しないのです。ですから、作りました。ふんどしです。並み縫いしか出来なくても、作れます。どんなに嬉しかった事か。

そして、事件はおきたのです。

私がバカだったのです。刺繍を練習した生地に紐つけて作ったふんどし。うっかり忘れて来てしまったのです。お針子の作業部屋に。気づかなかったんです。まさか大事なパンツを置き忘れるなんて。




それに気づかすに、数日後のことです。

のんきにもリスの獣人で、お針子のジュニーさんにおしゃべりしながら、あちらの獣人がカッコいいだの。こちらの獣人が色っぽいだのとお話をしていました。

「さくら。こちらへ。」

と、ヤギの獣人に呼ばれたのです。

そして、後を着いて行きました。

「これは、さくらが刺繍の練習に使った生地でよね。」

そういってさっと出て来たのは、私のふんどしでした。

「これはなんですか。」

と聞かれましたが、なんと答えればいいのか。

固まって居ると、扉が開きました。

「メール。それがなんだかわかりましたか。」と声がします。

馬の獣人です。サラブレッドでしょうか。カッコいいです。

「あなたが作ったのですか。布巾にしては奇妙ですし、見たことないです。」

と、馬の獣人が言います。

ぐっと、拳を握り言います。

「ふんどしです。」と小さな声で。

ああ、恥ずかしい。

黒光りの毛並みのサラブレッドのように、均整のとれた筋肉と肢体。その手にぴらりと紐を持って広げる私のふんどし。

人生でこんな恥ずかしい事はあっただろうか。

「「ふん、ド、し?」何ですか?」と大きな声がします。

獣人なので、耳がいいのです。

「私の国の伝統的な衣装です」

「これが、ですか。」

と馬の獣人。

「へえ、どうやって使うのですか?」

とヤギの獣人。

「紐を腰で締めて、締めた紐に掛けてとうして使います。つまり、下履きです。」

「はい?これが?」

「履いて貰えますか。いまいちわからないので。」

「え…と。股の間に着けるんです。こうやって。」

もう、破れかぶれです。

「まさか、女性の下履きが陛下のお召し物に紛れていたということですか。」

なんですって。陛下のお召し物に紛れていた。

「まさか、陛下が目にしたとか…」

「そのまさかです。そして、いつの時代も高貴なかたは珍しいものがお好きですので、陛下も大変感心を持たれておりましたよ。それが、まさか、女性の下履きとは、なんと破廉恥な。こんなことがあっていいのですか。」

「さくら。あなたの国では貴族だったのですか。」

と、ヤギの獣人。

「平民です。ただ、刺繍の生地が私の肌にちょうど良かったんです。それ、返して貰えますか?私のなんです。」

「まさか、使用済みっ「違います!」

本当に恥ずかしい。

「そうですか。これは作れますか。陛下が所望とのことです。」

「刺繍してふんどしですか?構いませんが、この話は内密にお願いいたします。それなら、作れますけど。」

「「もちろんです!!」」

「こんな恥ずかしい事が言えますか。陛下には新しいお召し物が、試作の段階で紛れた、と言っておきます。」



こうして、私の新しい仕事は、陛下のふんどし作りです。

獣人国の尊いお方。最も強く全獣人の憧れ。

名誉だそうです。


それから数日後。ふんどしを十枚縫い終えた頃でしょうか。また、呼び出されたのです。ふんどし広げていた馬の獣人にです。何か、失敗したのでしょうか。話がばれて、破廉恥だとクビになるのでしょうか。


広い石造りの部屋に、上座がある部屋につきました。誰かいるようです。


膝をついて頭を垂れました。高貴な方のようです。誰でしょうか。影が射しました。

スンスンと、鼻息がします。

「ああ。私の番。こんなところにいたのか。」

そういうと、抱きしめられたのです。

「ふんどしから香る、芳しい香り。私の心をざわめかせ、高揚されるその香り。ああ、同じだ。」

「グ。」

「い、きが-。」

「陛下!死んでしまいます!」

「ヘイ、か?。」

「我が名は、アルエル。この国にの国王ぞ。そなたはなんと言う。」

そっと離れると、銀に輝く毛並みと三角の耳に、紺碧の瞳がありました。そうして、大きな口。

「山口さくらと申します。」

「異国の名か。なんとも言えぬ響きだ。さくら。我と番ってくれ。」

「つがう…?」




なんのことかさっぱり分かりませんでしたが、馬の獣人によると、運命の伴侶だそうです。陛下、私は人間ですよ。獣人はあったばかりで、私にとっては地球外生命体。つまり宇宙人なのです。もちろん、互いにです。とりあえず、ふんどしを作るだけじゃダメですか。可愛い刺繍もたくさんしますから、勘弁してください。

まだ、異世界に来たばかりで右も左もわからないです。


大きな銀色の狼にしっかりと抱っこされたまま、訳がわからず、いままでの色々な思いが吹き出し、泣くしかありません。

獣人の高い体温と寒くなってきた獣人国。

そのまま、泣きつかれて眠ってしまったのです。


「さくら。さくら。我の番。」







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